8月31日(土)西村亨『孤独への道は愛で敷き詰められている』
2024年は、西村亨『孤独への道は愛で敷き詰められている』(筑摩書房)を読むためにあったのだ。こんな孤独な魂の叫びの小説は初めて読んだ。
「好きな自分なんて見つかりそうになかった」という主人公の「私」は、自己肯定感が限りなく低く、せっかく付き合うことのできた彼女とも、「自分よりもっと良い人が見つかる」はずと別れてしまう。
遠く離れた自然の中で生きようと、「私」は北海道で農業ヘルパーの職につくも、そこでも
「次はどこに行けばいいのか分からなかった。結局自分はここでも上手くやれなかった。どこでも上手くやれないのかもしれない。そう思えて仕方なかった。」
と逃げるように去ることになる。
まるで私小説のような味わいで、奇遇にも同姓の西村賢太氏の『苦役列車』を読んだときの感動を思い出した。
太宰治賞受賞のデビュー作『自分以外全員他人』を読んでないのが恥ずかしい。恥ずかしいけれど、こんなすごい作家がいてくれたことがとてもうれしい。