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10月29日(火)外部講師

朝、この春まで大学生だった娘に、今日は知り合いが大学で講義するので聞きにいくと話すと、「私、外部講師の授業大嫌いだったんだよね」と言い出す。

「なんかさ、みんな自分の成功を語ってて気持ち悪くてさ」とその理由を語るのだが、今日の外部講師の授業は絶対そんなことにはならないのだった。

なにせ講師は、『早稲田古本劇場』の著者、古書現世の向井さんなのだから。

10月28日(月)座談会のまとめ

  • 巨人軍vs.落合博満
  • 『巨人軍vs.落合博満』
    中溝 康隆
    文藝春秋
    1,980円(税込)
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朝9時半に出社。21連勤(予定)の14日目。

新しいMacBookが届いたものの、とても移行やセッティングしている時間はなく、私物のMacBookを持ち込み、終日、座談会のまとめに勤しむ。

中溝康隆『巨人軍vs.落合博満』(文藝春秋)読了。面白かった。

はじめにに見かけた時、『嫌われた監督』文庫化便乗本?!なんて思って躊躇していたのだが、旧知の編集者が「すごく面白いんで、読んだ方がいいですよ」と薦めてくれたのだった。

これは書斎派ノンフィクションというのだろうか。当時の新聞や雑誌、テレビ等を徹底的に調べ上げ、それぞれの選手や監督、オーナーがどんな言葉を発したかを手繰り寄せ、一本の糸にしていき、巨人時代の落合をひもといていくのだった。その筆致はまるで坪内祐三さんのようでもある。

そのコメントの数々が、変に今あらたにインタビューするより生々しくて面白いのだ。昨今、YouTubeで引退後の選手が赤裸々に語ることが増えており、私もそうしたYouTubeを楽しく見ており、これはもしやスポーツ・ノンフィクションはなかなか難しい立場になってしまうのではと考えていたのだけれど、そんなことはなかった。

落合と原、落合と松井、落合と清原、そして落合と長嶋、落合とナベツネの新聞記事などから映し出される人間模様は、個人と組織、個人と個人の、エゴや嫉妬や羨望にまみれている。その中でのちに『嫌われた監督』になる落合博満という人間の凄さと独特さが、大変興味深い。そしてあの時代の空気を思い出させるのだった。

10月27日(日)神保町ブックフェスティバル2日目

昨日と同じ朝8時半に出社し、すずらん通りのワゴンまで本を運んで並べる。二日目となると慣れたもので、9時過ぎには並べ終えることができる。

10時開店まで時間があるので皇居ラン。天気も良いのでランナーがたくさんおり、抜きつ抜かれつしながら2周する。

ブックフェスティバルは、途中2度雨が降るも、ほとんどの人が雨も気にせず本を物色しており、ここのひとたちは本以外目に入っていないのだった。昨日と変わらず相変わらずのすごい人出で、ワゴンと会社を行き来し何度も本を補充しているうちに18時。充実の2日間を終える。

夕飯に大阪より出店していた140Bの青木さんと、青木さんの宿泊するホテル近くの「しんぱち食堂小川町店」にて、豚生姜焼き定食(肉大盛)を食す。幸福な疲労に包まれつつ帰宅。

10月26日(土)神保町ブックフェスティバル初日

朝8時半に出社し、すでにすずらん通りにずらりと並べられているワゴンまで、折コンに詰め込んだ本を運んでいく。どかどかと本を並べている間に、事務の浜田と助っ人の鈴木くんが幟を立てたり、釣り銭の用意をし、お店の開店準備にそれぞれ勤しむ。

10時の開店前から多くの人がやってきて、二重三重の人垣が閉店の18時まで途絶えることがない。神保町ブックフェスティバルは元々人気のイベントだったけれど、コロナ明けの去年あたりからその人出が尋常でなくなってきた。もはや読者の人とゆっくりお話ししながら本を売る、なんてことはできず、インバウンドが列をつくる秋葉原の「横浜くりこ庵」のよう。

まあ、これも一種のインバウンドであり、観光だろう。とりあえずあちこちに行って、お土産のように本を買う。だからいつもの本の売上や本屋さんと比較して嘆いてもしょうがないのだった。別の世界線なのだ。

少し前までこのインバウンドを増やせばいいんじゃないかと思い、イベントを夢中になってやっていたのだけれど、結局それはお祭りの時だけ観光客が押し寄せるのと一緒で、祭りが終わればみんな帰ってしまうのだった。

なので今は、町にいる人たちの住み心地をよくすることを考えたほうがいいのではと思ったりしている。

10月25日(金)パソコン崩壊

朝ラン5キロ。出版健保で痛風の薬をもらってから出社すると、なんとMacBookが画面真っ白で立ち上がらず、THE END。10年以上使っているので壊れて当然なのだが、果たしてデータはどうしたらよいのか...。

ただし本日は昼から蔵書整理のスッキリ隊出動で頭を抱えている時間もないのだった。

昼、古書会館で待ち合わせし、立石書店の岡島さんの軽バンに乗り込み、高島平の団地へ。すでに到着していた古書現世の向井さん、そして浜本ともに階段33段の三階より、約1500冊の蔵書を整理する。

1時間半で終了。本日のスッキリ飯は、「両面焼きそば あぺたいと 高島平本店」にて、両面焼きそば(中)を食す。カリカリに焼き上げられた麺がポキポキして美味い。

しかしパソコンの壊れた私の心はスッキリせぬまま帰宅。

10月24日(木)カバー


新人ベテラン編集者の近藤から単行本のカバーの相談を受ける。ただし私にも答えはない。

ひところ、Amazonの画面上でしっかりタイトルが認識できるのがいいとか、Instagramで映えるのがいいとか言われていた。

目立つもの、購買欲を煽るもの、思わず手が伸びてしまうもの、というのが帯も含めてカバー(表一)の目指すべき方向なのかもしれないが、私自身はここ数年、そういうものよりも、家に持って帰りたくなるような、家の中にあって「これ好き」と思えるようなカバーにしたいと思いながら装丁家さんから届くラフを眺めている。

そして自分が本を買う際にも、その判断基準でレジに向かうか本を棚に戻すかしていることに気づいた。だからラフを見ながら考えるのは、「これ売れるかな?」ではなく、「これ買うかな?」なのだった。ある意味それは「売り物」というよりも、「物」として優れているほうを選んでいるのかもしれない。

この5年くらいで驚くほど増えてきた独立系書店さんの注文を見ていると、「物」として優れたの本への注文が圧倒的に多い。それはカバーだけでなく、もちろん本の内容も含めて評価されてなんだけれど、「⚫︎万部突破」や「第一位」なんて煽り文句よりも、小さな声で本の内容をしっかり記したもののほうが好感を持たれている気がする。

マスを目指すのか、好きを目指すのか、いや本当はその両方を目指すべきなのかもしれないし、結局、売れた本のカバーがいいという結果論だったりするので、煮え切らないアドバイスしかできずに終わってしまう。

午後、早川書房さんへ取材。その後、中井の伊野尾書店さんに直納。

10月23日(水)ポカ

入社以来、最大級のボカをしてしまった。ずっと心の奥底で違和感を覚えていたのは、このせいだったのだ。浜田からのメールでポカを知った時、駅のベンチでしばらく動けなくなってしまった。

原因は私自身の確認不足(書類一枚見れば済んだこと)。どうして確認を怠ったのかといえば、気が急いていたからだろう。ではなぜ気が急いていたかといえば、仕事が多すぎるからだ。そのせいで、最近、小さなミスが増えていた。そして、この大きなボカだ。仕事はどんなにたくさんあっても深呼吸して取り組むべし。そして仕事は優先順位の高い順に、メールは優先順位の低い順に処理すべし。

夜、埼玉スタジアムへ。母親の介護が始まって以来、思うように応援にいけず苦しい思いを抱えているのだけれど、平日開催は心置きなく浦和レッズに向き合えるのだった。

腹の底から声を出し、時には血が流れ出すほど手を叩き、足がつるほど飛び跳ねて応援していると、引き分けを覚悟したロスタイムにPKを獲得するではないか。チャントをやめて静まり返る中、チアゴ・サンタナがボールをゴールネットに突き刺し、埼玉スタジアムに「We are REDS」が木霊した。

私は生きている。この瞬間のために生きている。

10月22日(火)ドゥマゴ文学賞

  • イラク水滸伝
  • 『イラク水滸伝』
    高野 秀行
    文藝春秋
    2,420円(税込)
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昨夜は高野秀行さんの『イラク水滸伝』でのドゥマゴ文学賞の受賞式が、飯田橋の東京日仏学院で行われたのだった。

そこには高野さんの各社の担当編集者も駆けつけていたのだけれど、気づけば私はその中でほぼ最年長であり、しかも担当として最古参であることがわかった。

高野さんと出会ったのは船橋の居酒屋で行われた酒飲み書店員大賞の受賞式で、あれは2006年のことだった。今から19年も前のことだ。

『ワセダ三畳青春記』が酒飲み書店員になって重版がかかるまで、高野さんの本は一度も増刷されたことがなく、それでも本が出続けていたのは、その才能を信じきる編集者が集英社にいたからだった。

その人は堀内倫子さんといい、『ワセダ三畳青春記』は、その堀内さんの強力な執筆要請によって生まれた作品だった。刊行から3年が過ぎていた『ワセダ三畳青春記』は受賞をきっかけに重版をかさね、それに牽引されるようにして高野さんの他の著作も重版となり、気づけばこうしてたくさんの編集者が原稿を待つ作家になっているのだった。

私が高野さんの本を作るようになってからは、その堀内さんに恥ない本を作らなくてはと意識しながら本を作ってきた。ただ残念ながら堀内さんは2009年に他界され、胸を張って『謎の独立国家ソマリランド』の刊行を報告したのは墓前であった。

そして今、高野さんの担当編集者の最古参として私がいることになった。いや、なってしまった。

メルシャンのシャンパンに酔っていた頭が急にさめてくる。

今度は、ここにいる編集者に負けない本を作らなければならないのだ。『イラク水滸伝』よりも、『辺境メシ』よりも、『謎のアジア納豆』よりも、『幻のアフリカ納豆を追え!』よりも、『語学の天才まで1億光年』よりも、『世界の納豆をめぐる探検』よりも。

10月21日(月)優先順位

朝、母親に今週末と来週末は、神保町ブックフェスティバルと伊野尾書店での本の産地市があるから迎えにいけないと話す。

本当は土曜日に話すつもりだったのだけれど、せっかく家に帰ってきたのに悲しい気持ちにさせるのもあれだしとかいろいろ考えて介護施設に戻る当日の朝になってしまった。

いや、ただ自分が言い出せなかっただけなのだけれど。

それを聞いた母親は表情も変えず、「いいよ、迎えに来なくても。あそこにいればいいんだから」と言った。

家に帰りたいと言われてもつらいけれど、施設に居ればいいといわれるのも切ない。結局、母親は私のことを気にして、本当のことを言えずにいるのだろうと思ってしまう。

私は、本を作り、本を売って、暮らしている。それができなければ暮らしていけない。だから最優先にしているのだけれど、ときおりその優先順位があっているのかわからなくなる。

冷たい風の吹く中、介護施設の車にウィンチで引き上げられ、しっかり車椅子を固定され、窓の向こうから母親が手を振っている。

私も手を振りかえす。

スーツに着替えて会社にいく。

10月20日(日)カリン

昨日の夏日が一転して、10度以上気温が下がる。今日はもはや冬。長袖を着て、父親の墓参りと車椅子を押しての散歩。カリンが実っている。

午後、父親の親友夫妻が遊びにくる。おばさんは昨日も来てくれたのだけれど、今日は自作のリハビリ道具を持ってきてくれた。

10月19日(土)2週間

先週は京都出張だったため、二週間ぶりに母親を介護施設へ迎えにいく。

特に不満も言わず、友達が作ってきてくれたおいなりさんを昼に三つ食べた。

10月18日(金)坪内さんの自著

9時に出勤し、編集中の北上次郎『新刊めったくたガイド大大全』の書名索引の取捨選択に勤しむ。

あまりに集中しすぎたため、はっと気づけば10時15分。慌てて会社をで、半蔵門線に乗って、三軒茶屋へ。坪内祐三さんの自宅に伺う。

『日記から』の制作中に佐久間さんと坪内さんの遺した蔵書の話になり、蔵書はともかくたくさんある自著を読者の方にお譲りしたいという話になったのだった。それならば来週末行われる神保町ブックフェスティバルが良い機会なのではとなり、本日引き取りに伺うことになったのでる。

ダンボール八箱の坪内さんの自著を浜本の車に乗せ、会社に運ぶ。運び入れると同時に中身を確認し、値札をつけていく。

その作業を終えるとまた『新刊めったくたガイド大大全』の索引作業に戻り、夕方ついに終了となる。残すは著者名索引だ。

雨降る中、昌平橋を渡り、神田明神下のローソンで缶ビールを買って、上野駅まで歩き飲み。今週もどうにか一週間無事に終えることができた。

10月17日(木)スーパームーン

仕事を終えて会社を出ると、落ちてくるのではないかと心配になるほど、月が大きかった。

10月16日(水)断捨離座談会

  • ときどき、京都人。: 東京⇔京都 二都の生活
  • 『ときどき、京都人。: 東京⇔京都 二都の生活』
    永江朗
    徳間書店
    2,200円(税込)
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    HMV&BOOKS

朝5時起床。6キロランニング。

朝9時に出社。事務の浜田は健康診断のため不在。

高野さんの新刊の再校ゲラに青入れ(修正漏れがないかチェック)。

2時から盛林堂書房の小野さんと古本屋ツアー・イン・ジャパンの小山さんを招き、来春刊行予定の日下三蔵さんの『断捨離血風録(仮)』の巻末に収録する断捨離ドキュメント座談会を開催する。

2時間ほどかけて抱腹絶倒の座談会を録り終える。蔵書整理の手伝いをしながら客観的な視点でその様子を綴っていた小山さんの日記も『古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸』と題して、姉妹本として刊行をすることを思いつき、提案する。

帰宅しながら振り出しに戻ってしまった高野秀行さんの新刊のタイトルを、ゲラや本棚を見ながら考える。高野さんの本のタイトルはタイトル自体も作品の一部になっているので、他者である私か考えるのは非常に難しい。50個ほど考えるもしっくりこず、はげしく落ち込む。

永江朗『ときどき、京都人』(徳間書店)を読む。京都に住もう。

10月15日(火)追加注文

  • 私の京都
  • 『私の京都』
    栗原 はるみ
    講談社
    1,760円(税込)
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    Amazon
    HMV&BOOKS

朝5時起床。5キロランニング。

8時半に出社。速やかに出張精算をし、売上を計算する。

金子さんから高野秀行さんの新刊の再校が届く。地図がカッコよく仕上がっておりしびれる。高野さんに転送すると、すぐにOKの連絡が入る。

西荻窪の今野書店さんから「本の雑誌」11月号の注文をいただいたので直納に伺う。発売してあまりにすぐの注文なので、もしや配本漏れかと思って担当のSさんに謝ると、そうではなくて売けれてしまっての追加注文とのこと。ここのところ毎号売りきれるので定期部数を増部しますとうれしいお話をいただく。

その後、春日のあおい書店さんにも「本の雑誌」11月号と『神保町 本の雑誌』をお届けし、会社に戻る。

夜、「おすすめ文庫王国2025」に収録する座談会を仕切る。6時半からスタートし、10時に終える。

家に帰ると妻から過労死の心配をされる。そういえば代休どころか夏休みもとっていなかった。

栗原はるみ『私の京都』(講談社)を読む。京都に住みたい。

10月14日(月・祝)シャリバテ

祝日。三泊四日の出張明けで、朝15キロ走ったところ、すっかりシャリバテ。

久しぶりにヤオフジと角上に買い物にいき、角上の天丼を食べて、その後ほとんどベッドで寝て過ごす。京都が恋しい。

10月13日(日)深夜高速

朝5時半起床、祇園に向けて8キロ走る。ランニングのために京都移住を考える。

下鴨中通ブックフェア2日目。

晴天。昨日に引き続き、京都はもちろん、滋賀、大阪、明石、姫路などから定期購読者の方々がたくさん会いに来てくださる。

秋の三連休も関係なく、京都に3泊して営業と物販のイベントの出張を無事終える。18時6分発のぞみ442号の中でフラワーカンパニーズの「深夜高速」を聴きながら帰る。

「生きててよかった」と思えるそんな夜があるというのは、どれだけ幸せなことか──。今夜がそんな夜なのだった。

本の雑誌社に入社して27年が過ぎたが、この会社に入って本当によかったと思った。たくさんの定期購読者の方々に会って、そう思った。こんな仕事はそうそうない。幸せだ。

自分の、日々の不満なんてどうでもいいのだ。とにかく読者のために。読んでくれてる人が面白いと思ってもらえるために。そのためにすべてをかけようと思った。

「本の雑誌」というものはいったいなんなのだろうか。作ってる我々をまるで友達や親戚のように思ってもらえる不思議な装置だ。これからも血の通った雑誌を作り続ける。「読んでてよかった」と思える雑誌であろうと誓った。

10月12日(土)下鴨中通ブックフェア


朝5時半起床、街中を8キロ走る。坂もなく、街は美しく、空気も澄んでおり、やっぱり京都はランニングに最高の街だ。

出張のメインイベントである下鴨中通ブックフェア一日目。朝、8時半に会場である京都府立京都学・歴彩館に着き、テーブル2台に段ボール4箱に積めて送っておいた本を並べる。

去年に続いての出店で、去年は京都に本の雑誌社がやってきた物珍しさからお客さんがたくさんいらしゃってくれたのだった。

しかし2年目の今年は飽きられてまったく来てもらなかったどうしようと不安抱えていたものの、10時の開店と同時に定期購読の方々が「よくきてくれました!」とやってきてくださり、たくさん本を購入していただく。その後も「浜田さんは来ていないの?」「松村さんが来るのかと思った」「近藤さんの編集後記楽しみにしてます」など声をいただき、胸が熱くなる。

10月11日(金)とほん

朝5時半起床、鴨川沿いを10キロ走る。京都はランニングに最高の街だ。

8時に出発し、ずっと行きたかった奈良県大和郡山市のとほんさんを訪問する。

とほんさん、実は2014年オープンで、2015年開店の誠光社さんや2016年開店のTitleさんより前に店を開けた独立系書店の先駆けなのだった。

その品揃えはインディペンデントな出版物や雑貨も並んでいるものの、ふつうの文庫もたくさん並んでおり、開放的な入り口同様、間口の広い本が棚にぎっしり詰まっている。しかも昨日発表になったノーベル文学賞受賞のハン・ガンの著作もPOPつきでしっかり置かれているのだった。10年の、いやその前のチェーン書店員時代からの揺るぎなさがしっかり詰まった本屋さん。思わずたくさんの本をl購入してしまう。

奈良市に移動して、本の雑誌社の本を並べていただいているほんの入り口さんを訪ねる。眼鏡屋さんと電気屋さんに挟まれた心落ち着く立地で、丁寧に選書された本が並んでいる。日本中に意思を持った本屋さんが増えていることを実感する。それはすなわちそういうお店を求めている人が全国にいるということだ。

その後ぐいぐいと大阪へ向かい、MOMO BOOKSさんを訪問し、夜は6年前にジュンク堂書店さんを退職したNさんともつ鍋をつつく。

社労士となって活躍しているNさんだけれど、週に2日は本屋で働いている夢を見るのだそうだ。

こんなに本屋を愛する人を、本屋から離れさせてしまう業界であることが悔しい。とても悔しい。

10月10日(木)京都

10時発のぞみ221号で京都に向かう。

新幹線に乗っていると、車窓の向こうに見えるたくさんの家々、窓が並ぶマンション、ずらりと車が駐車された工場、そしてショッピングモール、この中にいる人たち全員が読みたくなるような本や雑誌を作りたいという謎の野望がいつも湧いてくる。

12時15分京都着。友人である140Bの青木さんが出迎えてくれて、すぐに三鷹のUNITÉをやっている大森さんが京都九条にオープンした鴨葱書店に連れて行ってくれる。現在拡張工事中のようだが、かっこいいお店で感激する。

その後、フェアを開催いただいているジュンク堂書店滋賀草津店さんを訪問。長年お会いしたかった書店員のYさんにご挨拶できてうれしい。大々的なフェアコーナーの本が売れるよう祈る。

夜は京都に戻って、鴨葱書店の大森さん、一冊!取引所の渡辺さんと酒。29歳の大森さんからSNSやYouTubeことを教えてもらい、刺激を受ける。

EX旅パックでとったオリエンタルホテル京都六条に泊まる。なぜかツインの部屋でベッドがふたつある。

10月9日(水)文庫の値段

  • 嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか (文春文庫 す 25-2)
  • 『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか (文春文庫 す 25-2)』
    鈴木 忠平
    文藝春秋
    1,298円(税込)
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雨。書き下ろしの新章「それぞれのマウンド」が楽しみで、文庫になった鈴木忠平『嫌われた監督』(文春文庫)を購入する。

レジに行ったら1298円でびっくりする。3年前に出た単行本は2090円。この間、紙の値段や流通コストなどがぐっとあがっていたりするので、出版社としてはしょうがないことなのだけれど、果たして読者はどこまでの上昇についてきてくれるのだろうか。

10月8日(火)手をかける

  • 本の雑誌497号2024年11月号
  • 『本の雑誌497号2024年11月号』
    本の雑誌編集部
    本の雑誌社
    770円(税込)
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朝、霧雨。どっちみちシャワーを浴びるのだからと朝ラン5キロ。

「本の雑誌」11月号が搬入となる。特集は「犯罪小説に震えろ!」。

実はここのところ帯に「犯罪小説」と記されている本がじわじわ増えており、そして私もその手の本を楽しく読んでいるのだった。なのでここらで一度犯罪小説の定義からガイドまで特集してみたのである。

日販の新しい新刊登録システム、説明会以来なんら連絡もなく、そして質問にも返事がなく、これは延期なのかと思っていたら、突然130ページに渡る改訂マニュアルが再アップされ、来週にはスタートさせるらしい。

版元の読解力を試す施策か、あるいはどこかの版元がこの新システムのマニュアルを刊行するか試しているのかもしれない。私としては、10月に新刊がなかったことを幸運に思う。

訪問したお店で、書店員さんが文庫の一覧チェックをしていた。棚にずらりと並ぶ本を見ながら、一点一点在庫を確認し、版元による売れ行きランクを参考に本の注文する。

面倒な仕事だなあと思って眺めていると、書店員さんが言葉を漏らす。

「手をかけないで売るって無理だよね」

10月7日(月)応援パネル

週末実家介護を終え、春日部から出社。10月だというのに夏が舞い戻ったのか、額を汗が流れ落ちる。

定期購読者向けの「本の雑誌」11月号が製本所から納品されたので、助っ人鈴木くんとツメツメに勤しむ。

2時過ぎに終わったので、駒込のBOOK青いカバさんに早速納品にあがる。外の均一棚からギュンター・ヴァルラフ『最底辺 トルコ人に変身して見た祖国・西ドイツ』(岩波書店)と青木晴夫『アメリカ・インディアン』(講談社現代新書)を購入。

夕方、K出版社のTさんが、青木宣親選手の引退試合で配られた応援パネルを持ってきてくださる。広島を応援しに神宮球場に駆けつけたTさんには無用の長物のようで、ありがたく頂き、ヤクルトファンの浜田に進呈する。

10月6日(日)運動会

実家の目の前にある小学校は今日が運動会のようで、8時を過ぎるとラッパや太鼓の音が鳴り響き、入場行進が始まった。

この小学校では町内会の運動会に、地区の運動会、さらに近隣の保育園の運動会と秋は毎週騒がしいのだった。ここで暮らしていたときには耳障りだったのだが、母親と過ごす週末となるとなんだかありがたい響きなのだった。

午後、中学時代からの親友であるダボがやってくる。お土産のあま太郎焼きを食しながら3時間ほどおしゃべり。相変わらず親友である。

10月5日(土)3ヶ月ぶり

雨。母親を迎えに行く時に雨が降るのはもしかすると退院後初めてのことかもしれない。

本日は紀伊國屋書店新宿本店にて、BOOKMARKETが開催されており、本の雑誌社も出店するのだけれど、介護のため浜田に任せたのだった。

そう言いながらも今週からキックオフ時間が16時と早くなった埼玉スタジアムへ駆けつけ、3ヶ月ぶりに観戦する。

浦和レッズの、近年稀に見る酷さに呆然とす。もうそろそろ終わりかと思ったらまだ前半15分しか経っていなかった。

前半にセレッソ大阪に1点取られ、そのまま見るべきところもなく試合終了となる。3ヶ月ぶりだろうが、介護の合間だろうが、一日千秋の思いであろうが、雨の中自転車を45分こいで来ようが、サッカーの神様は無慈悲なのである。

しかしどんな試合であろうと、スタジアムで共に闘えること以上の充実はない。

試合終了の笛とともにスタジアムを後にし、雨降る中、45分自転車をこいで実家に戻り、留守番してくれていた妻と母親の世話をバトンタッチする。

妻が車で帰った後、線香の香りが部屋に立ち込めていた。

10月4日(金)研究者

  • 藍を継ぐ海
  • 『藍を継ぐ海』
    伊与原 新
    新潮社
    1,760円(税込)
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午前中、会議。今月から書籍の進行を新人ベテランの近藤が仕切ってくれることになり、とても助かる。

夜、高野秀行さんと新潟大学の砂野唯さんと曙橋のゴールデンバガンで食事。砂野さんは『酒を食べる エチオピアのデラシャを事例として』(昭和堂)の著者であり、デラシャや酒の研究者で、今回の高野さんの新刊ではいろいろとお世話になっているのだった。

砂野さんの研究の話が、ちょうど読んでいた伊与原新『藍を継ぐ海』(新潮社)の「夢化けの島』の主人公と重なる。こちらの久保は火成岩岩石学の研究者なのだが、砂野さん同様フィールドワークを中心に、「地道な研究を着実にやる」研究者なのだった。

10月3日(木)働くことの原点

息子。またインターンで帰省。今度は高校時代にアルバイトしていたサッカーショップで1週間働くらしい。インターンしなくてもわかるだろうと思ったが、それでもやりたいらしい。

インターン先はバイトしていた店ではなく、平日も忙しい本店。平日は12時から8時、休日は10時から6時と聞いていたのに、朝になると出かける準備をしていた。

どうした?と聞くと、お世話になっている社員のひとから、今日納品がいっぱいあるから早くきてくれると助かるとLINEが届いたとのこと。その社員のひとには、帰省時、店に顔を出す度ラーメンやら昼飯をご馳走になっていたらしい。

朝から出勤した息子が帰ってきたのは、夜の9時過ぎ。

「いやー、忙しかったわ。荷物めっちゃ届いて品出し大変だった。みんなに救世主って喜ばれちゃった」

疲れている割にはやたら笑顔で話す息子はインターンというより一戦力のようだ。

「あっ、父ちゃん。俺、今日ひとり接客して、スパイク一足売ったよ」

息子はそう言って、ラップのかかった晩御飯のメニューを覗くと、「よっし!」とガッツポーズをして風呂に向かった。

サッカーショップは、インターン中もバイト代を出すと言ったのを、息子は固辞したそうだ。

「世話になるのにお金なんてもらえないでしょう」

働くことの原点を、息子が私に教えてくれている。

10月2日(水)断捨離風雲録

朝6時起床。6キロラン。

高野秀行さんの新作『デラシャ 酒を主食とする民族』の装丁ラフが、カネコッチ(金子哲郎さん)から届く。高野さんに転送するとすぐに、「素晴らしい!」と高評価の感想が返ってくる。本作りというパズルのピースが、がっちりハマり出している気がする。

11月号で連載終了となる「断捨離風雲録」の単行本化の相談のため、編集の近藤と日下三蔵さんのお家に伺う。私は自宅及び書庫の蔵書の何度か訪問させていただいているのだけれど、近藤はまったくの初めてで、これから本を作るのに様子がわかるよう見学ツアーをしていただくのだった。

自宅も書庫も、床が見え、足の踏み場もちゃんとあり、体を横にすることなく最深部の本棚までたどり着けることに感動する。

連載原稿を読み解き、想像で間取り図を作ってきた近藤は、手元の図と実際の間取りがどう違っているか真剣に確認していた。

単行本化に向けてのアイディアも出し合い、書籍化が楽しみ。

10月1日(火)鈴本10月上席夜の部初日

朝5時半起床。ランニング5キロ。

9時出社。50人ほどに原稿依頼のメールを送る。昼前に終え、疲労困憊となる。

午後、書店向けダイレクトメールに封入する新刊チラシなどを三つ折りする。今月はフェアの案内などやたらに多く、折るのも一苦労。

夜、上野の鈴本に向かい、高野秀行さんと小林渡さんと落語を聴く。NACK5でも活躍されている三遊亭鬼丸さんがトリ(禁酒番屋)をつとめる10月上席夜の部は、春風亭一之輔さん(もぐら泥)や林家きく麿さん(寝かしつけ)も出演され、前回以上に腹を抱えて笑ってしまった。色物も楽しく、寄席、やっぱり素晴らしい。

9月30日(月)喜久屋書店宇都宮店

宇都宮へ。喜久屋書店さんが本日閉店となる。

書店がなくなると読者もいなくなる。そしてなにより本を売る技術をもった書店員さんもいなくなってしまう。

9月29日(日)カレー

父親の墓参り後、母親の車椅子を押して散歩。途中、母親の友達と会い、梨と柿をいただく。

夜、カレーを作る。といっても二人分のカレーを作るなど馬鹿くさいし、片付けも面倒なので、レトルトカレーに具を追加して食す。甘口でも辛いという。

9月28日(土)記憶

朝9時、母親を迎えにいき、週末実家介護生活。

2週間預けられていたこともまったく気づいていない様子なので、杞憂することもなかったかと胸を撫で下ろしていたところ、母親の友達が来て話すには、先週電話をしたら私が迎えにこないと文句を言っていたらしい。

その瞬間の感情はあるものの、記憶に残っていないということだろうか。なかなか難しい。

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