原子力推進派を糾弾する『福島原発人災記』
文=東えりか
4月29日、現在は昭和の日と名前を変えたこの祝日は3月11日の東日本大震災から49日目にあたる。亡くなった方、未だ行方不明の方を思う日にしたい。大地震は天災である。様々な準備も、桁外れな大きさの前にはなすすべがなかったかもしれない。しかし、原発事故は違う。これは、間違いなく人災だ。
川村湊は文芸評論家であり、法政大学で教鞭をとる文学者でもある。原子力とは全く関係のない川村が、この震災で起こってしまった原発事故について、何か出来ることはないかと考えた末、当日から約2週間の日記を著すことにしたのだ。それは日常記とともに、原子力関係を調べることに費やされた日々であった。
『福島原発人災記』は本来の教育者としては決してしてはいけないと教えているインターネットからのコピペ及び過去の出版物の引用によって、現在の原子力推進派がどのような活動と発言を繰り返してきたかを糾弾した書である。広範囲で膨大な原子力に関する団体の数に驚き、一度その座に着いたら永久エネルギーのように繰り返される天下りの凄さを思い知らされる。
脳の血管が切れてしまうのではないかと心配するような怒りの文章のあと、ささやかな買占めに走る日常とのギャップは、この1ヵ月半みんなが共有してきた。これを言葉にすることこそ、文学、いや、文字を仕事にしている者がしなければならないことだと思う。
それにしても公的文書や学者たちの文章の読みづらいこと。何を言っているのかさっぱりわからないことに、私たちは安全を託していたのかと思うと、嘆いても嘆ききれない。
(東えりか)