第222回:武田綾乃さん

作家の読書道 第222回:武田綾乃さん

 学生時代に作家デビュー、第2作「響け!ユーフォニアム」がいきなりアニメ化され人気シリーズとなった武田綾乃さん。さまざまな青春を時にキラキラと、時にヒリヒリと描く武田さんはどんな本を読み、どんな思いを抱いてきたのか。お話は読書についてだけでなく、好きなお笑い芸人や映像作品にまで広がって…。意外性に満ちたインタビューをお楽しみください!

その5「デビュー後の読書、作家仲間」 (5/6)

  • NO.6 〔ナンバーシックス〕 ♯2 (講談社文庫)
  • 『NO.6 〔ナンバーシックス〕 ♯2 (講談社文庫)』
    あさの あつこ
    講談社
    682円(税込)
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  • 西の善き魔女1 セラフィールドの少女 (角川文庫)
  • 『西の善き魔女1 セラフィールドの少女 (角川文庫)』
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    748円(税込)
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  • 精霊の守り人 (偕成社ワンダーランド)
  • 『精霊の守り人 (偕成社ワンダーランド)』
    上橋 菜穂子,二木 真希子
    偕成社
    1,650円(税込)
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――アニメーションで好きな監督や作り手はいましたか。

武田:幾原邦彦監督がすごく好きです。「少女革命ウテナ」の監督で、「美少女戦士セーラームーン」の総監督もされた方で、もうドはまりしました。「輪るピングドラム」がすごく好きです。ゲームが好きなので、「逆転裁判」の巧舟さんのシナリオも大好きですね。アドベンチャーゲームが特に好きなので、ライター買いすることが多いです。
 自分の好みを排除して本を選ぼう、みたいなのは大学生の時は顕著だったかもしれません。大学に通っているからにはちゃんと元を取ろうと思って、図書館でいっぱい本を借りたんです。家には絶対にない本を読もうと思って、落語とかシェイクスピアもむちゃくちゃ読みました。新書も結構読んでいましたが、それも偶然性に期待して「目についたものを読む」ということをしていたので、すごく知識に偏りがあります。
 私は美学芸術学科という、芸術学の専攻で東洋美術を専攻していたので、それが大きかったかもしれません。大学一雑な学科と言われていて、なんでもありだったんです。演劇学とか広告学とか、教授のやりたいことをなんでも授業にするみたいな感じで、脚本を分析する授業とかは役に立ったかなと思います。それで脚本系の本もいろいろ読みました。

――それにしても、読むのは速いのではないですか。

武田:速いほうだ思います。速読はできなくて、普通に読むだけですけれど。

――プロとして小説も書いて、本も読んで、他にもいろいろ吸収して...。でも武田さん、学費と生活費のためにアルバイトに明け暮れている女子学生が主人公の『愛されなくても別に』についてお話おうがかいした時、ご自身も学生時代にかなりアルバイトしていたっておっしゃっていましたよね。

武田:バイトもしていました。「学費高いからな」っていう気持ちがあったし、奨学金ももらっていましたがそれは貯めていましたし。逆にいうと、授業は最低限しかとっていなかったです。他の子は教員免許や学芸員の資格を取るための授業も受けていましたが、私は1時間も多く取りたくないという強い意志があって(笑)、たしか単位も卒業に必要な数ぴったりで卒業しました。

――では、大学を卒業してからは。

武田:そのまま上京して、専業になりました。2か月だけ就活をやったんですけれど、アニメ化の仕事に追われていたので、ひとつも面接に行かないまま終わりました。「これでは就活は無理だな」と思って諦めて、専業になろうって決めました。

――大学卒業と同時に京都から東京にきて、専業になって、読書生活は変わりましたか。

武田:好きな作家さんしか読まなくなってしまって。それがひとつの懸念でもあるんです。だから一応、背表紙買いも心掛けています。何冊かは、書店の棚差しを見てタイトルだけ見て選んだものを読む。でもそれだと、あさのあつこさんの『No.6 2』の時のように、下手すると何かの続篇を買ってしまうこともあります(笑)。
 それと、知り合いの作家さんの本をたくさん読むようになりました。それはまた違う条件で選んでいることになるので、幅が広がったかなと思います。

――そういえば、ちょっと前に辻堂ゆめさんと青崎有吾さんと集まったことをツイートされてましたよね。同じ賞の出身同士といった接点はないけれど仲良しなんだなと思って。

武田:そうなんです。私自身は全然作家さんの知り合いを作りようがなかったんですが、『このミステリーがすごい!』大賞が同じ宝島社の賞なので、宝島社経由で知り合った岡崎琢磨さんが飲み会を開いてくださって、青崎さんとゆめちゃんはそれが接点で知り合いました。上京してからずっと、3か月に1回くらいは会っているのでもう結構長いです。青崎さんが顔が広いので、そこから相沢沙呼さんや斜線堂有紀さんたちにもお会いする機会もありました。
 それと、このあいだ「ダ・ヴィンチ」の企画で阿部智里さんと対談させていただいたんです。そうしたら、衝撃的なくらい本の趣味が一緒でびっくりしました。

――ああ、阿部智里さんも小学生の時に「ハリー・ポッター」に夢中になった方ですよね。

武田:「この本が好きで、この本も好きで」って、何を言っても通じるから途中から怖くなるくらいでした。世代も近いし、浴びてきたものが一緒なんだろうなと思って。荻原規子さんの『西の善き魔女』とか上橋菜穂子さんの『獣の奏者』とか『精霊の守り人』とか。あまりに話が合うのでびっくりして、じゃあどこが二人の分岐点だったのか探ろうということになって、私が『ロード・オブ・ザ・リング』を挫折していたので、そこじゃないかという話になりました。前から阿部さんとは話が合う気がしていたので、「ダ・ヴィンチ」で対談の機会を作ってもらえてありがたかったです。

――阿部さんの「八咫烏」シリーズの第二部第一巻『楽園の烏』が刊行されるタイミングの対談だったんですね。

武田:そうなんです、それで発売前に最新刊を読ませてもらえて役得でした。当たり前ですけれど、好きなエッセンスが取り込まれていて。私はやっぱりファンタジーが好きで、自分でも書きたいんだけれども、そんな仕事の流れにならないまま来ちゃった、という感じなんです。だから、『楽園の烏』もすごく面白くて、「ああ、こうなるよね」とか「ああ、あれあやりたかったんだろうな」とか思いながら読みました。

  • 新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1 (評論社文庫)
  • 『新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1 (評論社文庫)』
    J.R.R. トールキン,Tolkien,J.R.R.,貞二, 瀬田,明子, 田中
    評論社
    770円(税込)
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