2月21日(土)夢のような一日

狐か狸に化かされているのかと思った。

人口4万4千人。高齢化率が36%に達している滋賀県高島市にあるTAKSASHIMA BASEで開催された「たかしまサーカス」という本を中心にしたイベントに、鴨葱書店さんのお誘いで出店したところ、スタートの10時から終了の18時までたくさんの人がやってくる。しかもそのほとんどが20代と思われる若い人たちで、写真だけ撮って見せたら下北沢で行われているイベントと言っても信じてもらえる景色なのだった。

しかもその多くの人の手には本が、そして顔には笑顔があり、まさしく街にサーカスがやってきた日のようだ。

昨日訪問した長谷川書店の長谷川さんが、お店に来て本を買う若い人が増えているとおっしゃっていたが、まさしくそれを実感する夢のような1日だった。

イベントで本が売れることをハレとケで文脈で語られることが多いが、すでにもう一歩先に進んでいるような気がしている。

2月20日(金)深淵の棚

  • はたらく本屋 (写真絵本 はたらく)
  • 『はたらく本屋 (写真絵本 はたらく)』
    吉田 亮人,矢萩 多聞
    創元社
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  • 京都 祈りと差別の千二百年
  • 『京都 祈りと差別の千二百年』
    磯前 順一
    亜紀書房
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  • ぼくのおやつ地図
  • 『ぼくのおやつ地図』
    岡本 仁
    平凡社
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10時9分東京駅発のぞみ329号に乗車。諸々予定が変更となり大阪に向かいたいのだが、新幹線のチケットを京都までで予約していたため、京都で新幹線を降りる。

そして大阪に向かうべきなのだけれど、以前より訪問したいと思っていた水名瀬の長谷川書店さんが京都と大阪の間にあると知り、急遽訪問してみることにする。

多くの本好きに愛されている長谷川書店さんだが、それ以上に街の人たちに愛されているのが店に入ってすぐ気付かされた。杖をついたおばあちゃんが雑誌のありかを気軽に訊ねて買い求め、買い物途中の女性は本を抱えてレジに向かう。

その棚が圧巻だった。時折、高架の上を走る電車の音と揺れに驚きながらも、まるで星空を眺めているときに吸い込まれていくような感覚に陥る。深淵。本屋さんってやっぱりすごい。その深淵から磯前順一『京都 祈りと差別の千二百年』(亜紀書房)と岡本仁『ぼくのおやつ地図』(平凡社)を手にする。

夜、中之島図書館にてBOOK'N BOOTH店主の中村優子さんによる講演「いま、「町の本屋」を大阪で開くということ」を聴く。

2月19日(木)切実な本

  • 本をひらく
  • 『本をひらく』
    杉江由次,大森皓太
    本の雑誌社
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先日、荻窪のTitleを訪問した際に店主の辻山さんから「杉江さんもここ数年変わってきた気がします。遠くから見ていてそう感じます」と言われた。自分自身もどこか変わってきた気がしているので、荻窪駅まで歩いて帰る道すがらその足跡を見つめ直してみた。

そうすると私の変化の第一歩は、そう指摘した辻山さんがかつて話した「切実な本は売れています」という言葉なのだと思い当たる。

それはレジ打ちしてもらいながらうかがった言葉で、「本が売れないと言われますけれど、切実な本は売れています」という話だった。

売れる本を作らなければならないというのが私の人生なわけで、その売れている本が「切実な本」と教えられ、Titleにも並んでいたいくつかの本が頭に浮かんだ。

しかしそれは私が作れるような本ではなかった。作りたい本でもないし、私が読書に思い描いているものとはずいぶん違う感じがした。

切実ってなんだろう......というのがここ5年くらいずっと頭の中にあり、もし私が変化しているとするならば、辻山さんが言った「切実な本」というのがその源なのだ。

大森皓太さんとの共著『往復書簡 本をひらく』ができあがった。
できあがってみると、これは私にとって「切実な本」だった。

2月18日(水)2026年を代表する小説

  • 青天
  • 『青天』
    若林 正恭
    文藝春秋
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書店さん向けDMを一気に作る。その後、世田谷ピンポンズさんの単行本の著者校修正が済んだゲラが届いたので、修正漏れがないか地道にチェックする。

娘から「パパの大好きなちばあきおの『キャプテン』と金城一紀のゾンビーズぽいところあるよ」と北上次郎なみの必読おすすめをされた若林正恭『青天』(文藝春秋)を読む。

芸能人の書いた本などと侮った自分を大いに恥じたい。アメリカンフットボールのことを知らないんだけどと躊躇した自分も恥じたい。

これは何者でもない自分が、何者かになろうともがいている姿を切実に描いた青春&スポーツ小説の傑作だ。2026年を代表する小説になるだろう。

2月17日(火)

  • カンザキさん
  • 『カンザキさん』
    ピンク地底人3号
    集英社
    1,650円(税込)
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隣の事務所にいる書泉の鎌垣さんと雑談。元取次店視点での書店経営の具体的な数字を教わる。

Podcast「POP王の愛と自由と平和な本語り」で内田さんが薦めていたピンク地底人3号『カンザキさん』(集英社)読む。家電配送の仕事が描かれた労働小説なのだが、カンザキ先輩がヤバすぎる。イカれている。強烈なキャラクターだ。そしてこの小説自体もイカれている。ブラックコメディというのか不条理ものというのだろうか。松永K三蔵さんの『バリ山行』に通じる面白さかも。

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