1月25日(日)ホームラン
つい課長のことを思い出してしまう。
前の会社には野球チームがあり、毎年出版健保の野球大会に出場していた。出場していたといっても日頃運動している人は皆無で、怪我をしないのが何よりの目標となり、AからFに分かれていたカテゴリーでは、もちろん最下層のF組だった。
私が入社し、私がストライクゾーンにボールを投げられることが判明すると、会社の経費でアンダーシャツやソックス、そして社名が胸に縫い込まれた本格的なユニフォームが作られた。
そうして臨んだ大会で初勝利をすると、翌年の目標は悲願のEクラス昇格となった。
あれは2年目の大会だっただろうか。それまでまったくいいところのなかった課長が打席に立ち、ぶるんと適当に振ったバットの芯にボールが当たったのだ。
その球は綺麗な放物線を描き、レフトを守る選手の頭上をはるかに超え、なんとテニスコートと区分けされたフェンスの向こうに弾んだ、それはチーム史上初のホームランだった。
先輩は大喜びで、歩いてダイヤモンドを一周し、両手をあげ、両足でジャンプし、ホームベースを踏んだ。
その光景以上に忘れられないのはベンチから立ち上がってその様子を見ていた先輩が、「あーこれで打ち上げは、とっつぁん(課長はそう呼ばれていた)のオンパレードだ」とつぶやいたことだった。
先輩の予想通り、焼肉屋で行われた打ち上げでは、課長がピッチャーが投げたボールの軌跡から自身のスイングを割り箸で再現し、そして弾道を事細かに語り、何度も何度もビールのおかわりを頼んでいた。
課長はあの日のホームランを思い出すことがあっただろうか。
風強く冷たし。終日母親と実家で過ごす。





