第36回 閑話休題 台南とお茶と

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 今年3回目、通算40何回目の台湾に行ってきました。
 今回は外国籍の人だけが使える、台湾新幹線三日間乗り放題パスなんて買っちゃったものだから、欲張って台南一泊二日&台中→鹿港までしちゃった。
 台南はたぶん、3度目......や、4度目かな?
 東京から見るとのんびりしてるように感じる台北も、台南まで来てみると忙しない大都会に見えます。ゆるゆるした古都。例えるなら、奈良?
 食文化も独特。お砂糖が高価だった時代、甘みをつけたお料理は最高のおもてなし。なので、お料理は甘口のものが多くて、日本の田舎みたいなほっとするお味。
 深夜から早朝まで、というエクストリーム営業時間の牛肉湯のお店。かたまり肉から切り出した牛肉に熱々のスープをかけて、半生状態でいただきます。牛肉の市場があるからこその新鮮な牛肉は、臭みも雑味もないどこまでも澄み切った滋味。虱目魚(シームーユー/サバヒー)という、骨は多いけど脂ののった白身が絶品なお魚のお粥。生だとどん引きする見た目の田鰻も、ソースと南部独特の意麺と合わせれば絶品の炒麺に。
 小吃の街台南は、ほんと胃袋の予備が欲しくなる!!

 そして実は台南は、お茶の街でもあるのです。
 創業1860年、実に157年の歴史を持つ、台湾最古の茶葉屋さん、振發茶行。壁いっぱいに並ぶ、時を経て真っ黒になった錫の茶壺。レトロな紙パッケージがめちゃくちゃ可愛い。
 そして、創業1949年と一件目には負けますが、十分歴史あるスタンドのお茶屋さん、雙全紅茶。メニューは紅茶、のみ。3代目のマスターは、注文が入るとやおらシェーカーを振り始めます。初代マスターは日本統治時代、日本人が経営するバーでバーテンダーをしていたんですって。終戦後、せっかくの腕を活かしたいと選んだのが、スタンドのお茶屋さん。
 サイズは1種類だけ。あとは全糖、半糖、微糖、無糖、そして熱、冷、常温が選べます。私が頼んだのは、冷たい微糖。しっかり濃いめにいれられた紅茶、ほのかな甘みがちょうど渋みを押さえて、優しい丸い味にしてくれています(たぶん、日本人には微糖くらいの甘さがちょうど良いと思う)。
 私の他は、みんな地元の人。おじちゃん同士がのんびりお喋りしながら常温の紅茶をすすり、お母さんが子供に半糖を買ってあげ、カップルは仲良く半分こ。人々の生活にこんなに普通にお茶が根ざしているって、いいなぁ。

 街の西の方、安平という老街にあるのが、観光名所でもある安平樹屋。ここも実は、お茶好きにはたまらないスポット。
 安平は台湾で最初にできた港。1858年、清朝と結んだ天津条約により、1865年にここ安平と淡水が開港します。外国の商社はこぞって安平に社屋を設立しました。中でもイギリスの「徳記」「怡記」「和記」、ドイツの「東興」、アメリカの「唻記」は安平五洋行(五大商社)と呼ばれ、とても栄えていました。

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 その徳記洋行の倉庫だったのが、現在の安平樹屋。英国が撤退し、その後買い取った日本の製塩業者も移転、長らく放置されていた1400坪もの倉庫。いつの間にか、一面の榕樹、ガジュマルで覆われてしまいました。ガジュマルには石灰岩を溶かす根酸が分泌されるので、それで倉庫の石壁や煉瓦を溶かしながらぐいぐいと成長。なおかつ他の植物を寄せ付けない排他性&侵略性。もはや宇宙人かもしれない......!! 別名「絞め殺しの木」。
 そのためか、ガジュマルは台湾では陰の気を持つ、と敬遠され、この倉庫も長年オバケ屋敷として恐れられ、誰も近づかなかったそうですよ。
 今は、当時の面影を残しつつ綺麗に整備し、ガジュマルの生命力と、無機物と有機物が一体化した不思議な建物として一般公開されています(日本人だったら絶対これを見て「ラピュタは本当にあったんだ!」って言う)。
 瀟洒なコロニアル様式の徳記洋行の建物は、資料館になっており、当時の製茶の道具などを見ることができます。
 「あぁ、これ今も同じような道具使ってるよなぁ、結局製茶は人の手が大事なんだな」「評茶室、今とおんなじ!! 私、この時代にタイムスリップしても何とか働いていけるかもしれない」

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「ラベル、オシャレ......!! 復刻パッケージとか出してくれないかしら?」
 と、普通の観光客が足早に通り過ぎるところを、いつまでもはぁはぁしながら眺めておりました。

 台北から新幹線で1時間半、高鐵の駅から台南市内までは30分~1時間。一泊二日で食い倒れるも良し(私は一日10食くらいしました)、日帰りでぎゅっと見て回るも良し。
 台湾に行った際は、ぜひ台南のお茶文化に触れてみて下さい。