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5月28日(木)

 明日、日直の予定だったものの、編集部が出社したいということで、急遽本日出社に変更。例によって7時に会社へ。

 テレワークというのは必要な仕事しかできなくて、私は50歳間近になってこんなこというのも恥ずかしいのだけれど、雑用が好きというか雑用が主な仕事だったりするので、なんかこのテレワークから抜け出して会社に行けるのが遠足みたいにわくわくしてしまう。出社したならば各自の机を拭いて、コーヒーを淹れ、郵便物やFAXを分け......「神は雑用に宿る」というのが心情なのであった。

 結局、雑用、雑談、それと雑誌といった"雑"のなかで私は生きているんだなあとこの自粛期間の約2ヶ月の間で気づいたのだった。

 雑用の後、明日、笈入店長が引き取りに来られるというフェアの最終確認。その後、書店さん向けDMを必死に作る。

 訪問営業がままならない今、DMやFAXやメールなどでどうにか商品の魅力を伝えねばならず、それは差別横断幕からの無観客試合で太鼓やゲーフラなど応援グッズをすべて禁止された我らが浦和レッズサポが、唯一残された手と足でリズムを取り、誇り高く「We are Diamonds」を歌ったように、残されたすべての可能性をつかって、本を届けねばならないということだ。

 集中して作業に勤しむと気づいたらあっという間に17時。くたくた。帰路につくと土砂降りの雨。どこにも寄れず帰宅。

 風呂に入って食事をしたらそのまま倒れ込むようにベッドへ。

5月27日(水)

  • ラマレラ 最後のクジラの民
  • 『ラマレラ 最後のクジラの民』
    Clark,Doug Bock,クラーク,ダグ・ボック,裕美子, 上原
    NHK出版
    3,300円(税込)
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  • アロハで猟師、はじめました
  • 『アロハで猟師、はじめました』
    近藤康太郎
    河出書房新社
    1,760円(税込)
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 営業再開した書店さんで本を買う。

 今村翔吾『じんかん』(講談社)、近藤康太郎『アロハで猟師、はじめました』(河出書房新社)、寺地はるな『希望のゆくえ』(新潮社)。

 そして椎名さんの推薦帯の光る、タグ・ボック・クラーク『ラマレラ 最後のクジラの民』(NHK出版)がすこぶる面白く、夢中になって読み進む。

5月25日(月)

 6時に家を出て、7時過ぎに会社着。テレワークの間にすっかり超早寝超早起きの癖がついてしまい、できることなら自粛解除後は7時〜15時という勤務時間で就業させてほしいのだけれど、営業としてはそんな早朝からお店を訪問できるわけもなく仕事にならず。というかそもそも訪問営業というのは、このコロナの中、再開可能なのだろうか。

 通勤で利用している京浜東北線は先週より若干乗客が増えたものの、まだすべての椅子が埋まる程度の混みよう。6月1日以降はどうなるか。

 会社の窓を全開にして、6月から千駄木往来堂書店さんで開催していただけるというフェアの準備。サイン本やオリジナルグッズをテーブルに並べ、帯を巻き、看板を作り、納品書を書き起こす。"This IS 出版営業"の日常が戻ってきて、なんだかニヤついてしまう。

 そうこうしているうちに本日の日直である事務の浜田が出社。居酒屋に行けずイライラしている浜田とは精神的にもソーシャルディスタンスを取りながら作業に勤しみ、夕方、北村薫さんの『ユーカリの木の蔭で』のサイン本を届けに、書店さんへ。

 出版社がテレワークしていて困ったことはないですか?と伺うと、電話注文ができずFAXで客注の注文をしても搬入日の折返し連絡がないことが多い、とのこと。気をつけねばなりません。直帰。

5月8日(金)

  • ヤマケイ文庫 仁淀川漁師秘伝
  • 『ヤマケイ文庫 仁淀川漁師秘伝』
    宮崎 弥太郎,かくまつとむ
    山と渓谷社
    979円(税込)
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 毎朝起きる度に、STORESというECサービスから「本の雑誌WEBストア」でご注文いただいた詳細のメールが届いている。そのひとつひとつに感謝しているわけなんだけどれど、本日届いたご注文のリストが何度も画面をスクロールするほどたくさんお買い上げいただいたもので、もうどう感謝を伝えていいのかわからず布団のなかで涙を流してしまった。

 きっと何かのおりにコロナで大変だろうから本の雑誌社を買い支えなきゃと思っていただき、そしてホームページから直販ショップを見つけて、気になる本をポチポチと注文していただいたのだろう。

 その人がどんな暮らしを送ってらっしゃるのかはわからない。けれど誰だってお金を稼ぐのは大変であり、その中からこうして少なくないお金を本の雑誌社の本に使っていただくことは、たとえそれが一冊の本、一冊の雑誌であろうと紛れもなく僕らスタッフのお給料になるわけで、なんだかほんとありがたいかぎり。

 その期待を裏切らぬような本や雑誌を作り続けるしかなく、これからも一生懸命作って行こうと決意しつつ、2週間ぶり? いや3週間ぶりに会社に出社。

 本日は「本の雑誌」6月号ができあがってくるので、その定期購読者のみなさまへのハリハリ(ラベル貼り)とツメツメ(封入作業)があるのだ。

  いつもはその作業を助っ人学生に任せているのだが、現在彼ら彼女らの体調管理を考えお休みしてもらっているので、事務の浜田、編集の高野、そして私の精鋭で本来2日かけてやっている作業を一日で終わらせるのだ。

 そういえば事務の浜田と会うのは前回の搬入時の1ヶ月ぶりなのであるが、とくに感慨もなく、作業はスタート。途中、来週から営業再開される丸ノ内の丸善さんに『着せる女』を直納したりしつつ、我らが精鋭は16時に全行程を終わらせたのであった。あっぱれ!

 帰りには昨日から営業を再開された三省堂書店さんに寄って、遠藤ケイ『蓼食う人々』(山と渓谷社)と宮崎弥太郎語り、かくまつとむ聞き書き『仁淀川漁師秘伝』(ヤマケイ文庫)を購入。

 この状況下、お店を開けて本を売るということは書店員さんにかなり大きな不安と負担とリスクを背負っていただいているわけで、特に私のように不要不急の単に読みたい本を買うことがいいことなのかどうかわからないのだけれど、唯一できることはレジで「(本を売ってくださって)ありがとうございました」と声をかけることのみなのであり、いつも以上に丁寧に言葉をそえる。

5月7日(木)

  • ホハレ峠;ダムに沈んだ徳山村 百年の軌跡
  • 『ホハレ峠;ダムに沈んだ徳山村 百年の軌跡』
    大西 暢夫
    彩流社
    2,090円(税込)
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 4時半起床。

 大西暢夫『ホハレ峠』(彩流社)読了。

 まさか岐阜の山奥の電気もガスも水道もないところで四季折々の自然とともに暮らしていたおばあちゃんのオーラルヒストリーが、これほどまでに壮大になるとは思いもしなかった。

 しかも著者の執念というか惜しみない取材により、たくさんの奇跡的な出会いがあり、多くの人たちの記憶の中でこのダムに沈んだ村との想いが交錯していくのである。

 人間はどこでどう暮らそうとやはりその土地、土地と切って暮らすことはできないわけで、特に現代のような都市生活でなければ、さらにその土地での暮らしにはその土地ならではの意味があり、それは長らくその土地で受け継がれてきたものだ。

 ダムに沈むということはその一切合切が失われてしまうというわけで、この本はその部分を特に声高に叫びはしないけれど、叫ばないからこそ伝わる慟哭が深く突き刺さる。

 まあしかし。そんな社会的な部分はともあれ、「ポツンと一軒家」のようなところで暮らしたそのおばあちゃんのその壮大なるオーラルヒストリーに身を委ねてほしい。人生って......生きるって......と素晴らしい小説を読んだ時のような大きな感動が押し寄せてくる。

 いや、人生ってやっぱりすごいわ。生きなきゃ、一生懸命生きなきゃ、まっすぐ生きなきゃ、と思うのであった。

5月6日(水)

 午後、ビール片手に、レッズサポ仲間とオンラインで語り合う。

 この平坦なアスファルトで舗装されたような凹凸のまったくない週末を半年近く過ごしているわけだが、サッカーがない人生というのはこれほどまでに精神が安定するものなのかと驚いている。

 ただし精神が安定すればいいというわけではなくて、やはり人生はジェットコースターのように上り下りときには逆さまになり宙ぶらりんになりあるいは突然事故で止まってしまって救出されたりしなければ生きている実感は得られず、そのためには埼玉スタジアムで多くの仲間と拳を突き上げ、愛する浦和レッズとともに戦う必要があるのであった。

 3時間半の飲み会の間になんど「いつ始まりますかね」と確認しあったことか。

「日本の古本屋」で注文していた松原岩五郎『最暗黒の東京』(岩波文庫)が届く。

5月5日(火)

  • アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ (文春文庫)
  • 『アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ (文春文庫)』
    ジョー マーチャント,Marchant,Jo,博江, 木村
    文藝春秋
    1,869円(税込)
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 昨夜は腹部に鈍痛があり、浅い眠りの中寝返りを繰り返し、何度もトイレに向かった。朝になってもその鈍痛は収まらず、朝食を控える。

 外は夏日で、不安を抱えながらランニングへ。すると不思議なことに腹痛はぱっと消え去り、軽快に15キロラン。光合成不足だったのだろうか。

 子どもの日なので何か美味しいものを食べさせたいと妻がいうので、我がソウルフードであり、子どもたちも大好物の珍来の餃子を買いにいく。

 越ヶ谷にあるこのお店は、高校時代からかれこれ30年以上通い続けている今で言う"町中華"のお店であり、私にとっては最もなくなってほしくないお店のひとつなのである。コロナ騒動のなかで果たしてお店は続けていられているのだろうか、営業されているのであればせめてテイクアウトででも応援したい気持ちで向かったところ、お店は元気にオープンしており、ソーシャルディスタンスのなか多くのお客さんが私以上に食支えしているようで一安心。生餃子4人前(4人前買うとプラス1人前サービスされる)と大盛りチャーハン2つを買って帰る。

『奇界紀行』を読んでたいそう気になり注文していた、ジョー・マーチャント『アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ』(文春文庫)が届く。

5月4日(月)

 朝食時、4時からランニングねと声をかけても返事のなかった娘だが、3時50分になると着替えてリビングにやってきたので、私も着替え娘とラン。前回は1キロほどで息があがってしまい散歩に切り替えたので、今日は2キロを目標にしようというとくちびるを尖らしたものの、黙って私の後を付いてくる。

 しかし前回リタイアしたところをどうにかクリアし、しばし走ったところで赤信号で立ち止まると激しい呼吸で座り込んでしまった。若いとはいえ、そうは簡単に体力は復活しないものだ。

 今日はここでやめるかと声をかけると、娘は首を振って、立ち上がり、ゴール地点と見定めていた有料道路の料金所を見つめ、青信号に変わった横断歩道を渡り、走り出す。

 そうだった。サッカーしていた頃の娘は負けず嫌いでいつもこうして対戦相手のFWや自分の壁に立ち向かっていたのだ。

 あれはいつだっただろうか。高校の女子サッカー部でのことだっただろうか。たまたま見に行っていた試合のハーフタイムで、足を引きずってベンチに戻ってきた娘は、私のところにやってくると足首をもみながら痛いと涙目になって訴えてきたのだ。

 痛みがあるときに無理をするとさらに悪化してしまうし、悪化させたら長引くだろうと、後半は交代して休んだほうがいいとアドバイスしたのだけれど、ハーフタイムの終了を告げる笛の音が聞こえると、娘は「やるっきゃないでしょ」と言って、颯爽とピッチに戻っていったのだ。

 上手い選手はたくさんいるけれど、強く戦える選手はなかなかいない。私はそういう選手が大好きだったし、娘にはそういうサッカー選手になってほしいと願っていたのだ。

 目標の2キロを走り終えた娘とハイタッチし、ゆっくり歩いて帰宅する。

5月3日(日)

  • アメリカン・プリズン (潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス)
  • 『アメリカン・プリズン (潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス)』
    シェーン・バウアー,満園 真木
    東京創元社
    2,310円(税込)
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 4時起床。もう日にちも曜日もまったく感覚がなくなっている。昨日と今日の区別がつかない。

 夏日。午前中、息子とランニングで埼玉スタジアムへ。本来であれば今頃自由席の待機列に並んで大分トリニータとのJ1第12節を楽しみにしていたはずなのだが、Jリーグは第1節を終えてからコロナの影響で休止中。まったく装いのない殺風景な埼スタを見ていたら涙がこぼれ落ちてくる。あそこを真っ赤に染めて、みんなと応援したい。往復12キロラン。

 昼食にそばを茹で、その後読書。

 伊吹有喜『雲を紡ぐ』(文藝春秋)読了。不登校になった娘が両親とぶつかり、長年疎遠だった職人の祖父の元で再生していくという、ある種テンプレ通りのストーリーなのに、なぜにこんな胸を熱くさせられるのだろうか。

 とてもいい小説を読んだなあと思いつつ、ゆっくりページを閉じると、昨年両親と旅した岩手山の姿が浮かぶ。無性に盛岡に行きたくなる小説だ。小野寺史宜の『まち』もそうだったけど、最近かっこいいおじいさんの話し増えているか、とも思う。
 
 注文していた、シェーン・バウアー『アメリカン・プリズン 潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス』(東京創元社)が届く。

 夕方、散歩。自宅待機になってからこの夕方の時間がものすごく苦手になった。今日も何もしなかったなあという憂鬱な気持ちになってしまう。毎日走るか歩くかしてやり過ごしている。

 interFM「Barakan Beat」を聴きながら夕食。その後、オンエアされていたNitty Gritty Dirt Bandが気に入り、CDを注文しつつ、「Uncle Charlie And His Dog Teddy」をAppleMusicで聴いて就寝。

5月2日(土)

 今日は休日なので仕事をしないでいいはずなのだが、もう休日と平日の区別がつかず、なんとなくだらだらと仕事をしそうになっている。

 村上龍『MISSING』(新潮社)読了。なんなんだこれは!? 幻想的で内向的でまったく村上龍らしくないのに、明らかに村上龍の小説なのだ。

 自伝なのか? 私小説なのか? いやそれにしたってこんなに美しい私小説なんて読んだことない。「私小説2.0」とでも呼べばいいのだろうか。おそらく作品世界の3割も理解できていないだろうけど、これはすごい作品なのはわかる。わからないけど面白い。わからないことが面白い。すごい小説はいつもそうだ。村上龍をずっと読み続けてきてよかった。

 それにしても村上春樹が父のことを書いた本を出した時に、村上龍が母について書いた小説を発表するというのが大変興味深い。

 昨日、Twitterで見かけ、しかしすでに絶版だったので「日本の古本屋」で注文した紀田順一郎『東京の下層社会』(ちくま学芸文庫)が届いた。自宅待機のこの期間で、すっかり「日本の古本屋」にハマっている。

 それにしても、どうしてこんなに通販で本を買っているんだろうか。いつも本屋さんで買う以上に買っている。やっぱりストレスなんだろう。本屋さんに行けない今、毎日一冊でも本が届くのが唯一の楽しみになっている。ぶるぶるとバイクの音がして、ことんとポストに投函される音が聞こえてくる。これまでまったく知らなかったけれど、わが家に郵便物が届くのは4時過ぎ。今はその時間が毎日楽しみで仕方ない。

『東京の下層社会』のページをめくると、冒頭で松原岩五郎『最暗黒の東京』(岩波文庫)という本が紹介されていた。早速、注文する。

5月1日(金)

  • ほのぼの路線バスの旅 (中公文庫 た 24-3)
  • 『ほのぼの路線バスの旅 (中公文庫 た 24-3)』
    田中 小実昌
    中央公論新社
    946円(税込)
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 本日の日直は事務の浜田。今週は月末月初のため事務や経理の出社を優先したところ、私の日直当番はなく、まったく会社に行かず。

 それでどうにかなるのなら私自身会社に必要ないのではなかろうか、なんてことを考えだすと鬱っぽくなっていくので、日直の浜田に教科書採用品の『誰も教えてくれないイベントの教科書』を忘れずに直送するようメールして、今日も一日仕事した達成感に浸る。

 昼ごはんを買いに近所のスーパーサミットへ。その2階で営業を続けられているくまざわ書店さんで、久しぶりに棚を見ながら本を買い求む。伊坂幸太郎『逆ソクラテス』(集英社)、田中小実昌『ほのぼの路線バスの旅』(中公文庫)。感謝。

 夕方、娘とランニング。しかし、もう半年近くろくに身体を動かしていない娘は、1キロも走ると息があがり、両手を膝につく有様。仕方なく散歩に切り替えて3キロ。帰宅後、ひとりでランニング、6キロ。

 佐藤健寿『奇界紀行』(角川文庫)読了。これは本年の「おすすめ文庫王国」のランキング入り決定か?! 宜保愛子や矢追純一やユリゲラーや、そして我らが川口浩探検隊で育った人間は、いくつになってもこういう世界の謎とか不思議なこととかを前にすると胸がワクワクするもんだ。しかもこの『奇界紀行』は文庫なのにカラー写真が満載で、しかもそのレイアウトも素晴らしく、まるで図鑑を見てるようなゾクゾク気分も味わえる。いやはや大満足の文庫本。

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