オリジナル文庫大賞

2020年のオリジナル文庫大賞は、『パラ・スター』がぶっちぎりの1位だ!

単行本の文庫化ではなく、初めから文庫として刊行される「オリジナル文庫」の大賞を今年も勝手に決めてしまおう!と書評家4名+文芸編集者7名&北上次郎の12名が集合したぞ!
  • パラ・スター 〈Side 百花〉 (集英社文庫)
  • 『パラ・スター 〈Side 百花〉 (集英社文庫)』
    阿部 暁子
    集英社
    638円(税込)
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  • 真夜中のすべての光 上 (講談社タイガ)
  • 『真夜中のすべての光 上 (講談社タイガ)』
    富良野 馨
    講談社
    825円(税込)
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  • 処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな (新潮文庫 あ 99-1 nex)
  • 『処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな (新潮文庫 あ 99-1 nex)』
    葵 遼太
    新潮社
    693円(税込)
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  • 殺人都市川崎 (ハルキ文庫 う 10-1)
  • 『殺人都市川崎 (ハルキ文庫 う 10-1)』
    浦賀和宏
    角川春樹事務所
    704円(税込)
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  • 夜の声を聴く (朝日文庫)
  • 『夜の声を聴く (朝日文庫)』
    宇佐美まこと
    朝日新聞出版
    814円(税込)
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  • 王都の落伍者 ―ソナンと空人1― (新潮文庫)
  • 『王都の落伍者 ―ソナンと空人1― (新潮文庫)』
    沢村 凜
    新潮社
    649円(税込)
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候補作一覧

『パラ・スター』阿部暁子(集英社文庫)
『真夜中のすべての光』富良野馨(講談社タイガ)
『処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな』葵遼太(新潮文庫nex)
『殺人都市川崎』浦賀和宏(ハルキ文庫)
『夜の声を聴く』宇佐美まこと(朝日文庫)
『ソナンと空人』沢村凜(新潮文庫)



北上 それでは、第9回オリジナル文庫大賞の選考会を始めます。
編C もう9回目なんだ。
評D 来年は10回目か。早いなあ。
北上 それではS君から。まず、最終候補作の点数を言ってください。5点満点で、小数点はなしです。そのあとで、コメントをつけてほしいんですが、候補作全部にコメントをつけても収録できないんで、最高点をつけた作品を中心に。
評A はい。点数は、5点3点3点2点3点4点です。満点をつけた『パラ・スター』は、二分冊という形式をいかした構成がいい。百花サイドだけだと、ありがちな努力と友情の話になるんですが、宝良サイドでまったくタイプの違うもう一人の主人公をたてたことで対比が際立ち、物語に立体性が生まれている。『ソナンと空人』はファンタジーが苦手なんでよくわからないんですが、それでも3巻目で元いた国に戻るあたりから俄然面白くなってくる。
北上 はい。それではI君。
編A 5点4点3点2点3点5点。
北上 『パラ・スター』と『ソナンと空人』の二作が満点だ。
編A 『パラ・スター』は志が高いです。『ソナンと空人』は、最初は物語に入りづらかったですが,最後はドキドキして読みました。
北上 どちらかを選ぶとしたら?
編A 『ソナンと空人』かなあ。
北上 次は、Kさん。
編B はい。5点2点2点3点4点4点。
北上 また、『パラ・スター』が満点だ。
編B 『パラ・スター』は真っ当な青春ものですよね。多くの人に読んでほしい。
北上 4点の2作にもコメントをつけてください。
編B 『夜の声を聴く』は読み心地がいい。でも18年後のエピローグはいらないと思う。『ソナンと空人』は、異世界に転げ落ちる冒頭で、デルフィニアじゃん、と思ったけど、違いました。こっちはダメ男ですね。でも面白く読みました。
北上 ええと、次は誰?
評B ぼくです。採点は、3点2点3点4点4点5点。『パラ・スター』は候補作の中で最初に読んだので、これを基準にして3点。あとから考えれば厳しかったかなと。4点でもよかった。逆に、『殺人都市川崎』はやや甘めに4点。『夜の声を聴く』は、やや散漫な印象がありますが、面白かったので4点。『ソナンと空人』は、1巻ずつ物語が変化していくのが面白かった。2巻が斬新ですね。
北上 ええと、次のN君は、『パラ・スター』が5点で、『ソナンと空人』が1点、と対照的な評価なんで、この2作のコメントをお願いします。
評C まず全体の傾向から。今回の候補作は全部、青春小説ですよね。これが気にいらない(笑)。
北上 面白いねえ。その理由は?
評C 学園とか友人関係とか、狭い世界を描けば済むじゃないですか。もっと広い世界を描いてほしい。
北上 ほお。
評C その中で『パラ・スター』を満点にしたのは、その狭い世界に甘んじていない。社会人になろうとしている。それを高く評価しました。
北上 『ソナンと空人』はなぜ最低評価なの?
評C まず、主人公に魅力がないですよね。愚かなダメ男でしょ。最後まで成長しない。3巻でちょっと面白くなったけど、女性の扱いがひどいし、好感がもてません。
北上 きびしい評価だね。ええと。
評D 次は私です。採点は、5点2点2点2点3点5点。
北上 はい、それではコメントを。
評D 『パラ・スター』は、女性友情小説で、スポーツ小説で、いろんな要素が入っているのに失敗していない。オリンピックが開催されていたら、もっと売れたんじゃないかなあ。『ソナンと空人』は、ダメ男小説としてでなく、ファンタジーとして新鮮だった。奇跡は一回しか起きない、というのも新鮮だった。
北上 はい、それでいいですか?
評D もう少し。『殺人都市川崎』は話題になっていたから読んだけど、これ、笑って読むのか、わからなかった。『処女のまま死ぬやつなんていない』と『真夜中のすべての光』はちょっと弱い。逆に、『夜の声を聴く』はやっぱりうまい。これが私の感想です。
北上 次は?
編C 僕です。4点3点5点2点3点3点。最高点をつけた『処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな』は、ドライブ感があって一気に読ませる力がある。もう一作、読みたくなる。『パラ・スター』はすごくまとまっているので、面白く読みましたが、あまりに優等生で、そこのところがちょっと。『ソナンと空人』は、描写があまりうまくないので、どちらの国なのかがちょっとわかりにくい。それに、ファンタジーなら戦闘とか、活劇を読みたいのに、それが描かれていないのが、僕的には物足りない。
北上 はい、それでは──。
編D 僕です! 採点は、5点3点3点3点3点5点。『パラ・スター』は、車椅子スポーツを描いたマンガはありますが、小説にしたのがすごい。『ソナンと空人』は、主人公が成長していないのに、ここまで読ませるのはすごい。
評D そういう言い方も出来るか。
北上 ええと、次は私です。個人的には『パラ・スター』『真夜中のすべての光』『夜の声を聴く』の3作が5点なんですが、それでは目立たないので、満点は1作にしようと。それで『夜の声を聴く』にしました。さっき、Kさんがこの作品のエピローグがいらなかった、と発言していましたが、私はまったくの逆で、あのエピローグがあるから満点。しびれました。それと、『殺人都市川崎』は千街君の解説が素晴らしい。
編C 解説?
北上 文庫解説はもっと執筆者の個性を前面に出すべきだ、と昔は考えていたんだけど、最近は少し違ってきて、全体の見取り図を示すことなんじゃないか、と思っている。そういう文脈にたつと、この解説は素晴らしいよ。浦賀和宏という作家がどういう作家なのかが一望できる。この作品が必ずしも本線ではないこともわかるし。
編G たしかにこの解説はいいよ。
北上 全作品を読んでないと書けないんだよね、こういう解説は。自分のことは脇に置いて言うんだけど、読んでいてとても参考になる。そういう問題提起の意味をこめてこの作品を最終候補の一冊に入れました。それではO君。
編E 『パラ・スター』はいい小説ですよね。お仕事小説で、スポーツ小説で、友情小説で、そのバランスがいい。『ソナンと空人』は飽きさせないのがうまい。
北上 次は誰?
編F はい。採点は、5点3点3点2点3点4点。『パラ・スター』は、こういう熱いものがつまった小説は売れてほしいという意味で最高点をつけました。好みでは『夜の声を聴く』なんだけど、宇佐美まことの作品は、いつも詰め込みすぎですよね。この作品も、後半だけでいい。バランスが悪いと思う。
北上 はい、じゃあ、点数を合計してください。
編G ぼくがまだです!
北上 悪い悪い。
編G 5点3点2点3点3点5点。満点を2作につけましたが、この二作は他の候補作より分量的に長いですよね。それでも読ませるのは、腕力があるから。これ、小説にいちばん重要なことだと思う。『パラ・スター』は活字で、オリンピック、パラリンピックを味わえる。先にどなたかが言ってましたけど、二作構成が素晴らしい。『ソナンと空人』は物語の力を感じさせる。
北上 はい。これで全員のコメントは終わりね。それでは合計の点数を発表してください。

オリジナル文庫大賞表.jpg


編B 56点34点36点30点39点50点です。
北上 最高が『パラ・スター』の56点、次が『ソナンと空人』の50点。
編C その2作が抜けてますね。3番目は『夜の声を聴く』の39点だから10点以上離れている。
評D 2作受賞でいいんじゃないですか。
北上 もう少し議論しよう。『ソナンと空人』はたしかに2番目の点数を集めたけど、1点の人がいるからなあ。
評C 敵を全部殺すのが正しいことなのかどうかこいつは理解していないんですよ。そういう問いがない。つまり、書いているようで世界を描いていない。大事なところをはしょっている。
編C 都の治安が悪いのは王様が悪いわけじゃない。
編G 4巻目でもっと描けばよかったのに、きちんと書いてないんだよね。
編C ソナンはひとつの性格しかない。ずっと変わっていない。
編G 流され人なんだよ。
編A 主人公に共感したかと言われると難しいけど、そういうタイプの小説ではないでしょ、これは。だから、いいんじゃないかなあ。
編D 主人公の魅力がないのにここまで読ませるのは逆にすごい(笑)。
北上 『パラ・スター』は9人が満点、『ソナンと空人』は6人が満点と、差はないようですが、なにしろ『ソナンと空人』には1点があるからなあ。
評D 沢村さんのファンにはぜひおすすめしたいですけどね。面白いですよこれ。みなさん、厳しすぎる(笑)。
北上 という声もあると補足したうえで、2020年のオリジナル文庫大賞は、『パラ・スター』に決定します! 

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