11月25日(火)単純作業
朝8時、出張明けで一週間ぶりの出社。溜まっている仕事が山ほどあるのだけれど、それに手をつける前に、高野秀行さんの初のZINEの予約注文分の発送をせねばならず。せねばならずと言ったところで、そう簡単にできる量ではないのであった。さらに2点同時に刊行し、そしてサインありサインなしとあるものだから、発送する本が4種類に及ぶのだ。これで混乱しないなんてことはなく、全集中で対応せねばならない。
事務の浜田を図書カードで雇い、ラベル出しと納品書の印刷をお願いする。そうしているうちに高野秀行さんがやってきてZINEにサインしていただく。もはや製造直売所だ。2時間ほどかけてサインしていただいたのち、納品書を二つ折りし、ラベルを封筒に貼っていく。
今夜何時までかけても終わらせたい気持ちはあるものの、夜の8時半からオンラインの座談会があるのだった。それまでには家に帰らねばならない。
やっぱり俺は町工場の倅だなあと思うときはこういうときだ。あれはたしか小学6年生のときだったと思うけれど、独立したばかりの父親の会社に遊びに行ったとき、会社は新たに受けたばかりの仕事でおおわらわになっていた。するとパートのおばさんから「つぐちゃんも手伝って」と声をかけられ、プラスチックの部品を組み付ける製造ラインに入れられたのだった。
めんどくさがるかすぐに飽きてしまうようなその単純作業に私は没頭したのだった。左の人から流れてくる部品を私が所定の位置に差し込み、それを右の人に渡す。左の人も右の人もベテランだから仕事が早い。私が戸惑えば両隣の人の手を止めてしまう。
必死も必死で作業に冒頭していると気づけば2時間が経っていた。休憩のブザーが鳴り、お茶を振る舞われると、周りのおばちゃんたちが心底感心した様子で私を褒め称えてくれたのだ。それは私が手先を使う単純作業に向いていると気づいた瞬間でもあった。
今、私は納品書を手にして、必要な本を取り、封筒に詰め、それを台車に乗せるという作業を繰り返している。納品書はまだまだ厚く、封筒の束もたくさんある。声も発さず、黙々とそれをこなしている。
夕日が差し込む窓の向こうから父親が見ている気がした。





