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WEB本の雑誌今月の新刊採点【単行本班】2007年8月の課題図書ランキング

浅草色つき不良少年団
浅草色つき不良少年団
祐光 正(著)
【文芸春秋】 
定価1550円(税込)
2007年5月
ISBN-9784163259406

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  小松 むつみ
 
評価:★★★★☆
 セピア色の青春ストーリー。
 戦前の浅草を舞台に、不良少年たちのグループの活躍を描くミステリー。男装の麗人……ではなく、女装の美少年・百合子の謎解きがクール。当時の様子が克明に描かれ、不良少年たちの活躍ぶりも、生き生きと躍動感にあふれている。
 売れない漫画家が、戦前の浅草を取材するという聞き書きの形をとっているのも、物語にセピアフィルターをかけるのに効果的だ。作中にチラリと顔を出す、江戸川乱歩や川端康成といった実在の作家たちのエピソードも、良いスパイスとなって、読者の興味をそそる。

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  川畑 詩子
 
評価:★★★★☆
 浅草を闊歩する不良少年たち。情に篤い熱血漢のジョージや、頭が良くて口の悪い美形の百合子。少年たちは活きが良くて、根は純情。謎解き部分もテンポが良くて痛快で、江戸川乱歩も少し顔を覗かせて楽しい。猟奇殺人や密室殺人など血なまぐさい事件も、少年探偵団や明智小五郎が出てきそうな雰囲気を楽しめた。それとともに戦災や高度成長で失われた、かつての浅草を懐かしむ思いが織り交ぜられて、全体にそこはかとなく寂しさが漂っている。
 圧巻は最終章。震災と戦争で多くの親しい人を失い、浅草の壊滅を二度も目の当たりにした神名火老人−かつてのジョージ−の心情がここで明らかになる。色々盛り込んで力みが感じられる部分はあったものの、この最終章で、すべての物語が鮮やかに焼き付けられた。まるで本当に神名火老人から話を聞いているような、そんな気持ちになった見事な幕切れ。

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  神田 宏
 
評価:★★★★☆
 震災の痛手から復興をとげつつある帝都下は浅草。震災孤児たちがそれぞれの不幸を胸に逞しくも生きていた。その孤児たちの不良集団は組織だって大人たちと渡り合い時には恋に、時には時代の波に揉まれながらも浅草の町を縦横に駆け抜ける。その集団をして「浅草色つき不良少年団」という。「浅草黒色団」、「浅草紅色団」、そして「浅草黄色団」。その「黄色団」の頭目、「似顔絵のジョージ」こと神名火譲二翁が現代の漫画家に問わず語る過日の冒険譚。「浅草六区の活動街から瓢箪池を越えて行きまっすってえと、浅草奥山には木馬館と水族館が並んでいましてね。(中略)エロの殿堂などと銘打って女の足と尻を見せるレビューがあり、オペラ館が閉館するまではエノケン笑劇あり」といった時代である。そこでおこる奇怪な事件に探偵よろしく不良少年団が大活躍。直情愚直な「似顔絵のジョージ」に対して頭脳明晰な「紅団」頭目の美少女(?)「冬瓜の百合子」こと平井兵吉。彼らを頭目として仰ぐ不良少年たちが硫酸で顔を焼かれて死んだ女の謎を追い、仲間を死に追いやったやくざに詰め寄り、と大活躍。ミステリの黎明期として江戸川乱歩もでてきたり、震災から戦争にかけてのつかの間の栄華を誇った浅草の復興の槌音響く活気に負けじと疾走した懐かしくも痛快な青春がここにある。

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  福井 雅子
 
評価:★★★☆☆
 戦前の浅草を闊歩する不良少年団『浅草紅色団』『浅草黒色団』『浅草黄色団』の活躍が、かつて黄色団を率いていた神名火譲二老人の昔語りの形で、5話に渡って繰りひろげられる。
 浅草の町にちょっとした事件が起こり、不良少年団がそれを解決していくというストーリーは、エンターテインメント小説として十分に面白く、最後まで飽きずに読ませてくれる。だが、それ以上に魅力的なのは、油絵の具を重ね塗りするようにディテールを積み重ねて描き出した背景、つまり昭和初期という時代の浅草の空気が見事に表現されていることだ。そして、そこに生きる若者たちもまた、輝いている。残暑の折の夕涼みに、軽快なストーリーに引き込まれて昭和初期の浅草にタイムスリップしてみるのもいいかもしれない?

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  小室 まどか
 
評価:★★★★★
 「戦前に起こった事件などを絡めて、当時帝都随一の歓楽境であった浅草の、裏の顔までを覗いて見たい」――。
 紅・黒・黄と色の名前のついた不良少年団の闊歩する、昭和初期の活気と不思議に満ち満ちた浅草の姿がたちのぼってくる物語は、売れない漫画家の「私」による先のリクエストに、期待以上に応えたものだったのではないだろうか。江戸川乱歩はじめ、浅草にゆかりの著名人も顔をのぞかせる物語の狂言回しをつとめるのは、当時、黄色を率いていた「似顔絵ジョージ」。彼はもちろん、少年団の面々は、子どものくせになんとも粋で鯔背で、江戸っ子気質を背負っている。「不良」とは言え、震災孤児などが寄り集まって生きていくための組織だったことを考えると、それは大人に対する一種の虚勢だったのかもしれないが、彼らが独自のネットワークを使って、次々と事件を解決していくさまは痛快極まりない。
この後、東京大空襲でまたも姿を変える浅草――なじみのある人間としては、変わったもの変わらぬものを噛みしめながら読んでいくのが愉しい作品だった。

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  磯部 智子
 
評価:★★★☆☆
 漢字が多い。えらく昔の作家が書いた小説かと思ったら、オール読み物推理小説新人賞受賞作。しかし舞台は戦前の浅草であり、描き出される情景に経験もしていないのに懐かしさがこみ上げてくるから、あら不思議。物語は、昭和のおわり、漫画家の「私」が仕事で戦前の浅草を調べるうち、「紅色団」「黒色団」「黄色団」という三つの不良少年団の存在を知ることから始まる。黄色団のリーダー「似顔絵ジョージ」を中心に、関東大震災から東京大空襲までの猥雑で混沌とした22年間、様々な事件に遭遇し解決していく謎解き話が綴られていく。読んでいる間ずっと、少女時代の美空ひばりの歌声や東京ブギウギが聞こえ、もちろんそれもリアルタイムで聞いていたはずもないが、その時代が持つ喧騒を伝え、おどろおどろしい謎があふれる中、擦れた孤児たちである少年少女たちの純情が疾走するフットワークの良さで、展開よく読ませる。タイトルにちなんだ昭和の文豪たちも登場し、益々話は「色つき」になり、はまれば癖になりそうだが、私は、どうもこの生真面目に不良をする一途な雰囲気には馴染めないまま読み終えた。

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  林 あゆ美
 
評価:★★★☆☆
 幻景淺草色付不良少年團(あさくさカラー・ギャング)、ひらがなとカタカナより俄然、漢字が似合う少年団ではありませんか。戦前の浅草には、「浅草紅色団」という美少女が頭目な団があり、「浅草黒色団」は名前に黒が入っているように暗黒であくどいことをやっていた。「浅草黄色団」は規模は小さいものの一番まとまっていたという、この3つの少年団を軸に、黄色団を率いていた、似顔絵ジョージの語りで当時の事件が生き生きと語られる。
 混沌としていた戦前の時代、大人ではない少年たちが、街の一部をある意味牛耳るのがおもしろかった。そして、その少年たちが解決していく事件を読んでいくと子どものころに読んだ、怪盗ルパンや江戸川乱歩の推理小説を思い出すのだ。レトロでいなせな青春小説。

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