WEB本の雑誌今月の新刊採点【文庫本班】2007年7月の課題図書 文庫本班

親孝行プレイ
親孝行プレイ
みうらじゅん (著)
【角川文庫】
税込460円
2007年4月
ISBN-9784043434060
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  荒又 望
 
評価:★★★☆☆
 まず行動ありき、の現代版親孝行マニュアル。さあ、あなたも親コーラー(=親孝行家)になりきって、今こそ親孝行プレイを!
 読み手によっては「けしからん!」と頭から湯気を出して怒りまくりそうな、不謹慎といえば不謹慎な作品。しかし、親孝行かくあるべしと湿っぽく精神論を説かれるよりも、いっそ、これくらい変なテンションで実践的に書かれているほうが、どれどれちょっとやってみようかね、と思う人は多い、かも? たとえば「親孝行 自分の話は 何十倍」なんて、もう今すぐにでもできそうだ。
 面白おかしく書かれてはいるけれど、きっと著者は本当にご両親のことを大切に思っているのだろうな、ということがにじみ出ていて、微笑ましい。本筋からは外れるが、著者に底なしの愛情を注ぎ続ける母親を描いた第9章が、もうたまらない。爆笑必至、感涙必至のオカン賛歌。お母さん、最高です。
 たぶん、自分の残りの人生よりも、親孝行ができる時間のほうがずっと短い。大いに笑わせつつも、たいした孝行もできていない我が身を反省させてくれる意義深い作品、なのかもしれない……断言はできないが。 

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  鈴木 直枝
 
評価:★★★☆☆
 人は見た目で何パーセントだったっけ?長髪サングラスのみうらじゅんが、親孝行についてアツク語る本を上梓するとは思わなかった。予想外の気付きと納得とリアルで頷く箇所が多く、親の残り時間が気になりかけ始めた私は、一種焦りすら感じた。即行動。親孝行はやれるうちにやる。今やる。直ぐやる。その具体的行動の列挙に「笑い」が欠かせないのがみうらじゅん。親孝行の師匠とあおぐのは「えなりかずき」だ。誰よりも気を使い、サービス精神を持ち、接待感覚を忘れない、これが基本らしい。
 又、自身の親にたいする気配りだけでなく妻と義母との付き合いにも言及する。中でも「お母さん そう呼ぶあんたは 娘じゃない」これは名言だ。この動かしがたい事実を自分に落とし込むことで、みうらが言う「親孝行はプレイと割り切ること」「親孝行のスペシャリストになる」も実行に難しくない気になってくる。
 先ほど、みうらだからこその笑いについて書いたが、その母は2枚も3枚も上手であった。多感な時期に不良になりたくてロックを始めたみうらに母が取った行動は爆笑もの。是非手に取って、自宅で思い切り笑って欲しい。

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  藤田 佐緒里
 
評価:★★★★★
 『親孝行プレイ』というタイトルに「あなたの子供で本当によかった」という帯文。プレイって何なの、普通の親孝行の意味なのか? などと考え、これは何か一ひねりも二ひねりもあるだろう、と思って読み始めたのは当然のことのように思われます。しかし、中を開いてみるとひねりはあるものの、不覚にもけっこうな感動作なのです。
 親孝行なんていう言葉自体、最近ではそんなに聞かなくなっているような気もしますが、ちょっとした行動、ちょっとした心遣いで親孝行になるのだよ、あんたもやんなさい、という超ライトな「親孝行指南本」とも言えそうな本書。こういう時にこういうことの言える気遣い、とか、何を話すべきか、どんな距離をとるべきか、など、幅広い親孝行のあり方を語っています。
 確かに、とても親孝行とはいえない、深夜泥酔帰宅・朝まで飲んでいることもザラ、というようなひどい生活を繰り返している私には見習わなくてはならないことばかり。でもこれをなんともしっくりと身に染みて読むことが出来るのは、親孝行を「プレイ」と言ってくれるみうらじゅん氏のおかげ。これが偉そうに語られていたら、間違いなく「てやんでい! このすっとこどっこい」と思ってしまったことでしょう。
 みうらじゅん氏にしか書けないであろう脱力系親孝行指南本。ちょっと、両親に電話の一本も入れたくなります。

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  松岡 恒太郎
 
評価:★★★☆☆
 数年前のこと、真夜中に目が覚めどうも寝付けないのでテレビをつけたら、深夜の長寿番組『タモリ倶楽部』がやっていた。
その回のゲストで画面の中から現れたのが長髪サングラスのみうらじゅん氏。ちょうどタモリ相手に本書でいうところの第二章あたり、旅館での「ホテトル嬢プレイ」と同じ内容の高度な親孝行プレイを熱く語られていたように記憶している。その講義は矢鱈面白く、おかげで僕の目はさらに冴えてしまった。
 みうらじゅん氏が提唱される『親孝行プレイ』は実に斬新な考え方である。しかし斬新ではあるが的外れではない。
親孝行は接待であり自分が満足するのではなく、親を徹底的に喜ばせるために自らはホストに徹しろと説いているのだ。
 これを聞いて「心のこもっておらぬ親孝行ごっこなどもってのほか!」と憤る人が中にはいるかもしれない。しかしとにかく最後まで読んでいただきたい。すると気づくはずだ、プレイは大いなる彼の照れ隠しであることに。

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  三浦 英崇
 
評価:★★★★★
 この書評が載る頃には、うちの妹が結婚式を挙げた後なのですが、当然、親戚も皆参列する訳で、久々に逢うのが楽しみです。従姉妹のしをんちゃんとか、従兄弟のじゅん兄ちゃんとか。

 「名字が同じなら皆親戚」妄想はともかく。じゅん兄ちゃん(まだ言うか)のご本は、何かをする時に、まず心構えから入るのではなくて、ひとまず形からでもいいからやってみな、と、背中をぽん、と押してくれることが多いのですが、今回もまた、そういうごく軽い感じで「親孝行」を説いてくれます。

 偉そうに上から説教するなら誰でもできるけど、実践するのはとても照れくさかったり、わざとらしくなっちゃったりしがちな親孝行を、「いっそプレイだと思っちゃえばいいんだよ」というその語り口は、少年の頃に、いろいろ悪いことを教えてくれた従兄弟の兄ちゃんそのままです。

 「一番の親孝行はお前が早く結婚することだろ」なんて、絶対言いそうにないのもありがたいなあ。

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  横山 直子
 
評価:★★★★★
「親孝行とはプレイである」と、高らかにみうらさんがこう宣言する。
いきなり胸にとどろく切り口だ。
そして「まずは行動。これが親孝行の第一原則だ」と続ける。

具体的なアドバイスとして、親孝行旅行、帰省のテクニック、妻活用法、孫活用法などがあったが、中でも私がいちばんうなってしまったのは友活用法。
親孝行旅行に自分の友達も参加してもらうのだ。
みうらさんの場合は、『見仏記』の共著もある作家のいとうせいこう氏。
彼はみうらさん親子の旅に同行し、実にうまく旅行を進行させてくれ、それこそピカ一の親孝行旅行に仕上げてくれた。
それは距離があるからこそできる技で、その効力の大きさを目の当たりにて、大納得した。

全編を通じて、みうらさんがいかにご両親のことを大事に思っているかということが感じられて心が温かくなった。
そしてよくよく見ると、はじめにのところにたぶんみうらさんの自筆であろう”感謝”という文字があり、なんとも嬉しくなった。

それにしても父親と息子のえもいわれぬ男同士の親子関係には大いに興味を持ち、時に大笑いしながら読んだ。
母と娘とは違うなにかがあるらしい…。

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