7月21日(月・祝)城山真一『金沢浅野川雨情』
ここのところ面白かった本はすぐに読み直すようにしてるのだが、城山真一『金沢浅野川雨情』(光文社)は再読しても傑作との思いがまったく揺らがなかった。それどころか何気ない文章に散りばめられた意図に新たに気づき、2025年は『金沢浅野川雨情』の年になる、と確信した。
装丁のイラストから一見、時代小説と思われるかもしれないが、金沢の茶屋街を舞台に殺人事件の犯人を追う警察小説であり、踊りに隠された謎を解くミステリーでもあり、金沢の文化や風習が魅力的に描かれる連作の大長編。様々な人間ドラマが描かれ、そのひとりひとりの人生が愛おしくなってくる。
その連作の一編一編の中では、水引細工の工房や老舗料亭の料理人、和菓子屋の店主など金沢ならではの人々が登場し、その生活の中のちょっとした行き違いを新聞記者から金沢東部警察署刑事課に転職した小豆沢玲子が解いていく。殺人事件を追う様子はその背景に置かれているのだが、読んでいるうちにそれが前面に出、さらにその奥にさらなる謎が掲示される。最終章の「金沢をどり」の場で一堂が集う瞬間には思わず胸熱くなり、涙があふれてしまった。
金沢の地を舞台とした金沢東部警察署刑事課・小豆沢玲子のシリーズ化を切に希望する。