5月4日(土)ディヴィッド・グラン『絶海』
ディヴィッド・グラン『絶海』(早川書房)読了。
これまで本格探検ノンフィクションの最高傑作といえばダントツで、1914年に南極大陸横断を試みたイギリスのシャクルトン隊を記すアルフレッド・ランシング 『エンデュアランス号漂流』(新潮文庫)だったわけだけれど、『絶海』はそれに並ぶ本格探検ノンフィクションの傑作だった。
時代はシャクルトン隊より遡ること1740年。軍艦5隻を中心としたイギリスの小艦隊が、財宝を積んだスペインのガレオン船を襲うという命を受け、太平洋へ向かった。
しかしそこで待ち受けていたのは「死者の路」とも呼ばれたホーン岬をはじめとする苛烈な自然環境。
現代では考えられない粗末な船と装備で彼らは立ち向かうが......いやはや人間というのはこんな過酷な状況で生き延びられるものなのか......いやたくさん死んでいるのであるけれど......。
さらにその壮絶な環境に置かれたときに人間というものはどうなるのか。そしてその人間の集合体である社会は、帰国後の彼らをどう扱ったのか。
シャクルトン隊とは似ても似つかない、まったくまとまりのない隊ではあるのだが、その分リアルで、出世や嫉妬、そして報告書に振り回される我々の生活と変わらず大変興味深い。
まさか、令和の時代に、こんな本格探検ノンフィクションが読めるとは思いもしなかった。うれしい。
★ ★ ★
朝9時、妻とともに介護施設へ母親を迎えにいく。
先週は横浜から友達がきたりと都合二日で6人もの人が遊びにきたのだけれど、今日はゴールデンウィークのせいもあって誰も来ず。静かに過ごす。