8月24日(木)甘えのない世界
とある書店さんに頼まれていた販促物を届けにいくも、担当の方は見当たらず、事務所へ回る。
そこでは幾人もの人が忙しく立ち回っており、これはタイミングの悪い時間に訪問してしまったと反省しつつお声かけするも、まったく反応してもらえず、我、透明人間と成り果てる。
至近距離、目の前1メートルに人はいるのだが、どうやら私は見えないらしい。改めてさきほどより声を大きくしてみるもそれでもやはり気づいてもらえない。こんな時、身長が2メートルくらいあればいやでも気づいてもらえるのだろう。残念ながら私の身長は顕微鏡でやっと確認できるミクロなのであった。
気づいてもらえれば5秒で済むことなんだけれど、相手にしてみれば、こいつ(私)がどれだけ面倒なことを言い出すかわからないのだから、それは無視するのが得策だと思うだろう。ただし無視されてしまうと時は永遠なのだった。回れ右をして宅急便で送り直すという手立てもあるが、それでは私の存在価値はなくなってしまう。
勇気を振り絞り、改めてさきほどよりも大きな声で告げるとやっと私の身体に色素が宿り、目を向けてもらえたのだった。販促物をお預けし、一件落着。52歳になろうと、30年続けようと、本屋大賞を立ち上げようと、営業の現場ではそんなことはまったく関係ない。人として失礼なことをしていないかどうか、邪魔になっていないか、迷惑をおかけしていないか、売れる本を出しているかどうか、そういう甘えのなさが私は大好きだ。
その後、25年来のお付き合いの書店員さんを訪問。アイスコーヒーを出していただき、1時間ほど夢中で話す。
この書店員さんとの最初の対面だって、そう簡単なものではなかったはずなのだ。