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9月1日(日)4分の2

「今週もゆっくりさせてもらいました」

肉じゃがとシャケの塩焼きと卵焼きの晩御飯を食べ終え、すっかりぬるくなったお茶を飲み干すと、母親はまるで高級旅館に宿泊したかのように頭を下げた。

介護施設でどれくらい寝ているかわからないけれど、週末実家に戻ってくると夜の8時から翌朝7時過ぎまで眠っている。

朝、シャッターを開けて起こすと、「はあ、よく寝た。一度も起きなかったよ」と、いつも大きなあくびをするのだ。

母親が心置きなくゆっくり過ごすのは良いことだろう。しかし果たしてこんな生活がいつまで続くのだろうか。

結婚している私には4人の親がいる。そのうち私の父親と妻の父親はすでにこの世にいない。

4分の2。残すは、私の母親と妻の母親の二人。

4分の0になる日、私は何を思うだろうか。どんな気持ちになるのだろうか。

「また来週もお待ちしております」

と母親に言って、しばらくふたりで笑いあった。

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