古くて新しい「平屋暮らし」のすすめ~『FLAT HOUSE LIFE』

FLAT HOUSE LIFE 米軍ハウス、文化住宅、古民家……古くて新しい「平屋暮らし」のすすめ
『FLAT HOUSE LIFE 米軍ハウス、文化住宅、古民家……古くて新しい「平屋暮らし」のすすめ』
アラタ・クールハンド
中央公論新社
1,995円(税込)
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 戦前の「古民家」や戦後庶民の憧れの的だった「文化住宅」、アーティストたちが好んで住んだ「米軍ハウス」といった平屋が人気を集めているようです。都下の平屋をもとめて不動産屋を訪れる人が増加しており、WEBに掲載される平屋物件に問い合わせると、大方がすでに借り手がついている状況とか。
 
 1990年代のサブカル雑誌から端を発した温故知新ブームのベクトルが、今世紀に入り、ロハス志向家や和洋アンティーク・ファン、ジャンクコレクターらを巻き込みながら、インテリアに飽き足らずそれを入れる器の「家屋」へと向かったといえます。
 
 漠然と平屋に住みたいと思っている人は多いかもしれませんが、「一体平屋のどこがいいのか?」と問われると、それは住んだ者にしかわからないことが多いのも事実。平屋を8年にわたり研究してきたイラストレーターのアラタ・クールハンド氏は、平屋の良さとして「家賃が安い」「初期費用が少なくて済むケースが多い」「引っ越し代が安い」「近所付き合いが密になる」「画一的でないインテリア」「庭がある」といった点をあげています。

 しかし、一方で、平屋物件は相変わらず単なる「うす汚れたしもた屋」として扱われ、オーナーの代替わりも手伝い、潰され続けているそうです。そして、細長いペンシル戸建や巨大マンション、現場でパチパチと部品をはめ込んで作るいわゆる「プレキャスト住宅」にとって代わられている実態は、むしろ加速しているのだかとか。現在の新築住宅すべてが悪いとは言いませんが、私たちの周囲がコスト偏重の画一的な住宅ばかりで埋まっていくのも残念が気が。古い平屋1棟の跡にペンシル戸建が3棟も建つ。一見小キレイですが、隣家同士に交流はなく、風情も味わいも見あたらない・・・。

 やがてそんな家ばかりでいっぱいになってしまった「街並み」が、いずれ東京の風景になるのかと思うと、なんだからやるせない気持ちになってしまいます。

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