11月3日(日)柿
あれはどこの書店員さんから聞いたのか、あるいは書店員さんが書いた文章で読んだのか忘れてしまったのだけれど、その書店員さんがイベントで勝間和代さんに会ったとき、「勝間さんが小さな約束を守るのが大切と話していたのを聞いて自分もそうするようにしている」とおっしゃっていたのだ。私もその教えをまた聞きして以来、その言葉がずっと胸に残っていた。
去年の年末、父親の親友で共に町工場を営んでいたおじさんから一緒にメシでも食おうと誘われ、その最後に出てきたのがおじさんの家の庭に植えてある柿の木から採れた柿だった。
聞けば82歳になるおばさんがハシゴをかけてもいでいるというではないか。あぶねえだろそれっと思って、来年は俺がもぎにきますよと申し出たのであった。
それがずっと頭に残っていた。道を歩いていたり、ランニングをしていて柿の木が目に入るとその色づき具合を確認していた。おばさんが覚えてるかどうかわからないけれど、私の中では約束したことになっていた。でも正直めんどくさいといえばめんどくさいし、時間もない。そもそも私は柿が好きじゃなかった。
伊野尾書店さんの本の産直市が雨で日程変更になり、事務の浜田がその初日に行くことになった今日、母親は介護施設に預けたままでぽっかり時間が空いていた。電話をして父親の親友の家に行くと、おばさんはハシゴと枝切り鋏を持って待っていた。
「今年はツグが取ってくれるって言ってたからもがずに待ってたんだよ。ちょうどいいくらいに実ってるよ」
ハシゴに乗って、ときには枝にしがみついて、1時間ほどかけて200個ほどの柿を収穫した。筵に並べた柿が、沈む夕日のように輝いていた。