2月18日(火)

 禁煙生活を始めて、そろそろ1ヵ月になる。あれから1本も吸っていない。禁煙はもっと大変なものだと思っていたが、こんなに簡単なものであったのかと驚いている。辛いのは最初の数日だけだ。その数日はホントに辛いが、それを過ぎてしまえば、あとは嘘のように平気になる。ずいぶん前に禁煙を実施した杉江君から、なかなか辛いですから禁煙補助剤を買ってきたほうがいいですよ、とメールがきて、急いで「ニコレット」というニコチンガムを買いに行ったが、それも結局は買ったままで封も切っていない。
 最初に心配していたのは、いらいらして仕事にならないのではないか、ということだった。原稿につまると以前はそこで一服していたのだが、それが出来ないとなると、仕事が捗らないのではないか。そう考えていたのだが、全然OKである。いまでも吸いたくなるのは酒を飲んだときだけ。これは無性に吸いたくなる。以前ならここで一服したよなというときに、することがないので手持ち無沙汰になり、仕方なくまたグラスを口に運ぶのである。つまり酒を飲むピッチが早くなる。だから酔うのが早い。違いはそれくらいか。
 現在は分煙社会だから競馬場でも喫煙コーナーはガラスで区切られている。そこを通りかかるたびに、煙草を吸っている人を見ることがあり、いいなあと思う。自分の健康のために禁煙したわけではないから、煙草を吸う人がいまでも羨ましいのだ。いつだったか町中の喫煙コーナーの近くを通りかかったら、紫煙が漂ってきて、思わずそこで足を止めたこともある。紫煙が甘いものだとは思ってもいなかった。すごくいいのだ。その甘い香りをいつまでも嗅いでいたい。
 ところが禁煙したと言うと、目の前で吸わなくなる人が少なくない。どんどん吸ってください、とは言うのだが、やはり遠慮するのだろうか。こないだは競馬友達と競馬場の帰りに居酒屋に入ったとき、「煙草を吸ってさ、オレの顔にふっとかけて」と言ったら笑われてしまった。
 ほんの時々、こんなに簡単に禁煙が出来るのなら、時々一本くらい吸ってもいいのではないか、と思うことがある。誰も見ていないんだしと部屋の中で思うこともあれば、居酒屋でグラスを傾けながら思うこともある。どうせすぐにやめられるのなら、一本くらいいいよなと思うのである。いや、吸わないけどね。