第222回:武田綾乃さん

作家の読書道 第222回:武田綾乃さん

 学生時代に作家デビュー、第2作「響け!ユーフォニアム」がいきなりアニメ化され人気シリーズとなった武田綾乃さん。さまざまな青春を時にキラキラと、時にヒリヒリと描く武田さんはどんな本を読み、どんな思いを抱いてきたのか。お話は読書についてだけでなく、好きなお笑い芸人や映像作品にまで広がって…。意外性に満ちたインタビューをお楽しみください!

その6「アイデアに執筆が追いつかない日々」 (6/6)

  • 【TVアニメ化】響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ (宝島社文庫)
  • 『【TVアニメ化】響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ (宝島社文庫)』
    武田 綾乃
    宝島社
    722円(税込)
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  • 君と漕ぐ: ながとろ高校カヌー部 (新潮文庫)
  • 『君と漕ぐ: ながとろ高校カヌー部 (新潮文庫)』
    綾乃, 武田
    新潮社
    649円(税込)
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  • 放課後探偵団2 (書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー) (創元推理文庫)
  • 『放課後探偵団2 (書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー) (創元推理文庫)』
    青崎有吾,斜線堂有紀,武田綾乃,辻堂ゆめ,額賀澪
    東京創元社
    792円(税込)
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――今、日々どんなタイムスケジュールで過ごしているんですか。

武田:本を読む日を決めていて、それ以外はほぼ書いている感じです。基本、朝9時に起きて夜10時くらいまでパソコンに向かっています。でもその間にだらだらしているので、ずっと本を書いているわけでもないです。読む時は、午前中は本の日、と決めて読むようにしています。

――読み始めて夢中になって止められなくなったりしませんか。

武田:「途中で止められない」となったら午後も読むことにしたりして。これまで本はだいたい一回読み始めたら読み切っていて、途中で止めるってあんまりしたことがなかったんです。でも、大人になると、どうしても忙しくて「全部読み切れない」となって、人生で初めて中断をおぼえたという感じです。社会人になってそれを経験した時に、「あ、こういう読み方をする人もいるから、やっぱり引きをちゃんと気をつけなくちゃいけないな」って思いました。

――資料を読むことも多いのでは。

武田:ああ、もう家が参考資料だらけです。でも、資料本がないような題材を選ぶことが多いので、自分が取材した資料が多いです。高校の部活の話などは、本を読むより関係者に話を聞くほうが圧倒的に得るものが多いんです。だから、自分の母校にすごく助けられています。相談したり、アンケートを取ってもらったりして。
 参考資料でいえば、画集や写真集もすごく見ます。結構、絵の構図とか、PVとかにも影響されますね。

――好きな画家は。

武田:河鍋暁斎という日本画家が好きで、それが卒業論文でした。明治期くらいの人で、当たり前ですがすごく上手なんですよ。あとは岡本太郎さんもすごく好き。東京に来た時、渋谷駅に岡本太郎さんの「明日の神話」というすごい絵があって「東京すごっ!」って私は思ったんですが、みんな絵を観ずに通り過ぎていくのが衝撃で。「東京って贅沢だな」って思いました。

――絵とかPVが、どういうふうに小説執筆に影響を与えるんでしょうか。

武田:演出、みたいな。こういう曲の時にこういう演出をするってことは、みんなこういう共有イメージを持っているんだな、とか。「なるほど、なるほど」みたいな感じで。

――ちなみに好きな映像クリエーター、もしくは好きなミューシシャンのPVなどはありますか。

武田:私、川谷絵音さんが好きで、川谷さんのバンドはほぼ好きです。川谷さんが芸人さんたちと組んでいるジェニーハイのボーカルが中嶋イッキュウさんという、tricot(トリコ)というバンドのメンバーなんですが、私、もともとtricotがすごく好きなんです。好きなバンドの人が好きな川谷さんとコラボしているので、もう「好き」の何乗かになっていて、よく聴いています。

――武田さんは吹奏楽部の『響け!ユーフォニアム』やカヌー部の『君と漕ぐ』や高校生がゲーム実況に参戦する『どうぞ愛をお叫びください』といった何かに打ち込む姿を描いた作品のほか、学校の屋上から飛び降りた女子生徒とクラスメイトたちそれぞれの歪んだ感情を浮かび上がらせる『その日、朱音は空を飛んだ』や、先ほど言った『愛されなくても別に』のように大学生の現実や母娘問題に切り込んでいく話など、青春小説といっても切り口や読み心地が違うものを書かれますよね。

武田:私としては本を書くって「絵を描く」というイメージに近いんです。何の絵を描くかと、何の画材を使うかを作品ごとに分けているんですね。
 最初に「こんな感じのものがある。作りたい」というのがある。たとえばイヤミスとか、ちょっと純文学っぽいものとか、明るいシリーズものとか。そこからモチーフを絞って、女子高生ものとか親子ものとかを決めていく。で、それに適した文体を、絵の具みたいに選ぶんです。それをやっていると、今度は「あの文体で書きたいからあのモチーフにしよう」というのも出てきます。単純に飽き性なんですね。
 で、「あれやりたい」「これやりたい」が沢山出てきちゃって、それを一個ずつ片づけているんですが、アイデアに対して執筆が間に合わなくて。早く書きたいんですけれど、1年で4~5冊が限界だな、みたいな。本当は休みたい気持ちもあるんですけれど、全然間に合わないんです。

――アイデアは、創作ノートみたいなものを作っておくんですか。

武田:Wordにメモってあります。プロットごと。他は、スケッチブックをメモ帳にして、そこに書いたりもしています。

――この先もアイデアが枯渇することはなさそうですね。今後のご予定を教えてください。

武田:11月に『放課後探偵団2』というアンソロジーが創元推理文庫から出るのですが、そこに参加しています。メンバーが私と辻堂ゆめちゃんと青崎有吾さんと斜線堂有紀さんと額賀澪さんで、なんかもう、知り合いを集めたようで(笑)。それと、冬に単行本が1冊出る予定になっています。

(了)