松本清張賞受賞の切支丹小説『マルガリータ』

文=東えりか

 6月18日、帝国ホテルにて『第41回大宅壮一賞ノンフィクション賞』と『第17回松本清張賞』の授賞式が行われた。大宅賞に関しては既報だが、清張賞受賞作は、村木嵐『マルガリータ』(文藝春秋)。戦国時代末、ローマに派遣された天正遣欧少年使節の4人。大きな希望を背負って8年後に帰国した彼らを待ち受けていたものは、壮絶な切支丹の排斥と信者への迫害であった。
 4人の中で、ただ一人、棄教した千々石ミゲル。背教者として信者に憎まれながら、ミゲルこと清左衛門が心に秘めたものはなんだったのか。妻の珠の健気さ、切支丹を守る伊奈姫の信仰の篤さに支えられ、ミゲルと他の3人はある決意を貫いていく。
 前半、名前の表記の仕方などで、少々読み辛いと感じたが、中盤からはまさに本の世界に没入し、気づいたら涙が流れていた。毎回レベルの高い清張賞だが、その名に恥じない作品である。骨太のずっしりとした時代小説を読みたい方に是非、とお勧めしたい。

(東えりか)

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