3月17日(火)駒沢敏器『語るに足る、ささやかな人生』(風鯨社)
5日ぶりの出社のお供は駒沢敏器『語るに足る、ささやかな人生』(風鯨社)なのだが、「はじめに」を読み出した瞬間、あっ、これ、おれが一番好きなタイプの本だと確信し、ページをめくる手が止まってしまう。
好きならば一気に読めばいいではないかと思うけれど、ショートケーキにただひとつだけ乗っかったイチゴのように、大切なものを最後までとっておきたくなる気持ちがむくむくと湧いてきたのだ。
そうして一話目の「夕闇のドライブイン・シアター サウスダコタ州ウイナー」を読んで余韻に浸る。
この本は、一日一話読むことにしよう。そしてできることなら仕事を終えた後、夕闇迫る喫茶店でくつろぎながら本を開こう。
会社の扉を開けると編集松村から「出張おつかれさまでした」と声をかけられる。思わず「疲れてないよ」と声が出そうになるが、以前も書いたように私は「疲れる」というのがどういう状態を指すのかよくわからないのだ。
出張に行こうが、何日連続で働こうが別に徹夜しているわけでもないし、ホテルに泊まればベッドの上で寝ているのだから一晩で体力は回復する。いったい疲れるとはなんなんだろうか。
すぐに会社を飛び出し、市ヶ谷の日本図書普及さんへ。第一回から本屋大賞を支えてくださっていることへの感謝を込めて年に一度のご挨拶。
帰り際に外堀通り沿いにある外堀書店を覗く。こちらは大日本印刷が運営している実験的な書店で、フロアの一角が本屋さんになっている。どうせ企業メセナで適当な並んでいるんだろうと侮るなかれ。山手線の内側ではほとんど見ない独立系書店といってもいい品揃えで、小さいながらも見応え充分の本屋さんなのだった。
そんな棚で今回発見したのはフィリップ・ポンス『裏社会の日本史』(ちくま学芸文庫)。2018年に刊行されたこの文庫は、やくざ、被差別民、テキヤ、日雇い労働者などを「ル・モンド」の特派員が取材したリポートで、私の興味のまん真ん中の本なのだった。刊行時に出会えなかったのが恥ずかしい限りだが、こうして外堀書店の棚で出会えたのだから幸せだ。
やはり営業だけでなく本屋さんを訪れ、棚に身を委ねる時間を作らねばならない。そのために働いているのだから。







