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2月22日(月)

 8時半に出社。二度目の緊急事態宣言の中、ほぼ毎日会社に行っているのは郵便物の仕分けという誰にも変わることのできない責務をまっとうするためである。

 同様にほぼ毎日出社している事務の浜田も歪んだ窓枠に力を込めて窓をあけ空気を入れ替えるという、これまたそのコツを誰にも伝授できない責務をまっとうしているのであった。

 会社というのは、こうした誰からも賞賛されることなき日々の努力の積み重ねによって存続していることを忘れてはならない。

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 アステカの神には心臓を捧げるらしいが、私の土、日を捧げた佐藤究『テスカトリポカ』(KADOKAWA)読了。もうクラクラ。ここがどこだかわからない。今何をしているのかもわからない。果たして自分が生きているのかすらもわからない。小説(ルビ:ものがたり)という魔術に乗っ取られてしまった。

 『テスカトリポカ』はこれまで読んだことのない規模の犯罪の物語だ。これまで読んだことのない狂気の物語でもある。帯にある"著者究極到達点!"はあまりに慎み深すぎるのではなかろうか。これは"小説(ルビ:ものがたり)究極到達点!"だ。 

 そういえばKADOKAWAの人が「『アラビアの夜の種族』と『犬の力』と『ダイナー』を足して割らない!」と豪語していたけれど、さらに大好きな真藤順丈『宝島』も足せそうな物語力なのであった。

 年に1冊くらいただならぬ気を放ち、思わず手にとってしまう本があるのだが、今年はこれかもしれない。

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 というわけで、土手の桜も咲きそうな、はるうららかな陽気の中、新刊、田口俊樹著『日々翻訳ざんげ』の見本を持って市ヶ谷の地方小出版流通センターさんへ。担当のKさんとお話。先日発表となった丸善ジュンク堂書店さんの帳合変更のことや朝日新聞書評欄で紹介された柳原一徳『本とみかんと子育てと』(みずのわ出版)のことなど。

 市ヶ谷駅の立ちそば「瓢箪」で昼食をと思ったものの、まさにランチタイム直撃で混雑していたので断念。トーハンさんより搬入連絡票が届いてないと連絡があり、慌てて会社に戻る。

 メール再送信後、編集よりやっと届いた書影データや目次などを各出版情報受付所及びプロモーション活動部門にガシガシ登録していく。

 夜、見知らぬテレビ局の人から新番組の相談をしたいとメールが届くが、企画書に「なぜ、こんな雑誌が今も存在できているのか――」とQ数を上げて大書きされているのを見、おそらく先方がいう「こんな雑誌」を作っている我が身としてはひどく悲しくなり、お引取り願う。

 帰宅後、YouTube「水内猛のオフサイドぎりぎり!」を見る。水内猛を進行役に岡野雅行、永井雄一郎、坪井慶介が今年のレッズについて語り合っているのだが、そのゆるさと本気さがたまらず面白い。特に岡野の相変わらずの野人ぶりに爆笑しているうちに今日あった不愉快なできごとを綺麗サッパリ忘れてしまう。

 岡野はやはり素晴らしい。岡野みたいな人間にならなければならないと、名著『野人伝』(新潮社)を本棚から引っ張り出し、再読。

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