3月21日(木)前田隆弘『死なれちゃったあとで』を読む
前田隆弘『死なれちゃったあとで』(中央公論新社)を読み終える。
年末ベスト級の本なのだけれど、この本の魅力をどう伝えたらいいのか頭を悩ませる。
そのタイトルどおり、後輩や父親や仕事相手やたまたまの事故でなくなった人たちの「死なれちゃったあとで」考えたことが記されているのだけれど、それがへんなノスタルジーや後悔ではなく、もっと赤裸々な、私やあなたがそうしたときに考えるとるにたりたいことも含めた感慨が記されているのだった。
だからこそ「死」というものがリアルに描かれ、そのおかげで「生」というものが深く見つめられる。
ずっと昔から死というものがなんなんだろうと私も考えていた。たとえ肉体がなくなってもその人のことを思いだしているなら決して死んではいないのではないかと思っていた。父親はもちろん、早くに亡くなってしまった尊敬する人たちを思い出すたびに、まだ僕の中では生きていると信じていた。
読んだ本の順番が逆になるのだけれど、数日後に読んだ吉本由美、田尻久子『熊本かわりばんこ』(NHK出版)で、田尻久子さんが愛猫フジタを喪った話でこんなことを記していた。
「不在を意識することは、喪失を確認しているのとは違うとつくづく思う。いないことで、より存在が際立つ。」
そう、『死なれちゃったあとで』で書かれているのは、そういうことだと思ったのだった。
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午前中、『絶景本棚3』の見本と注文短冊を持って、市ヶ谷の地方小出版流通センターさんに伺う。
午後一旦会社に戻って営業へ。
夜、大竹聡さんと神田の「おでん なか川」で一献。日本酒がするすると入っていく。