7月23日(火)中原一歩『小山田圭吾 炎上の「嘘」』
中原一歩『小山田圭吾 炎上の「嘘」』(文藝春秋)読了。
小山田圭吾もCorneliusもフリパーズ・ギターも実はまったく知らないのだった。しかし2021年のオリンピック開幕を数日前に控えたある日突然、「小山田圭吾」という人が、炎上したことは知っている。「炎上」というものはそういうものだろう。
そもそもは興味本位でペラペラめくりだしたのだが、本物の、魂のこもったノンフィクションだとすぐに気づき、居住いを正して読み直した。
過去の雑誌記事で同級生をいじめたと証言をしていた小山田圭吾は、果たして本当にそんなひどいことをしたのか。著者はその真実を探るため同級生を探し歩き、確認していく。さらに、もししていないのあれば、なぜあのようなインタビュー記事が掲載されたのかも探っていく。
誰かが肉体的に殺された殺人事件ではないけれど、ひとりの人間が社会的に抹殺される事件であり、その現代的な事件を追った強烈なルポルタージュだ。ものすごく冷静に、しかし胸のうちに熱いものたぎらせ、著者は足を使って迫っている。
そして──。
一番かっこ悪いやつを炙り出している。ロックの雑誌を作っておきながら、いちばんロックじゃない人間を。
これぞノンフィクション。これぞルポルタージュだ。