12月9日(水)

 よしだまさしさんから「途中下車の古本屋」という冊子が送られてきた。冊子といっても100ページもある立派なものである。よしだまさしさんがこれまでに書いた古本エッセイをまとめたもので、14本中7本が本の雑誌や「おすすめ文庫王国」(本の雑誌社から年1回出ている増刊)に書いたものなので、既読のものが少なくないのだが、こうしてまとめて読むととても面白い。

 表題となっているのは書き下ろしの部分で、南浦和から新宿御苑まで、よしだまさしさんの通勤途中にある古本屋さんを紹介するガイド&エッセイ。巻末に収録の「おくぎ旅館襲撃レポート」は、古本仲間と旅に出かけた報告で、どちらもいやはや面白い。「山形古本奇譚」という信じられない話も載っているが、いちばん笑ったのは「古本極道大西範彦氏の書棚拝見」。その古本極道の大西さんという方は、マニアの方だと思うのだが、その人の家によしだまさしさんが尋ねて行くレポートだ。

 私が思わず吹き出してしまったくだりを引く。

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 入ってすぐ左の棚には文庫がズラリと並んでいる。国枝史郎伝奇文庫が並び、少年倶楽部文庫が並び、講談名作文庫が並び、山田風太郎が並び、鮎川哲也が並び、鮎川哲也が並び、鮎川哲也が並び、鮎川哲也が──あれ? 鮎川哲也の同じ本が4冊ずつある!
「ブックオフで何も買う物がないのもシャクなんで、ダブリ承知で買ってしまうんですよ」
「帯欲しさに買ってしまうこともありますし」
「あと1冊で2セット目が揃うとなると、我慢できないじゃないか」
 そ、そうですね。
「でも、鮎川哲也はこの奥のほうにワンセット揃ってるんです。そっちがベストメンバ ーですね」
 なんと、これ全部がダブリですかあ!
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 私に言わせれば、よしだまさしさんも古本極道といっていい超マニアなのだが、そのよしだまさしさんが驚いている姿がいい。世の中にはまったく信じられない人がいるものである。この冊子、小部数の冊子にとどめておくのはもったいない。もっと多くの人に読んでもらいたいと思う。分量的にも新書1冊分は優にあるので、新書版元の関係者はぜひ検討されたい。