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6月19日(水)旭屋書店銀座店

一路、宇都宮へ。

喜久屋書店を訪問し、Oさんにご挨拶。今や銀座・数寄屋橋の阪急に旭屋書店さんがあったことを知らない人もいるかもしれないが、その旭屋書店銀座店で長らく文芸書の担当をしていたのがOさんなのだった。

思い返せば私が本の雑誌社に入社したとき、前任の営業の人は体調を崩しており、対外的な引き継ぎは3日しかできなかった。

そのうち2日は取次店さんを回り、最後の1日は新宿の紀伊國屋書店さんと山下書店さんにご挨拶に伺った。

翌日からも関東近郊の巡回営業書店約200軒を一緒に廻るはずだったのだが、そこで前任者の方の身体が悲鳴を上げ、あとは自分ひとりで廻ることになったのだった。

私はそれ以前も出版社に勤めており、営業職だったから、出版営業がすることは理解していた。しかし、前職は医学書、それも歯科専門の出版社だったから、日々売れるものが変わっていくいわゆる書店の花形である文芸書の売り場に関してはほとんどわかっていなかった。

前任者の一言アドバイスを記した訪問店リストを片手に、本の雑誌社の営業として初めてひとりで訪問したのが、銀座の旭屋書店さんだった。おそらく本の雑誌社に入って一週間も経っておらず、案内する新刊の内容もまったく頭に入っていなかった。足が震え、心臓は破裂しそうに脈打っていた。

私の緊張など気にすることなくOさんとそしてもうひとりの担当だったTさんは笑顔で迎えてくれた。それは「本の雑誌社」という看板と歴代の営業の人たちのおかげであることは間違いなかった。

お店を出て、これまでの営業の人たちの仕事ぶりを汚さないようにと思ったことを今でも覚えている。そして、これまでの本の雑誌社の一番の営業になろうと誓ったことも。

Oさんは宇都宮で相変わらずびっしりとした筋の通った売り場を作られていた。

本の話を、たくさんした。

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