「本について考える雑誌について考える」イベント開催!

文=杉江松恋

 すでに「イベント&フェア情報」のコーナーにも告知を打っていただいているが、明日7月20日(水)にBookJapan主催のトークイベントを実施する。第1回は豊﨑由美『ニッポンの書評』(光文社新書)刊行記念として、「書評について考える」ことをテーマにしたが、第2回の今回は「本について考える雑誌について考える」イベントにしてみたい。題して「創刊35周年をうっかりスルーして3ヶ月。これからの『本の雑誌』は一体どういう感じか? 二代目編集長に聞いてみるぞ新宿大集会」である。ゲストはもちろん本誌2代目編集長・浜本茂。杉江松恋が聞き役を務める。
 35周年というカウントは1976年に創刊号が刊行されたことを受けているのだが(本の雑誌的には今年は36周年なので、実際に創刊35周年をスルーしたのは昨年の5月号、したがって正しくはうっかりスルーして1年3ヶ月)、まあ、記念年うんぬんはスルーしていただいてもかまわない。このイベントで確認したいのは以下の2点だからだ。

その1。読者は「本の雑誌」のどういうところが好きなのか(あるいは好きだったのか)。
その2。この先、どんな記事を「本の雑誌」で読んでいきたいのか。

 私事で恐縮だが、筆者が「本の雑誌」というミニコミ誌の存在を知ったのは1980年代初頭のころで、購読し始めてしばらくしてから三角窓口発で「青木まりこ現象」が話題になり始めたのを覚えている。しまいにはそれが特集記事になってしまい、変な雑誌だなあ、とあきれたものである。「文藝春秋」完全読破に成功した椎名誠編集長が、次に時刻表に挑んであえなく敗れ去ったのもこのころではなかったか。私はそういう何でもありの雰囲気に惹かれて本誌を買い始めたのであった。またブックガイドのアナーキーさも魅力だった。1980年代のあのころでさえ、新橋遊吉のブックガイドをやる雑誌なんて他にはなかった。思えば、雑誌というメディアは何をやってもいいものなんだと教えてくれたのは「本の雑誌」だったのである。
 というわけで今回のトークイベントでは、「読者投票で募る面白かった特集号ベスト10 "https://spreadsheets.google.com/spreadsheet/viewform?formkey=dGU4Wk9BVFMwUGo4LUpwYnZhV3BWc1E6MQ" \t "_blank"」としてアンケートを募集し、過去の特集でおもしろかったもののベスト10を作ってみようと思っている。上のリンク先に特集記事のタイトル一覧が置いてあるので、ぜひ投票してもらいたい。
 また、もう一つの目玉として、「こんな特集を読みたい "http://form.mag2.com/rupipireat" \t "_blank"」と題するプレゼンテーションの企画を予定している。これは、「自分ならこういう企画記事を読みたい」「というか自分にこれを書かせてはもらえないか」という売り込みを募集するものだ。上のリンクから応募ができるので、これにもぜひ挑戦してもらいたい。ライターや編集者を志望している若い人はぜひ。浜本編集長が実際に企画書を読んで判断し、おもしろいものについては本当に原稿化して本誌に掲載する予定だ。もちろんその原稿を書く権利は提案者に帰属する(自分が書くのはちょっと、という場合は他の執筆者を推薦する手もあり)。
 これは、いわば公開での企画会議である。企画なんて頭の中だけでごちょごちょ考えてできるものではない。どうやって自分の考えを可視化し、どのような形で相手を説得するかという手管に勝負はかかっている。光るところはあるけどまだ練成が足りないな、というものについてはイベントの会場で浜本編集長と「揉む」こともありうる。その結果洗練されておもしろくなったとしたら、提案者の手柄である。歴史ある「本の雑誌」で原稿デビューするチャンスでもある。奮起を期待する。
 雑誌が冬の時代だとかなんとか言うが、雑誌的な性格を持つメディアは決してなくならずに生き残ると私は思う。その最終形態はどうであれ「何でもある」「何をやってもいい」という博覧会のような雑誌の多様性はどこかで継承されていくはずだ。20年前と現在の違いは、メディアに余裕がないために新しい書き手の活躍する場が少なくなったということだ。編集者が目をつけて若いライターをデビューさせる、というような機会は最近では減少しつつある。能力はあるのに執筆の場に恵まれず、ライターという職業をあきらめている人に、ぜひ今回のイベントには参加してもらいたい。

開催日時:2011年7月20日(水)19:30開演
場所:新宿レフカダ
参加方法: "http://www.go-livewire.com/#coming3" http://www.go-livewire.com/#coming3 ←こちらを参照のこと。

(杉江松恋)

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