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8月16日(土)孤独の支え

週末実家介護のため施設に母親を迎えにいく。昨夜のうちに作ったピーマンの肉詰めを妻が持たせてくれる。晩御飯クリア。家族の協力あっての介護だ。

メールをチェックすると、スズキナオさんに依頼していた原稿が届いていた。保坂和志の10冊。やっぱりスズキナオさんの文章が好きだ。「本の雑誌」10月号掲載。

昨日、原稿整理を終え、レイアウト用に送ったデザイナーの松本さんから原稿拝受と感想も届いていた。

来年発売を目指し編集中の『眼は行動する』は、坪内さんが毎週展覧会に通って書いた(「週刊ポスト」に連載)美術評論なのだけれど、デザイナーの松本さんの主戦場が美術展の図録のデザインであり、そういう意味ではこの原稿の一番の理解者になり得る人なのだった。

美術にまったくの門外漢の私は、そんな松本さんを頼りに本作りに勤しもうと思っているのだけど、そもそも松本さんは原稿を読んでどう思うのだろうと思っていた。

松本さんからの返事は、自身の師(松本さんは写真家でもある)である展示を坪内さんが観に行っていて、その文章を読み、「一言で確信をついている」と慄いていた。

不思議なものだ。坪内さんのことも、坪内さんが書いていることも、一番理解していない私が、坪内さんの本を作ること、作り続けていること。なんだろう。もしかしたらわかっていないということをわかっているから作っているのかもしれない。

もちろん根底には坪内さんの古びない文章と、それを待っている読者がいるから作れるのだけれど。

そういえば昨日メールのやりとりをした中央公論新社の営業Yさんもこの『行動する眼』の刊行を知り、「書籍にならないかと思っていたので楽しみです!」とおっしゃっていたのだ。さらにそもそもは雑司ヶ谷で行われたみちくさ市で、「『日記から』の次は、ぜひ『行動する眼』を書籍化してください」と背中を押してくれた読者がいた。そうしたひとつひとつの声が、本作り売るという孤独の支えになっている。

夜、送り火を焚いて父を送り出す。また来年。

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