1月16日(金)本は雑談と縁から生まれる

  • あやとりの記 (河出文庫 い 31-3)
  • 『あやとりの記 (河出文庫 い 31-3)』
    石牟礼 道子
    河出書房新社
    1,320円(税込)
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出勤しようとすると山手線と京浜東北線が停電で止まっていると妻が教えてくれる。

京浜東北線が動かなければ私は東京に立ち入ることができない。何もなければ突如休暇を得られる千載一遇のチャンスともいえるが、本日は『本屋の人生』の部数確認や直納に打ち合わせがあり、匍匐前進してでも東京に行かねばならず万事休すなのだった。

頭を抱えていると、たまたま休みだった妻が浦和美園駅まで車で送ってくれることとなり、埼玉高速鉄道から南北線経由で後楽園駅までたどり着き、後楽園からは徒歩にて神保町へ。到着時刻は10時32分だった。

すぐに部数確認をし、納品と打ち合わせの準備をし、外に飛び出す。

1月24日に高野秀行さんと関野吉晴さんのトークイベントが行われる吉祥寺の喫茶ヒロミブックスさんに高野さんや内澤さん、そして服部文祥さんの本を届ける。こちらのお店は冒険・探検系の本が並んでおり、まさに私好みの本ばかりなのだった。

続いて三鷹に移動し、約束の時間まで少しあったのでUNITÉさんを訪問。相変わらずきっちりとした品揃えの棚をうっとり眺めつつ、『暮らしの本』(MINOOU BOOKS)と石牟礼道子『あやとりの記』(河出文庫)を購入する。UNITÉさん、神保町に出店してくれないだろうか。

駅に戻る道すがら椎名さんが山形の酒田で通っていた満月の支店にて、塩ワンタンメンを食す。透けるようなひらひらのワンタンが喉をすべっていく。

ゴーカフェにて、デザイナーの松本さんと打ち合わせ。松本さんには現在5点の本のデザインをお願いしており、順々に話を進めていきすべて方向性が確定した後、雑談を交わしていたところ、松本さんがポロッと知人としてだした名前が私が憧れている人で、なんとなんと奇跡のようにして一冊の本の企画が生まれたのだった。

震えるような瞬間。本は雑談と縁から生まれる。

1月15日(木)感情にフタ

  • 虚弱に生きる
  • 『虚弱に生きる』
    絶対に終電を逃さない女
    扶桑社
    1,760円(税込)
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ここ数日、いやもっと前から目の上の瘤のようにあった事務作業をせねばならず、憂鬱な気分で出社する。

こういう事務作業をいつも淡々とこなしている編集の近藤にそのコツを訊くと、「その日はもうそれだけをやると決めて、感情をシャットアウトする」と教えてくれる。

私も感情にフタをし、黙々と取り組み、一日かけて終える。

帰路は上野まで歩きつつ道すがら缶ビールを飲み、ひとり乾杯。

上野の三省堂書店さんにて、石田果穂の未読最後の一冊『冷ややかな悪魔』(U-NEXT)と気になっていた終電を逃さない女『虚弱に生きる』(扶桑社)を買って帰る。

1月14日(水)隠密行動

  • 本の雑誌512号2026年2月号
  • 『本の雑誌512号2026年2月号』
    本の雑誌編集部
    本の雑誌社
    880円(税込)
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 終日、隠密行動。

 夕方、駒込のBOOKS青いカバさんに、「本の雑誌」2月号を納品にあがる。

1月13日(火)恐ろしい視線

  • 文学を探せ (講談社文芸文庫 つ-L 3)
  • 『文学を探せ (講談社文芸文庫 つ-L 3)』
    坪内 祐三
    講談社
    2,750円(税込)
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多摩霊園にて坪内祐三さんの七回忌。

お経ととに墓前で過ごした時間を「いい時間でした」と感想を漏らした人がいたが、まさしく「いい時間」で、人生の中でこういう「いい時間」をいったいいくつ過ごせるだろうかと墓標にある坪内さんの手書きの文字と青い空を眺めながら思う。

帰りの電車の中で、いただいた講談社文芸文庫版の『文学を探せ』を読み始めると、すぐに「恐ろしい視線が消えて人は弛緩する。」という一文に目が吸い寄せられる。

これは小林秀雄や中上健次の死の後、文学者から緊張感が失せたことを指摘しているのだが、まるで今の「本の雑誌」やこの日記を指摘されているように思え、そこからページをめくることができなくなってしまった。

坪内さんや目黒さんの視線がなくなり、私はたしかに弛緩している。

目をつぶると電車は真っ暗闇の中を走っていった。

1月12日(月・祝)送迎

朝、母親を介護施設の車に乗せると、まさしく頭の中に「解放」の文字がくっきりはっきり浮かぶ。しかも今日は祝日で、これ以上の大開放はない。

実家の玄関に鍵をかけ、父親の墓に線香を灯した後、駅に向かう。

電車に揺られていると昨日読んでいた世田谷ビンポンズさんの原稿が思い出され、急遽途中下車して自分が通っていた高校を訪ねてみる。

変わらぬ校舎を見て感傷に浸るつもりが、高校時代に学校の滞在時間があまりに少なかったためまるで思い出も浮かばず。

駅に戻り、仲間の溜まり場としていたかつて喫茶店だった建物を眺め、改めて感慨に耽る。

感傷散歩を終え、自宅に戻ると娘が働きに出るところで、車で送る。

その後息子も仕事に行くというのでまた送る。

帰宅すると妻が息子が働いているところを見てみたいと言い出し、また埼スタに向かう。

夜はちょうど子供ふたりの仕事あがりが同じ時間帯だったので娘と息子を迎えにいく。

日に四度埼スタを往復する。親と書いて「送迎」とルビをふる。

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