電子書籍版あり 

『日々翻訳ざんげ』

エンタメ翻訳この四十年

著者:田口俊樹

定価1760円(税込)

2021年3月1日発売

 

ローレンス・ブロックの〈マット・スカダー・シリーズ〉をはじめ、2002年度「このミス」第1位のボストン・テラン『神は銃弾』、エルモア・レナード、トム・ロブ・スミス、ドン・ウィンズロウなど、ミステリーを中心に200冊近い訳書を刊行してきた名翻訳家が、自身が手掛けてきた訳書を再読し、翻訳家デビューのいきさつから、誤訳の数々、マイクル・Z・リューインとのメール交流、ジョン・ル・カレの逆鱗に触れた英文、レイモンド・チャンドラー「待っている」新訳での「大発見」まで、それぞれの訳書にまつわるエピソードと時々の翻訳事情で40年に及ぶ翻訳稼業を振り返る回顧録。

ブルーミングデールズはニューヨークのスーパー? 「ダウンタウンに行こうぜ」は「繁華街に遊びに行こうぜ」ではなく「署まで行こう」? 八十七分署ではなく「八七分署」なのはなぜか。過去形か現在形か。「が」と「は」はどう違うのか。「ごさんなめい」「何を言っトルコ」の原文は?等々、具体的な事例から翻訳のノウハウを教える指南書であるのはもちろん、その訳書の読みどころを訳者の視点で語るこの40年間の翻訳ミステリーの極私的ブックガイドでもあり、翻訳にあたっての数々の裏話はその本を読む楽しみを何倍にもしてくれること間違いありません。翻訳者志望や翻訳に興味のある人はもちろん、ミステリー好き、すべての本好きが楽しめる1冊。

■四六判並製 ■216ページ
■ISBN 978-4-86011-455-8

【目次】

一章 ミステリー翻訳者

第一回 ジョン・ウィンダム「賢い子供」の巻 だるまに助けられる! 14
第二回 ローレンス・ブロック『泥棒は選べない』の巻 泥棒バーニイ×ジョン・レノン×ニューヨーク! 21
第三回 ウェイド・ミラー『罪ある傍観者』の巻 「が」と差別語が多すぎる! 28
第四回 ローレンス・ブロック『聖なる酒場の挽歌』の巻 数字の話あれこれ 35
第五回 アン・タイラー『アクシデンタル・ツーリスト』の巻 めざすべき翻訳とは? 43
第六回 マイクル・Z・リューイン『刑事の誇り』の巻 頑固親爺とおやじギャグ 51
第七回 エルモア・レナード『マイアミ欲望海岸』の巻 和臭か、無臭か、洋臭か。 58
第八回 クレイグ・ライス『第四の郵便配達夫』の巻 名物編集者との超肩こり初仕事 67


二章 昨日のスラング、今日の常識

第九回 チャールズ・バクスター『世界のハーモニー』の巻 現在形は悪魔の囁き? 80
第一〇回 ネルソン・デミル『チャーム・スクール』の巻 翻訳人生最大のピンチ!? 90
第一一回 フィリップ・マーゴリン『黒い薔薇』の巻 YOUに"こだわる" 100
第一二回 ジョン・ル・カレ『パナマの仕立屋』の巻 またしても翻訳人生の危機! 110
第一三回 ボストン・テラン『神は銃弾』の巻 難物中の難物に悪戦苦闘(1) 119
第一四回 ボストン・テラン『神は銃弾』の巻 難物中の難物に悪戦苦闘(2) 129
第一五回 デイヴィッド・ベニオフ『25時』の巻 映画を見て思わず「あっ!」 139

三章 悪人はだれだ?

第一六回 リチャード・モーガン『オルタード・カーボン』の巻 思い出がいっぱい詰まった難物 152
第一七回 ジェームズ・M・ケイン『郵便配達は二度ベルを鳴らす』の巻 思い焦がれた名作の新訳! 162
第一八回 レイモンド・チャンドラー「待っている」の巻 小鷹信光さんと三川基好の思い出(1) 174
第一九回 レイモンド・チャンドラー「待っている」の巻 小鷹信光さんと三川基好の思い出(2) 182
第二〇回 レイモンド・チャンドラー「待っている」の巻 小鷹信光さんと三川基好の思い出(3) 190
あとがき―エンタメ翻訳この四十年 201

【著者略歴】

田口俊樹(たぐち・としき)
翻訳家。1950年、奈良市生まれ。早稲田大学卒業。"マット・スカダー・シリーズ"をはじめ、『チャイルド44』『パナマの仕立屋』『神は銃弾』『卵をめぐる祖父の戦争』『ABC殺人事件』『壊れた世界の者たちよ』『ランナウェイ』など訳書多数。著書に『おやじの細腕まくり』『ミステリ翻訳入門』がある。「翻訳ミステリー大賞」発起人。フェロー・アカデミー講師として更新の育成にあたっている。


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