『You are what you read. あなたは読んだものに他ならない』

著者:服部文祥

定価1870円(税込)

2021年2月17日発売

生きるとはなにか生命とはなにかを探求する書評集

 

読み、噛み砕き、飲み込み、考え、向き合う。

「本の雑誌」の人気連載「サバイバルな書物」の待望の書籍化。

生命の存在理由や生きる意味を、卓越した言語表現の中に探すというのが、本書の命題のひとつだ。だが、どうやら人類はまだその問題の解答にたどり着いていない。命や人生に関する科学的な問題や哲学的な疑問は未解決のままでも、日々は怒濤のごとく流れ、我々はその中を無様であろうと泳ぎ続けなくてはならない。(本文より)

■四六判並製 ■264ページ
■ISBN 978-4-86011-454-1

【目次】

はじめに 一個一四円の卵から考える食と読から作られる我 11

史上最高の人類ナンセンの究極の旅『極北』を読む 16
『極北 フラム号北極漂流記』フリッチョフ・ナンセン著/加納一郎訳

現象はすべて命だデルスーを世に知らしめたアルセーニエフ 20
『デルスー・ウザーラ』アルセーニエフ著/長谷川四郎訳

攻撃の直前ヒグマは立ち上がるモンゴロイドよその隙をつけ 24
『秘境釣行記』『羆吼ゆる山』『アラシ』今野保著

究極のサバイバル道具は針とナベ無常機微機知シベリア抑留 28
『生きて帰ってきた男 ─ある日本兵の戦争と戦後』小熊英二著

悟りたいのは面白いから登りたいのも面白いから 32
『仏教思想のゼロポイント 「悟り」とは何か』魚川祐司著

野生獣食らうにふさわしいヤツなんていない切ないならばなぜ狩る 36
『老人と海』アーネスト・ヘミングウェイ著/小川高義訳

最悪はまだまし最期の報告は語る者なくメモと屍 40
『世界最悪の旅:悲運のスコット南極探検隊』 アプスレイ・チェリー・ガラード著/加納一郎訳

邦訳の読者は知らない驚愕の後日談「だれが裏切ったんだ?」 44
『凍える海 極寒を24ヶ月間生き抜いた男たち』 ヴァレリアン・アルバーノフ著/海津正彦訳

死んでいない状態それは生きている? 空を飛ぶもの山を行くもの 48
〈スカイ・クロラ〉シリーズ 森博嗣著

狙われる気持ち知りたい動物の感覚探る先で見るもの 52
『動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』 テンプル・グランディン著/キャサリン・ジョンソン著/中尾ゆかり訳

来しかたを調べ行く末を描くもわからず終了試験落第 56
『私たちはどこから来て、どこへ行くのか 科学に「いのち」の根源を問う』 森達也著

いのちを知るために外から観察す視点アンディ何を見るのか 60
『アンドロイドは人間になれるか』石黒浩著

自分以外になぜかなれないこの世界命の起源哲学降参 64
『存在と時間 哲学探究1』永井均著

文明はしあわせですか生きていますかアマゾンの最奥地より 68
『ピダハン 「言語本能」を超える文化と世界観』 ダニエル・L・エヴェレット著/屋代通子訳

いつか来る終末世界タフで繊細私の銃もレバーアクション 72
『極北』マーセル・セロー著/村上春樹訳

よたよたと大地を離れた飛行機は登山者と似て野望を乗せて 76
『夜間飛行』『人間の土地』サン=テグジュペリ著/堀口大學訳

文無しになるまで自分を追い詰めて乗るマグロ漁船刺身特売 80
『漂流』角幡唯介著

情熱を失わないのが才能と羽生は言うけど藤井どうなの 84
『棋士という人生 傑作将棋アンソロジー』大崎善生編

時に食べ時に食べられぐるぐると命とはまわるディストピア考 88
『大きな鳥にさらわれないよう』川上弘美著

命懸け価値があるのかないのかは命懸けなきゃわからない斬る 92
〈ヴォイド・シェイパ〉シリーズ 森博嗣著

飲み過ぎて迎えた朝にうなだれてたどる記憶に似た人類史 96
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福 上』 ユヴァル・ノア・ハラリ著/柴田裕之訳

ベストセラー読んでいない人のためスーパーダイジェスト我らどこ行く 100
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福 下』 ユヴァル・ノア・ハラリ著/柴田裕之訳

撃つ前は獲物を想い己を殺す猟師ケモノの夢を見るのか 104
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 フィリップ・K・ディック著/浅倉久志訳

かけがえのないはずの命消費してうねる世界で我は食うなり 108
『彼女は一人で歩くのか?』Wシリーズ 森博嗣著

生態系の向こうに行くか近未来 意志にはかたち嵩重さなし 112
『彼女は一人で歩くのか?』Wシリーズ 森博嗣著

人類をここまで導く好奇心 誰も死なない明日は明日か 116
『彼女は一人で歩くのか?』Wシリーズ 森博嗣著

アムンセン隊去ったあとのイヌイット青い目の子をつぎつぎと産む 120
『最後のヴァイキング ローアル・アムンセンの生涯』 スティーブン・R・バウン著/小林政子訳

読書感想文書きたくない娘 「本の雑誌」を敵として見る 124
『マヤの一生』椋鳩十著

アラスカ版デルスー、シドニー・ハンチントンその人生を表す題なし 128
『熱きアラスカ魂』 シドニー・ハンチントン著/ジム・リアデン編/和田穹男訳

体験は善も悪もなくそこにあるあの時の我いまどこにいる 132
『スローターハウス5』カート・ヴォネガット・ジュニア著/伊藤典夫訳

狩猟とはなにかド直球で問いただす狩りの言葉のSFラブコメ 136
『明日の狩りの詞の』石川博品著

天稟のすべてを出すのが犬の幸せリスク見積もる人にわからず 140
『犬物語』ジャック・ロンドン著/柴田元幸訳

ネタバレの心配がないネタがない でも面白い文字列の意義 144
『光の犬』松家仁之著

西部劇のように荒野を旅したい犬とライフルを相棒にして 148
『オンブレ』エルモア・レナード著/村上春樹訳

便利安全快適な今日予定調和でつまらない明日 152
『ブッチャーズ・クロッシング』ジョン・ウィリアムズ著/布施由紀子訳

最強のコマンチ族文明と戦って最後の族長数奇な運命 156
『史上最強のインディアン コマンチ族の興亡』S・C・グウィン著/森夏樹訳

戦慄の光景それは風景でなく情景である色即是空 160
『孤島の祈り』イザベル・オティシエ著/橘明美訳

入れ子式の夢を見ている夢を見る自ら死を待つ番になるとき 164
『休戦』プリーモ・レーヴィ著/竹山博央訳

年老いた少年レバーアクションを手にアメリカ南部文学を読む 168
『ねじれた文字、ねじれた路』 トム・フランクリン著/伏見威蕃訳

アラスカの森で独り脱化石燃料試すオッサン魂 172
『独りだけのウィルダーネス アラスカ・森の生活』 リチャード ・プローンネク著/サム・キース編/吉川竣二訳

アンディに地位を奪われ家畜と堕すデジタル未来をアナログで読む 176
『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』 ユヴァル・ノア・ハラリ著/柴田裕之訳

死にたくはないけどいつか死ぬいいえゆっくり死んで戻る生前? 180
『「死」とは何か イェール大学で23年連続の人気講義』 シェリー・ケーガン著/柴田裕之訳

水垢離息止め鍛える代謝免疫いま健康は辛く厳しい 184
『サバイバルボディー 人類の失われた身体能力を取り戻す』 スコット・カーニー著/小林由香利訳

唯一無二の人生映す発想はそのまま人格避けて進めず 188
『NORTH 北へ アパラチアン・トレイルを踏破して見つけた僕の道』 スコット・ジュレク著/栗木さつき訳

〝ただ生きる〞ために殺す必然性開拓時代の老猟師手記 192
『ヒグマとの戦い ある老狩人の手記』西村武重著

末端の物資生活人員が映す敗戦兵の惨状 196
『日本軍兵士 ─アジア・太平洋戦争の現実』吉田裕著

獲物になったり戻ったり猟師的視野新人類学 200
『ソウル・ハンターズ シベリア・ユカギールのアニミズムの人類学』 レーン・ウィラースレフ著/奥野克巳、近藤祉秋、古川不可知訳

感じない機械に世界はあるのだろうか五蘊皆空とブッダ言うけど 204
『人工知能はなぜ椅子に座れないのか情報化社会における「知」と「生命」』松田雄馬著

まだ死ねない現生人類に科せられた幸福な報い介護と看取り 208
『死を生きた人びと 訪問診療医と355人の患者』小堀鷗一郎著

食肉は迷宮にありひも解いてケモノと共に影と闘う 212
『いのちへの礼儀 国家・資本・家族の変容と動物たち』生田武志著

生まれ出ていままで生きてきたなかで一番きれいな約束だから 216
『流砂』ヘニング・マンケル著/柳沢由実子訳

自己矛盾感じ己を否定するとき スタンドバイミーハニーハンター 220
『HONEY HUNTERS OF NEPAL』Eric Valli, Diane Summers著

命とは流動系のひとつのかたち特別でなく物理法則 224
『流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則』 エイドリアン・ベジャン、J・ペダー・ゼイン著/柴田裕之訳

意識ある存在であるこの奇跡「いつか消える」と必ずいっしょ 228
『僕はなぜ小屋で暮らすようになったか 生と死と哲学を巡って』高村友也著

北海道無銭二ヶ月旅のあと十二国を二ヶ月旅す 232
『図南の翼』小野不由美著

名犬であれと信じて旅をした 駄人駄犬と気づかないまま 236
『ヒト、犬に会う 言葉と論理の始原へ』島泰三著

外界はそのまま己鍛えて登れ世界とフェアに向き合う命 240
『ザ・プッシュ ヨセミテ エル・キャピタンに懸けたクライマーの軌跡』 トミー・コールドウェル著/堀内瑛司訳

セイウチに父を殺されエスキモー少年皮嚙み雪原をゆく 244
『北のはてのイービク』 ピーパルク・フロイゲン著/野村泫訳

給料の代わりにもらった銃を手に森に入った猟師リア充 248
『俺のアラスカ 伝説の〝日本人トラッパー〟が語る狩猟生活』伊藤精一著

あとがきにかえて  私と山岳書 252

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