7月9日(水)小説、まだまだいけるじゃん
猛烈な暑さ。体温を超えているような気がする。
汗を滴らせて駒込のBOOKS青いカバさんに「本の雑誌」8月号を納品していると、事務の浜田より定期購読の読者の方から、クール宅急便で「活ホタテ」が届いたと連絡あり、すぐさま会社に戻る。
貝を触ると開いていた口がぴたっと閉じ、まさしく生きたホタテが発泡スチロールの箱に大量に詰められていた。ありがたいかぎり。
そんなところへ新潮社の編集Aさんが来社。「本当に申し訳ないんですけど面白いんで」と櫻田智也『失われた貌』(8月20日発売)のプルーフを差し出してくる。
いまや役職がつきすっかり偉くなってしまったAさんだけれど、この編集者こそが現状の文芸書の売り方(編集者の熱を伝え、プルーフを作り、コメントをもらい、販促をする)の礎を作った編集者なのだった。
そもそもは伊坂幸太郎の『重力ピエロ』に「小説、まだまだいけるじゃん」という帯コピーをつけ、失笑を買ったところからAさんの伝説は始まったのだった。
失笑を買ったものの、書店員さんに熱烈な推薦文とともにゲラを送り、また書店を訪問し直接熱を伝え、売り場とともに「本を売る」ことに初めて取り組んだ編集者だ。
そのAさんは余程の自信がないとこうして売り込みに来ない。『失われた貌』はそれだけの本なのだろう。
プルーフとホタテと交換こする。