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8月22日(金)レベルアップ

本日も激暑。ふらふらになって9時半に出社し、書店さん向けDM作成に勤しんでいるとお隣さんの書泉のKさんがやってくる。Kさんは元取次店勤務で経験豊富のため出版業界の隅々まで知っている。

そのKさんにここ数週間ずっと考えていたことを質問する。それは書籍、雑誌、コミック、文庫とすべてのジャンルを取り揃えた総合書店というのは、今後商売として成り立つのかというあまりに雲をつかむような質問だった。しかしKさんは数字も交えて論理的に説明してくれ、頭の中にあったモヤモヤはくっきり晴れていった。

昼、昼食をとりにいくふりをして、古書会館で行われているぐろりや展を物色。

中野朗『変奇館の主人 山口瞳 評伝・書誌』(響文社)、宮嶋康彦『紀の漁師黒潮に鰹を追う(草思社)、内田五郎『鰊場物語』(北海道新聞社)を買い求める。値札をみるとすべて鎌倉の公文堂書店という古書店であった。もしかすると品揃えが私の読書傾向とドンピシャなのかもしれない。お店があるならいつか行ってみたいとメモし、ファミリーマートでお赤飯のおにぎりと野菜ジュースを買って帰社。

午後もDM作成に勤しんでいると、書籍編集の近藤が企画の相談で声をかけてくる。

最近、本の雑誌社で一番書籍を作っているのが私ということで(なんでやねん!)、「タイトルこれでいいですか?」「帯文見てもらいますか?」「この企画なんですけど」なんて相談される機会がとても増えた。

しかし、これが難しい。見た瞬間に私なりの考えも浮かぶ。私色に染めていいならすぐさま近藤を浦和レッズサポーターに染めてやる。しかし本作りはそういうものではなく、当然ながら私の考えが正しいわけでもない。

また売れる売れないは結果論になってしまいがちだし、さらに書籍というのは著者と編集者が対峙して作るものだから、そこにこれまでの経緯や思惑をまったく理解していない人間(私)が口を挟んでいいのかと首を傾げてしまう。

なので「好きなように作っていいよ」と答えることが多いのだけれど、そうするとあなた今、飲み屋で「とりあえずビール」って頼んだかの如く投げやりな言い方しましたよねと不信感をもたれ、とても不安そうな顔をされたりする。

今日、近藤と話していて気づいたことがあった。相談というのは答えを求めているのではないのだ。話を聞いてほしいのだ。答えは本人の中にあり、それに気づくまで対話して欲しいということだ。要するに本を真ん中に置いて雑談すればいいだけのことだったのだ。スギエはレベル5にあがった。

夜、西荻窪の今野書店さんに行き、今野さんご夫妻と食事にいく。

サンブックス浜田山さんですら閉店してしまったように、いまやどこの本屋さんも崖っぷち、いや断崖絶壁を転げ落ちている途中、かもしれない。

そんな中、「この街(西荻窪)から本屋を無くすなんて考えられない」と必死に店を存続されている今野さん。いったいそのためにどれだけの苦労を背負っているのかは計り知れない。

その想いに応える方法は今野書店さんで本を買うことしかなく、デイヴィッド・ピース『GB84』(文藝春秋)と島沢優子『叱らない時代の指導術 主体性を伸ばすスポーツ現場の実践』(NHK出版新書)を購入したのだけれど、もっと何かあればいいのにと思った夜だった。

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