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1月27日(日)

 大学受験を控えた娘のために、2週間ほど前からマスク必須となり、ここ数日は娘とも接触しないよう居間にいるのも禁じ、寝室に閉じこもって厳重なるインフルエンザ対策をしていたのだけれど、嵐の活動休止はマスクや隔離では避けられなかった。

 娘、晩飯も食べず、部屋にこもる。

1月26日(土)

 午前中、キロ5分40秒で15キロラン。強風によりペース上がらず。

 昼は娘のリクエストでカレーうどん作る。素直に市販のカレーうどんの素を使う。美味しい。料理は手間と努力が報われない物事と割り切る。

 午後は読書。

 松家仁之の『火山のふもと』(新潮社)初読、『光の犬』(新潮社)再読。

 正直に話すと文芸編集者から小説家への転身した著者に、なんだか一年生から生真面目に授業を受け推薦入学で大学へ進学した計算高かった同級生の姿を思い浮かべ、なかなかこの著者の本を手に取れずにいたのだけれど、『光の犬』が出た時に信頼する書店員さんから熱烈に薦められ読んだのが昨年のこと。あまりに自分が欲していた世界観の小説であることを知り、なぜ本の雑誌のベストテンで推さなったのだと後悔しつつ、慌ててデビュー作『火山のふもと』を買い求めたのだった。

 しかし、それはまるでショートケーキの上に乗る苺のようになかなか手をつけられず、背表紙を眺め、いつか口に頬張る日を想像して楽しんでいたのだけれど、しんしんと冷える冬の午後、ストーブを焚いた部屋で、ページをめくりだしたのだった。

 私はこの小説家の描く、時の経過、時間の移ろい、すなわち人の人生が、ものすごく好きだ。

1月25日(金)

 まだ真っ暗な6時に家を出て、渋谷のラジオへ。hontoの矢部さんとともに「渋谷の本屋さん」に出演。パーソナリティの西本さんからnoteの有効的な使い方を教わる。

 会社に出社し、デスクワークを片付けると、半休を取って、両国国技館へ。大相撲1月場所十三日目を両親とともに観戦する。

 父も母も相撲が好きで、2年ほど前に「死ぬ前に一度国技館で観たい」という願いを叶えたのだけれど、またもや「死ぬ前にもう一度」と言われ、チケットを取り、連れてきたのだった。これはもしや私が子どもの頃「クラスのみんなゲームウォッチを持っているから買ってくれ」とか「部活のみんながアディダスのスーパースターのバッグを持っているから買ってくれ」とせがんだ仕返しをされているのかもしれない。

 まあそんなことよりも国技館で観る相撲は美しい。何度色校正をしても表現できないような発色の鮮やかなまわし。控えめでありながら行事の凛とした姿。天高々に放り投げられ放物線を描いて土俵に散っていく真っ白い塩。そしてなによりも力士の艶だ。番付があがるごとにその美しさが増していく。私のように相撲のことはさっぱりわからなくてもその美しさを眺めているとあっという間に時間が過ぎていく。

 2度目の、死ぬ前にもう一度見たいとリクエストした両親も、遠藤以外贔屓の力士がみんな勝ち、大注目の結びの一番で変化しなかった白鵬と見事に勝ち切った貴景勝に感動し両手を叩いて喜び、9月あたりにもう一度死ぬ前に両国国技館で相撲が観たいと言っている。

 錦糸町に送って行きがてら、子どもの頃から外食といえばハンバーグということで、駅ビルにある「つばめグリル」で「つばめ風ハンブルグステーキ」を食べ、同じビルで売っていた「トップス」の「チョコレートケーキ」をお土産にし、半蔵門線の乗り場で別れる。

1月24日(木)

 昼、広島の啓文社のMさんが盛岡に向かう途上東京に立ち寄るというので、SANKOUENでランチ。本屋大賞ノミネート作品とノミネートされなかった作品に私見を伺う。

 午後、オークスブックセンター南柏店さんに宮田珠己『ニッポン47都道府県正直観光案内』のサイン本とPOPをお届けする。2月4日にスタートする出版営業マン同士が売上を競い合う「南柏杯」フェアの準備。

 イマイチ気分が晴れないので帰路、近所のツタヤに寄り道。今年の目標のひとつに毎月必ず雑誌を買い求めるというのを掲げており、あと他には必ず一本映画を映画館で観るとかイベントを楽しむなどというのもあるのだけれど、ひとまず雑誌売場をうろうろする。

 そして定食マニアという特集の「散歩の達人」か、この春から始める予定の家庭菜園をわかりやすく教えてくれる「やさい畑」か悩みつつ、やはりいちばん知りたいJリーグの移籍情報を網羅した「サッカーダイジェスト」を買って帰る。

 夕食後、こたつに入ってその「サッカーダイジェスト」のページをめくる。そうそう、趣味のことをこうやって雑誌を手に没頭する時間は至福の時だったのよねと想い出す。

1月23日(水)

 宮田珠己さんと『ニッポン47都道府県正直観光案内』の大ベストセラー祈願のため、"陰極まれば陽に転ずる"という一陽来復御守を購入すべく、早稲田の穴八幡宮様へお参り。

 同行した、というか私のほうが同行させてもらったのだけれど、一緒に行った某ベストセラー多発乱発編集者によると、その編集者も今のようにベストセラーが生み出せるようになったのは、ここにお参りに来だしてからだそうで、その編集者曰く「ベストセラーの秘訣は神頼みです。穴八幡宮様の御守を貼れば必ずヒットします」と、これまで聞いたベストセラーの秘訣のなかで、もっとも具体的で普遍的でもっとも信じられるノウハウなのだった。

 というわけで穴八幡宮様の階段を登って行くと、いやはや境内を何度も折り返し最後尾がどこにあるのかわからないほどの大行列。後に気づいたのだけど、この日は大安吉日で、金運アップを夢見た全国の亡者が集まっていたらしい。

 これだけ多くいると私の願いを叶えてくれないんじゃないかと思う人もいるかもしれないが、私は西銀座チャンスセンターの1番窓口に並ぶ性質の人間なので、もはや『ニッポン47都道府県正直観光案内』を大重版した気になって、1時間ほどその列に並び、無事御守を手にする。

 しかしこの御守というのが曲者で、実は、その年の方角にあったところに貼らなければならず、しかもその貼る日時というのが限られているのだ。冬至、大晦日、節分のうちの深夜0時に貼らなければ、一陽は来福されず、書籍は返品の山になるというではないか。

 ところが私は夜10時にはまぶたが重なってしまう人間であり、しかも節分の日を確かめたら今年は日曜日でなかろうか。そしてそしてこれは家に貼ったところで杉江家が金運アップするばかりで、それはそれで構わないのであるけれど、神の前では慈悲深い心でいる私は、会社の業績アップ、従業員の皆様が幸せになること、そして宮田さんも本が売れてウハウハになるのを心の底から願いたい気持ちでいるふりをする必要があるのであった。

 というわけで日曜日の深夜0時に会社の西の壁に御守を貼る大役は、社長である発行人の浜本に任せることにする。

 御札を買い求めたあと、本の雑誌社に向い、宮田さんにせっせと予約注文分のサイン本作りに勤しんでいただく。

 夜、キロ5分半で、ランニング7キロ走る。

1月22日(火)

 第16回目となる2019年本屋大賞ノミネート作品を発表する。

『愛なき世界』三浦しをん/中央公論新社
『ある男』平野啓一郎/文藝春秋
『さざなみのよる』木皿泉/河出書房新社
『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ/文藝春秋
『熱帯』森見登美彦/文藝春秋
『ひと』小野寺史宜/祥伝社
『ひとつむぎの手』知念実希人/新潮社
『火のないところに煙は』芦沢央/新潮社
『フーガはユーガ』伊坂幸太郎/実業之日本社
『ベルリンは晴れているか』深緑野分/筑摩書房

 発表とともにニュースとなり、ツイッターでもどんどんリツイートされていく。16年前には考えられなかった状況であり、世界。

 そこに「北上ラジオ」ディレクターのユーチューバー曽我部氏が、編集したデータを持ってくる。さっそくユーチューブにアップしていただく。なんだかこうなると頭の中がお祭り状態になってしまい、浮ついた気持ちで終日過ごす。

1月21日(月)

  • ニッポン47都道府県正直観光案内
  • 『ニッポン47都道府県正直観光案内』
    宮田 珠己
    本の雑誌社
    1,782円(税込)
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 宮田珠己『ニッポン47都道府県正直観光案内』搬入。

 各紙誌絶賛の上、「ダ・ヴィンチ」の「今月のプラチナ本」に選出され、追加注文が殺到している平松洋子『そばですよ』の直納に勤しむ。

 千駄木の往来堂書店ではO店長さんとなぜかダイエットの話。私、昨年の11月より体脂肪一桁を目指し、目黒考二さんが発明したダイエット法「メグトレ」に勤しみ、現在5キロ減。

 その後、赤坂の文教堂書店にてU店長さんともお話。こちらのお店もあるべき本がきっちりある頼りになる書店さん。当然、売上も好調なのだけれど、それもこれもお店の方々がしっかり売り場を周り、棚に目配せしながら的確に発注を繰り返しているからなのであった。

1月20日(日)

 5時起床。昨夜行われたビッグロンドン・ダービーのアーセナル対チェルシーとリヴァプール対クリスタル・パレスを観る。

 10時、以前より誘われていたのだけど、新たなサッカーチームに混ぜてもらい試合に参加。みんな私よりずっと上手く、そうなると足手まといにならないよう無難なプレーに終始してしまう。インパクトをまったく残せず。そういえば中学校の一軍戦に出たときもこんな感じだったのだ。メンタル弱すぎ。

 しかし2時間ボールを追いかけ回したら、新しい友達がいっぱいできた。唯一友達になれなかったのはボール。

 帰宅後、シャワーを浴び、うどんを茹で昼食とする。さっそく筋肉痛が出ている足を引きずりつつ近所のツタヤへ散歩。妻が今春受ける資格の参考書が読めないと嘆いているので拡大眼鏡を買って帰る。

 昼寝していると、大原サッカー場に浦和レッズの練習を見に行っていた息子に起こされる。マウリシオ、武藤、柴戸に握手してもらったらしい。

 名古屋の書店員さんから2月に盛岡へ一緒に行きませんかとお誘いのメールが届く。

1月19日(土)

「全然、緊張してないわ」と言い家を出てセンター試験に向かう娘を見送り、キロ5分25秒で10キロラン。

 シャワーを浴び、妻と買い物に行き、パンを焼いて昼食。PrimeVideoで「ウインド・リバー」とエミール・クストリッツァ監督の「マラドーナ」を観る。

 夜、塾で自己採点を終えた娘が帰ってくる。緊張でお昼のお弁当をほとんど残したらしい。いただきものの学芸大学の洋菓子店マッターホーンのダミエを一緒に食べ、やっと緊張がとけたよう。

1月18日(金)

 昨年あたりから、なんだかいろいろと変革のときというか、新しいことに取り組む時期というか、機が熟し過ぎたというか、もうひと花咲かせられるのではないかというか、もうすっかりいろんなことに飽きちゃったというか、なんだか自分の身体のなかにマグマが溜まっていることを感じており、今年はそれを一気に放出しようと決心したのであった。

 そのひとつが、ラジオ制作であり、午後、北上次郎さんのところへマイクとレコーダーを持って訪問する。題して「北上ラジオ」を収録。これを聴いたら本屋さんに走りたくなること必至の書評ラジオだ。今月中のオンエアーを目論み、早速、録音データーをディレクターのユーチューバー曽我部氏に送る。

 夜、お茶の水から湯島まで歩き、湯島天神にお参り。明日、センター試験の娘がすらすら答えが書けますようにと合格祈願した後、学業成就のお守りを買い求める。7時過ぎだというのに15人ほど並んでいる。

 これでKADOKAWAのブルドーザー営業ヘンミーが買って来てくれた京都の北野天満宮のお守りと、母親が浅草寺で買い求めてくれたお守りと3つ揃ったわけで、難しい問題の前では、どれか必ずひとつは効力を発揮することだろう。残るはお金の心配だ。

1月17日(木)

  • 物流危機は終わらない――暮らしを支える労働のゆくえ (岩波新書)
  • 『物流危機は終わらない――暮らしを支える労働のゆくえ (岩波新書)』
    首藤 若菜
    岩波書店
    902円(税込)
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  • 誰も教えてくれないイベントの教科書
  • 『誰も教えてくれないイベントの教科書』
    テリー植田
    本の雑誌社
    1,760円(税込)
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 通勤読書は、首藤若菜『流通危機は終わらない』(岩波新書)。出版業界も本が売れないどころか、本が運べないという問題に直面しており、非常に興味深い本だった。サービス(労働)にはしっかり対価が払われないと、その仕事をする人がいなくなってしまうのだけれど、その根底にあるものに気付かされ、ぞっとする。

 午前中、2月刊行、テリー植田『誰も教えてくれないイベントの教科書』の入稿。編集担当初のビジネス本。どんどん世界が広がっていく。

 一息ついたので、出版人として、そしてサッカー選手としても尊敬している芸術新聞社の社長、相澤さんと「げんぱち」でランチし、「クラインブルー」でコーヒー。すっかりジャンルを確立しつつある『美人画づくし 弐』池永康晟・監修を出版され、さっそく売れているらしい。

 午後、一気にデスクワークを片付け、夜、松戸の居酒屋「ひよし」へ。オークスブックセンター南柏店さんで開催される版元営業対抗フェア「南柏杯」の商品説明会。集英社サービスのTさんのプレゼンがお笑い芸人のようで大いに盛り上がる。

 飲み会から東京創元社の営業マンQさんとともに武蔵野線に揺られて帰る。2月刊行の、大ベストセラー『屍人荘の殺人』シリーズ第2弾、今村昌弘『魔眼の匣の殺人』の販促物作りの担当とのことで、ただいま本を読み込み、POP等に使う文言を必死に考えているらしい。

 作家、編集、制作、宣伝、営業......本に関わるすべての人の想いとともに本は届けられ、売れていくのだ。私もQさんに負けずに頑張らねばならない。

1月16日(水)

 ここ数日、ある同年代の書店の店長さんにインタビューしているのだけれど、自分に圧倒的に足りないのは、人のために、本の雑誌のために、という想い、考えだと気付かされる。私がいつも優先しているのは自分のこと。自分の感情。こんなんじゃダメだ。

 それは中学のサッカー部でレギュラーになれなかったときとまったく同じなのだった。あの時、チームのために戦うなんて考えたこともなく、いつもベンチに座って出番がないなら早く終わらないかなと考えていたのだ。そんなやつ、たとえ技術があったとしても使わないだろう。

 しかし試合に出られないのを顧問のせいにして、何度もぶつかって、結局、最後の大会も三年でひとりだけ出られずに終わってしまったのだ。

 あれから33年経って、自分もそれなりに成長しているかと思っていたけれど、24時間、少しでもお店がよくなるよう考え、スタッフに気持ちよく働いてもらおうと己を律する店長さんの言葉を聞いていたら、自分はまったく成長していないとわかったのだった。

 情けなくて、朝から涙がこぼれてしまう。自分はまったく中二病じゃないと思っていたが、真性の中二病だった。あの時のひねくれた考え方を捨てないと、とても前に進めない。

 そんなとき、浦和レッズのスローガンが発表された。

 浦和のために
 最後まで走り、闘い、貫く

 だった。

 私も

 本の雑誌のために
 最後まで売り、作り、貫く

 ことにしよう。

 なぜなら店長さんといつまでも友達でいたいからだ。

 ★   ★   ★

 編集の松村がインフルエンザでダウン。

 午後、浜本とともに東五軒町の加藤製本さんへおじさん二人組の取材。束見本作りに挑む。

 芥川賞・直木賞が発表される。「1R1分34秒」で芥川賞を受賞した町屋良平氏が、私と同じ越ヶ谷高校卒で驚く。

1月15日(火)

『ニッポン47都道府県正直観光案内』の見本出しで、お茶の水の日販さん、飯田橋のトーハンさん、後楽園の大阪屋栗田さん、市ヶ谷の地方小出版流通センターさんと取次店を廻る。

 午後は隠密行動。

1月14日(月・祝)

  • クロストーク (新・ハヤカワ・SF・シリーズ)
  • 『クロストーク (新・ハヤカワ・SF・シリーズ)』
    コニー・ウィリス,大森望
    早川書房
    2,970円(税込)
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    honto

 5時半起床。深夜に行われたトットナム対マンチェスター・ユナイテッドをDAZNで観る。アナウンサーが「また、デ・ヘアだ!!」と叫ぶほど、ユナイテッドのゴールキーパー、デ・ヘアが立て続けに神がかり的なシュートストップをする。プレミアリーグを観ているとキーパーをやりたくなる。

 11時ランニング。今日はひとりでゆっくり走る。キロ5分45秒ペースで18キロ。463バイパスは高校サッカーの決勝を観に行く中学生、高校生の自転車で、列ができていた。

 息子は練習試合、妻はパート、娘は受験勉強。その娘の昼食にナポリタンを作るため、スーパーにニンニクと赤ワインを買い出しに行く。レシピ通り作ったのに味は微妙。これなら「マ・マー」のレトルトをかけたほうが絶対美味しい。編集の高野も言っていたが、手作り料理はいつも市販のものに勝てない。

 娘が食べ終えた頃、息子が帰ってきたので、もうナポリタンはやめて、蕎麦を茹でる。市販のめんつゆの安定の美味さ。もちろん蕎麦だけでは足りず、ピザトースト2枚焼く。それでも足りないというので、おにぎりを作る。

 流経大柏と青森山田の高校サッカー選手権決勝を観る。努力した人たちは勝っても負けても美しい。努力していない自分は勝っても負けても醜い。

 そののち、一心不乱にコニー・ウィリス『クロストーク』(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)のページをめくり、ついに読了。まず何よりも読み終えたことに感動す。

1月13日(日)

 観に行くと何かしらいいたくなるのでずっと行かずにいた息子の試合を妻が観に行くというので、ついていく。息子は出番なくベンチで過ごしていた。いいたいことは山ほどあるがぐっと堪え、小野寺史宜『ホケツ!』(祥伝社文庫)を息子の机の上に置いておく。

 午後、その息子とランニング。必死に喰らいついていくと、今日はその背中を見失うことなくどうにか7キロ走り終える。タイムを確認するとキロ5分14秒。やればできる。ゴールデンウィークまでには息子と並走できるようになりたい。

 そのまま空き地で息子とサッカー。1対1で勝負するもまったく勝てず、思わずヒートアップ。全体重をかけてタックルしても、突き飛ばされてしまう。くやしい。

 平松洋子『そばですよ』が「東京新聞」で大きく取り上げられ、Amazonの在庫がみるみる減っていく。先週手当したのに追いつかず。無念。

1月12日(土)

 午前中、ランニング。キロ5分23秒で10キロラン。これが今のところの精一杯か。

 午後はコニー・ウィリス『クロストーク』(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)を読んで過ごす。2段組700ページ、読んでも読んでも終わらない。

 ウェストハム・ユナイテッド対アーセナルをDAZNで観る。下部組織出身のデクラン・ライスのプレミア初ゴールが、昨年の橋岡大樹の初ゴールに重なる。いい選手。

1月11日(金)

  • ニッポン47都道府県正直観光案内
  • 『ニッポン47都道府県正直観光案内』
    宮田 珠己
    本の雑誌社
    1,782円(税込)
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 午前中、病院へ。毎月恒例、尿酸値を下げる薬をもらいに行く。

 午後は、元リブロの矢部さんとランチ、ジュンク堂書店の田口さんとも合流し、本について、本屋さんについて、話を伺う。自分だけで聞くのはあまりにもったいない至福の時間を過ごす。

 夕刻、今月の新刊、宮田珠己『ニッポン47都道府県正直観光案内』の見本が届く。担当した宮田珠己さん本としては6作目。これまでの宮田さんの旅の集大成的作品。感無量。

 というわけでここからは頭を営業に切り替え、取次店さんへの見本出しに向けて初回注文〆作業。作るだけなら誰でもできる。売ってはじめて本になる。

1月10日(木)

  • クロストーク (新・ハヤカワ・SF・シリーズ)
  • 『クロストーク (新・ハヤカワ・SF・シリーズ)』
    コニー・ウィリス,大森望
    早川書房
    2,970円(税込)
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 とある書店員さんとスマホについて話す。通勤中など情報収集もあってついついSNSやらを見てしまい、本が読めない。なので、今年から意識的にスマホを遠ざけているという。

 その気持ちよくわかる。私もまったく同じなのだ。書店員さんなどと「電車に乗って周りを見渡すとみんなスマホを見ていて本を読んでる人いないですよね」なんて嘆いているのに、自分もそのうちの一人になっていることが多い。できることならスマホやSNSをやめたい。あるいはそれがなかった時代に戻りたい、のに、気づけばまったく昨日まで知らなかったNGTのニュースなど追って時間を消費してしまっている。

 私は何より本が読みたいのだ。サッカーが観たいのだ。それなのになぜこんなにスマホ(主にSNS)に時間を吸い取られなければならないのだろうか。もしやスマホはタイムマシンなのではなかろうか。指を触れている間、どんどん時間が勝手に進んでいっているのではないかと思うほど、スマホに時間を消費させられている。

 冷静に考えれば私にとって本を読むのの100分の1も楽しくなく、どちらかというと不愉快な気持ちや不安な想いになることの方が多いというのに、どうしてこんなに触ってしまうのか。サッカーがそうであるように人間とはストレスを感じることを好む動物なのかもしれない。

 とにかく本当にやりたいことのために、スマホから指を離さなければならない。私も今年から電車の中とベットの上という読書空間ではスマホに触ってはならないというルールを作ったのであった。そうして読みだしたコニー・ウィリス『クロストーク』(早川書房)が、まさにスマホとコミニケーションをめぐる小説で一気に引き込まれる。

1月9日(水)

  • 夜哭烏 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)
  • 『夜哭烏 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)』
    今村翔吾
    祥伝社
    748円(税込)
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  • 本の雑誌428号2019年2月号
  • 『本の雑誌428号2019年2月号』
    本の雑誌編集部
    本の雑誌社
    734円(税込)
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    honto

 今村翔吾の羽州ぼろ鳶組シリーズ第2巻、『夜哭烏』(祥伝社文庫)読了。いやはや面白い。一気に引き込まれるストーリーもさることながら、火消しの世界のなんと魅力的なことか。その世界、その装い、その誇り。しばしこの世界に没頭しようではないか。

「本の雑誌」2019年2月号搬入。

 午前中、会議。特集が決まらず1時間ほどぐだぐだ雑談をしていたら特集が決まった。会議の神髄は雑談である。

 午後、昨日の続きで、千葉を営業。津田沼の丸善さんを訪れると、二ヶ月前にリニューアルを終えたばかりだというのに、もうすでに各所でオリジナルのフェアや展開がされており感嘆する。あっという間に売り場に血が通い出している。

 S店長さんに話を伺うと、毎日、何度も売り場を廻って、本の売行きやお客さんの動きなどを観察しながら、売り場の改善をしていっているという。本の置き場所を日々変えてみたり、わかりにくそうなところには看板を付け足していっているそうだ。そしてS店長さんの思惑を越えて、スタッフの人たちが楽しんで売り場を作りだしているらしい。

 以前、必死にその背中を追いかけていたベテランの書店員さんたちが定年などで退職して行く中、同年代の肩を並べ本を売っていた書店員さんたちが、どんどん大きくなっていく。その肩に、その背中に、どうにか遅れを取らぬよう頑張っていくだけだ。こんな頼もしい人たちがいるかぎり、本を安心して送りだせる。ガンバレ、自分。

1月8日(火)

 千葉を営業。千葉は今、営業で廻っていて、とても楽しい。刺激にあふれている。というか単に本を買いたくなるお店が多い。私の仕事は本を売ることなのだけれど、サラリーマンである以前に人類であるわけで、人類というものが他の哺乳類と決定的に違うのは、食欲、性欲、睡眠欲以外に購書欲があるということで、だから本を買わないわけにはいかないのだった。それは本能であり、反射だから仕方ない。

 その本能を最大限に引き出してくれる本屋さんが千葉には多い。各ターミナル駅に出店されているくまざわ書店さんはどこも必要な本がきちんとあり、津田沼には県下最大級の丸善さんが使いやすく改装オープンされている。残念ながら昨年、柏の浅野書店さんや新星堂さん、津田沼の昭和堂さんという長年地域の読者を支え、想像してきた本屋さんが閉店してしまったが、それでも店内に入るとわくわくしてくるお店が千葉にはたくさんある。

 最も刺激的に先頭を駆け抜けているのは、千葉のJUNNUに校正・校閲の鴎来堂&かもめブックスの柳下氏が出店し、S店長が運営している「16の小さな専門書店」さんだろう。このお店にはミニシアターが併設され、そこで映画マニアでもあるS店長が、自ら交渉した映画を上映しており、もちろん映画だけでなく、並べられている本、その本の並べ方やフェアが本好きの心をぐっと鷲掴みにするものばかりで、たぶんここで本気で購書本能を発揮したら3万円くらいすぐ買ってしまうはずだ。自分の家の近所にあったら最もキケンな本屋さんのひとつだろう。

 そんな中、本日まず最初に訪問したのは、千城台のときわ書房さんだ。千葉駅からモノレールに揺られて約30分、開発された住宅街の駅前ショッピングセンターにある文具を入れて80坪の本屋さんだが、その手入れの行き届いた棚と平台には感動を覚える。まさに綺麗に整地され、耕された棚なのだ。

 ときわ書房さんといえば船橋本店や志津ステーションビル店も有名で、どちらもそれぞれ買いたい本が山ほど見つかるお店なのだけれど、私はこの千城台店さんのオーソドックスな、ディス・イズ・本屋さんな品揃えがとても好きだ。お客さんの欲しい本が過不足なく全ジャンル並べられ、80坪でも町を支える立派な総合書店。自分の家の近所にあったら最も幸せな本屋さんのひとつだろう。

 購書欲を高める本屋さんというのは、大きさや在庫量といった規模の違いではなく、結局そこに人(書店員さん)が居るかどうかなのだと思う。かつて大型書店さんが隆盛を極めたのは、お店の大きさではなく、そこに優秀な、お客さんに鍛えられた、特に専門書の担当の書店員さんが居たからなのではないか。結局、その売り場を耕す人次第なのだ。

 そうして、以前、津田沼の丸善のS店長さんに教わったことを思い出す。

「品数と品揃えは違う」

 S店長さんとスタッフの方々は今、1000坪を越える大型書店の、品数ではなく品揃えにこだわってお店を作っている。それが楽しくないわけがない。自分が住んでいる近所になくても本の買い出しに行きたくなる本屋さんのひとつだ。

1月7日(月)

 2018年マイ・フェイバリット・アルバム、ベスト1に輝いたFOXWARRENの「FOXWARREN」を聴きながら朝8時に出社。2019年仕事始め。

 窓を開け、机を拭いて、コーヒーを淹れ、年末、川崎大師に就職した助っ人がもってきてくれたお札に手を合わせる。

 休みの間に届いていたFAXや郵便物を整理し、まずは昨日〆切となった本屋大賞一次投票のFAX投票の打ち込み。これをせねば年明けを迎えられないのだけれど、毎年FAX投票してくれていたIさんやOさんから届いておらずどうしたもんかと一瞬頭をひねるも、IさんやOさんが勤めていた本屋さんは昨年閉店してしまい、お二人とももう書店員ではなくなってしまっているのだ。

 あんなに本が好きで、本を売るのはもっと好きで、そして気持ちを込めて売り場を作っていた人がもういない。狂おしい感情が新年早々突き抜けていく。今年はもう一軒も本屋さんが閉じませんように。

 打ち込みの合間に、水曜日搬入の「本の雑誌」2月号の部数確認のため取次店さんに電話する。取次店さんだって、我が社の入っているビルの一階で営んでいた三和図書さんが昨年末に廃業しており、今、そこは串カツ田中になっている。取次店さんももう一軒も閉じませんように。

 出版社の私にできるのは、本を作り、一冊でも多く売れるよう勤しむこと。

 午後、新年の挨拶を兼ねて、池袋や銀座の書店さんに営業へ向かう。

 長い休みを経て、こうやって本屋さんを廻ると、やっぱり自分は本屋さんが好きなんだなと深く深く実感する。そして営業という仕事も、もう25年もやっているくせにまったく上手にならないけれど、心底大好きなんだと身に染みる。一日でも長くこの仕事が続けられますように。

 夕刻、会社に戻り、2019年の目標やスローガンを立てる。

 2019年スローガン
 "一人称で取り組む"

 2019年10ヶ条
  本を読む
  人に会う
  話を聞く
  口を噤む
  心を鎮める
  集中する
  手を動かす
  足を運ぶ
  本を売る
  感謝を伝える


 丸善丸の内本店さんにて本を買い求めると、創業150周年を記念したパンフレット「丸善はじめ物語」をいただく。今年は記念商品や記念復刊などいろいろ予定されているようだ。

IMG_6542.jpg

1月6日(日)

  • ノマド: 漂流する高齢労働者たち
  • 『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』
    ジェシカ・ブルーダー,鈴木 素子
    春秋社
    2,640円(税込)
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    honto

 ジェシカ・ブルーダー『ノマド 漂流する高齢労働者たち』(春秋社)読了。年内に読み終えていたらベストに入れるほど面白かった。途中からこれは集中して読もうと取っておいた自分の馬鹿さ加減に涙が出て来る。

 アメリカでは、2008年の金融危機以降、仕事のなくなった人たち、資産を失ってしまった人たち、あるいは少額の年金しか支給されない人たちが、家賃やローンを払えなくなり家に住むことを諦め、車で暮らし始めているという。彼らは仕事を求めて広いアメリカを移動して生活する"ノマド(ワーキャンパー)"と呼ばれ、この『ノマド』はその実態を自らもワーキャンパーとなって迫る傑作ルポルタージュなのであった。

 ノマドの仕事は、シーズン時のキャンプ場の管理人や収穫時期の農場だったりするのだが、何よりも働き場所になっているのはなんとアマゾンの物流センターなのだ。アマゾンも繁忙期の労働者確保のため彼らを"キャンバーフォース"と呼び、駐車場まで確保して雇い入れている。そしてこの著者は、ワーキャンパーにいくら話を聞いても単なる取材では彼らの本当の気持ちには近づけないと、自らも車を買い、ワーキャンパーとして暮らし出すのであった。

 となると当然、アマゾンで働くことになるのだが、いやはや期せずして、まさかのアマゾン物流現場の実情が赤裸々にルポルタージュされている。

 サッカー場十数個分の広さを一日20キロ以上歩かされ、何千回とバーコードをスキャンする。ただそれだけの単純作業なのだが、日に千回近く腰を屈めるたりという肉体的キツさ、単純作業による精神的苦痛、また暑さ寒さといった環境により、多くの人が体調を崩していく。しかし体調を崩すのがあたり前のようで、ジェネリックの鎮痛剤が無料で配られているという。

 ノマドという暮らしの自由さ、不自由さ、そもそも暮らす=生きていくということは何なのかという根源的なことなど考えさせられ、しかもこれからの世の中では、自分だって住む場所を失う可能性がないわけではなく、非常に読み応えのあるノンフィクションだった。

1月5日(土)

 午前中に22キロ走り、2018年を5日過ぎて1000キロラン達成。昨年は痛風発症に4度も見舞われ、走れない時期がずいぶんあったので年越しの到達になってしまった。今年は月100キロ、年間1200キロと、息子と並走できるスピードを目指す。

 そのまま年末やり残し、妻から無言のプレッシャーを受けていた換気扇の洗浄に手を付ける。段ボールの中にゴミ袋を入れ、その中に分解した換気扇のパーツとセスキとお湯につけ、きっちりふたをする。放置している間にレンジフードやコンロを磨く。30分ほど経った後、換気扇のパーツを取り出し、歯ブラシで磨くとピカピカに。様子を見に来た妻が「清掃業者に頼む分浮いたね」と笑顔で語るが、浮いた分は私の懐に入るわけではない。

 どこへ行くかと言えば、娘の大学受験の費用である。昨日よりネット出願の受付が始まっており、娘とともに志望校のホームページに行っては申し込みをしているのだけれど、いやはや受験するだけでこんなにお金がかかるとは。クレジットカードの限度額が心配になってくる。30年前、受験すると言って、親からお金をくすねてパチンコを打っていた自分をはり倒してやりたい。

 いろんな意味でめまいがしてきたので早く寝る。

1月4日(金)

 朝5時に起きて今期プレミアリーグの天王山、マンチェスターシティ対リバプールを観る。アグエロとサネのゴールに新年初雄叫びをあげる。信じられないほど走り回ったベルナルド・シルバとピンチの芽を完璧に刈り取るフェルナンジーニョに見惚れる。新年早々、素晴らしいものを観た。

 受験勉強の娘を残し、浦和の神様、調神社にお詣り。今日から仕事始めの会社も多いらしく、スーツを着た一団が参拝の列に並んでいる。

 本の雑誌社はいったいいつから仕事始めなんだろうか。例年、前社長目黒さんの始動日、競馬の金杯の日(1月5日)が仕事始めになっており、目黒さんが退いた後もその伝統は残っていたのだけれど、今年はそれが土曜日にあたり、勝手に後ろ倒しで始まるのだと思い込み今日も休みにしてしまった。

 もしかしたら今日から出社だったのかもしれない。今日が休みでありますようにとお詣りする。

 須原屋さんに寄って、Facebookにて博報堂のNさんに薦められた『箱根0区を駆け抜ける者たち』佐藤俊(幻冬舎)を買い求む。昨日、箱根駅伝を初優勝した東海大学の、一年前の箱根駅伝を主に走れなかった四年生を中心に追ったルポルタージュ。

 こう書くと縁の下の力持ち的な御涙頂戴ノンフィクションを思い浮かべるけれど、たしかにそういう部分に感動しつつも、走れなかった者にはそれぞれ実力や怪我や心の甘えなど理由があり、そこで、とことんもがき苦しむ彼らは、その理由と真正面から向き合って挫折を受け入れ、そしてタイムを目指すのとともに東海大学の両角監督が掲げているように人間として成長していく。また箱根の舞台に立てた選手も、当日その場で思うように走れることがほとんどなく、時には敗者のように涙し、永遠にゴールがないことを教えてくれる。

 それらの様子を良き面も悪き面もしっかり描いているところがノンフィクションとして素晴らしい。自分のことしか考えない選手はそう書かれているし、またその選手と相容れず最後まで拒否したキャプテンも記し、選手が監督への不満を抱えていたこと、監督やコーチも絶対ではなく迷いながら進んでいる様子も綴られる。

 なんて偉そうなことを書いたけれど、実は箱根駅伝を観たのは昨日が初めてで、行きと帰りに同じ人間が走ってないことに驚いたレベルなのであった。そんな人間が読んでも非常に面白い箱根駅伝ノンフィクションだ。

 中町に出来た話題の焼きたて食パン専門店一本堂で、「日本の食パン」を買って帰る。トーストするとサクもちで美味。

 夕刻、ランニング。息子は塾が始まったので今日はひとりラン。しかし、息子と走った影響でペースがぐんと上がり、この一年で一番速いタイムで7キロを走り切る。まだまだ動かせば筋力はついてくる証拠。GWまでに息子と並走できるよう頑張ろう。目指せベルナルド・シルバ。

1月3日(木)

  • 地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団
  • 『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』
    森 功
    講談社
    1,760円(税込)
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    honto

 終日、自宅にて読書。森功『地面師』(講談社)読了。事実は小説よりも奇なり。いや、これはまさに黒川博行の小説の世界ではないか。

 ニュースを見ながら積水ハウスにしてもアパホテルにしても法務部もあれば不動産取引のプロだろうに何で騙されるかなと思っていたけど、これは騙されるかもしれない。取引に必要な印鑑証明からパスポートまで精巧に偽造されており、弁護士も行政書士もグルだったり、なりすまし担当はワケあり人間を温泉地からスカウトし面接までしてるとは。世の中、私が思っているよりずっとずっと巧妙に悪事を働いている人たちがいる。

 しかし、なにより恐ろしいと思ったのは、この自らの失態を利用して会長を追い出す悪巧みをする積水ハウスの社長だ。どちらも欲にまみれた同じ穴の狢ということだろうか。

 夕方息子とランニング。これ以上速く走れないというペースで走っても息子にはまったく追いつけず。4度目の年男の年、完璧に息子に何もかも追い抜かれた年と記憶する。

1月2日(水)

 朝、受験勉強の娘を残し、春日部の実家に行き、そこから東武伊勢崎線に乗って両親とともに浅草寺へ初詣。

 40年来続いている杉江家の年始行事であるけれど、小学校高学年からつい数年前まで嫌で嫌でしょうがない行事でもあった。初詣も両親と過ごすことも面倒で、退屈で、鬱陶しいだけだった。

 それがどうしたことか今では一年で最も愛おしい日となり、心待ちにしている。青空の下、仲見世商店街の行列に並んでお詣りし、凶ばかりのおみくじを引いて、セキネで肉まんとシュウマイを買う。やげん堀で一味を、舟和で芋羊羹を手にし、つるやで鰻重を父親からご馳走になり、雷おこしを買って帰る。

 毎年毎年まったく同じことをしており、それもまた以前は苦々しいことだったのに今は心底うれしい。変化しないことを忌み嫌っていた若い頃と変化なきことに安心を感じる年齢になったということなのだろうか。

 あと数年で傘寿となる母親が、鰻が苦手なので天ぷら定食を食べながら耳が遠くなりつつある父親の耳に口を寄せ、声をかける。

「お父さん、幸せだね。家族で浅草にお詣り来て、美味しいもの食べられて。あと何年来られるかね」

 その母親はお賽銭を投げた後、なかなかお寺から出てこないと思ったら、行列に並んで我が娘のために合格守を買ってくれていた。

1月1日(火)

  • 火喰鳥 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)
  • 『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)』
    今村 翔吾
    祥伝社
    814円(税込)
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 元日。終日自宅で過ごす。妻は昼寝、高3の娘は受験勉強、中2の息子と私はサッカーゲーム。午後3時、息子と走り初め。正月らしく雲も風もないすこぶる心地良い空の下、キロ5分30秒で10キロ走るも、息子の背中にもうまったく追いつけず。

 風呂に入り、ストーブの前でビールを飲み、ラジオ聴きつつ、読書。

 昨年、最も飛躍した作家のひとり、今村翔吾のデビュー作『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』(祥伝社文庫)読了。噂に違わぬ面白さ。『童の夢』の大迫力とは異なるけれど、"This is エンターテイメント!"。キャラよし、ストーリーよし、ページをめくる指がとまらない。

 それはさておき、帯にある加賀まりこさんの写真を見ていたら、この大女優が懇意にしていた今は無き本屋さん、飯田橋の深夜プラス1とその店長浅沼さんを思い出す。

 加賀まりこさんは暇になると深夜プラス1を訪れ、浅沼さんに「何か面白い本ない?」と気さくに訊ねられていたらしい。その問いに当然ながらも浅沼さんは、宮部みゆきや桐野夏生やその他諸々、その時面白い本を推薦し、それを毎度買って帰っていたという。私はすれ違いでお店に伺うことも多く、浅沼さんから「惜しい。今さっきまで加賀まりこさんが居たのに」と何度も残念がられたのだった。

 でもそんな全身書店員だった浅沼さんは書店員をやめ音信不通に、深夜プラス1は日高屋になってしまった。

 浅沼さん、今どうしてるんだろうか。もしあのままお店があって書店員をしていたら、「ちょっとちょっとこれまだ読んでないの?! 読まなきゃダメだよ、超面白いんだから」と、この『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』も絶対薦めてくれただろう。加賀まりこさんだってきっと浅沼さんの推薦で手に取ったはずだ。

 我が本棚を眺めてみれば、そうやって浅沼さんに薦められて好きになった本がいっぱい並んでいる。私の読書の師匠は浅沼さんだったのだ。浅沼さんにまた会いたい。会って本を薦めて欲しい。

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