1月15日(水)吹雪
朝、窓を開けた妻が、「やばい!」と叫ぶ。何かと思って外を見ると雪。いや雪どころではない吹雪だ。駐車場に止めた車は真っ白な塊となっており、10センチは積もっているのではなかろうか。最悪の事態である。
こんな中、車を走らせるのは無理!と思ったのだけれど、ホテルの前の国道7号線は何食わぬ顔をしたたくさんの車が走っており、どうやらこれくらいの雪では通常運行らしい。
といっても私はとても通常運行できるわけはなく、窓から吹雪に熱視線を送り、どうにか雪を溶かそうとする。しかし雪は私の熱視線に気づかずどんどん積もっていく。
朝風呂に入り、朝飯を食べて、朝酒を飲んで、そのままベッドに戻りたいところだけれど、今日は息子の部屋の清掃にいかなければならない。
「親」という漢字は「木の上に立って子供を見る」と金八先生が言っていたが、私の場合は「雪を乗り越え子供のところへいく」ということだ。親、やめたい。
行かねばならぬということで車を走らせるとさらに雪が強く降り出し、ホワイトアウト状態に。しかも追突を恐れて細い道を通ったのが大間違いで、道路には雪がしっかり積もっており、スピードを出すどころか車をまともに走らせることもできない。
のちにわかったのだけれど県道のような道にはセンターラインから終始シャワーで水が排出されており、雪を溶解、すっかり走りやすくなっているのだった。素晴らしい工夫だ。
選ぶはそちらの道だったのだけれど、ときすでにおそし。しかもレンタカーについた追突防止のセンサーに雪が付着しているようで、車が止まるたびにピーピー鳴り響き、もはやノイローゼになって道に迷ってしまう。
決死のドライブの末、どうにか息子の部屋に辿り着く。もう2度と雪道の運転は嫌だと思うけれど、部屋を掃除したらまたホテルに戻らなければならないわけで、気が重くなる。
どうにか宅急便に荷物を出しにいったり、郵便局に水道料金に払いに行ったりも済ませ、明日の不動産屋さんへ受け渡すまでの作業完了。
それを終えたとき、息子がぽつりと漏らす。
「おれ、もし子供ができたとしたら、こんなことできるかな」
いや、私だってできないと思った、というか、できればやりたくない。しかしやるしかないというか、そのときは腹を括ってパワーが湧いてくるのだった。
息子には何も返事をせず、そんなことを雪が舞う空を見ながら考えていた。