9月6日(日)であいもんと鴨葱書店

  • 京都の食文化-歴史と風土がはぐくんだ「美味しい街」 (中公新書 2721)
  • 『京都の食文化-歴史と風土がはぐくんだ「美味しい街」 (中公新書 2721)』
    佐藤 洋一郎
    中央公論新社
    968円(税込)
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週末実家介護の唯一の息抜きは、母親の寝ている早朝に家を抜け出し、近くのセブンイレブンへコーヒーを買いに行くことだ。

朝のコーヒーが美味しいのはもちろんのこと、その往復5分程度母親から解放されること、セブンイレブンの寡黙な店員と相対することでこの世が私と母親だけではないと思い出させてくれる。

紙コップにフタをして、こぼさぬように注意し、手のひらから伝わる温もりを感じながらまた実家に帰る。このままどこか別のところへ抜け出したくなる気持ちをぐっと堪え、鍵を開けて玄関を入り、30年前自分の部屋と呼ばれた場所に戻る。

目はすっかり覚めており、手元には湯気の立つコーヒーがある。母親が起き出すまでまだしばらくあるが、もう一度眠ることはない。するのは読書だ。

ページを開いたのは佐藤洋一郎『京都の食文化』(中公新書)。この数年、京都で本を売るイベントに参加することが多く、私は京都の鴨川をはじめ落ち着いた街並みにすっかり魅力されている。母親と義母の介護から解放されたら、移住を目論むほどで、先週は妻と娘にも京都を気に入ってもらうと、家族で旅行に行ったのだった。

中公新書だし、難解な本だったらどうしようかと読み始めた『京都の食文化』はまったくそうではなく、平易な文章と具体的な話が続き、私が知りたかったまさしく「京都の食文化」と歴史が綴られており、夢中になって読み進む。すると、サトイモとタラの身を料理した芋棒の説明で、こんな一文に出会った。

「このような絶妙な取り合わせのことを京都の料理人たちは「であいもん」と呼んでいる。であいもんとしてはほかにも、昆布とカツオのあわせだし、うなぎとキュウリの「うなきゅう」あるいは「うざく」、「鴨葱」こと「鴨と白ネギ」など、それこそ枚挙に暇がない。」

『京都の食文化』を購入したのは、その「鴨葱」を店名にした鴨葱書店だった。

どこか人を食ったような店名を、なぜに店主の大森さんがつけたのか。ずっと不思議に思っていたのだけれど、「であいもん」という意味なら腑に落ちる。

鴨葱書店の棚は、本のジャンルや意味にとらわれず、どこか言葉遊びのように並べられている。先日の訪問のときも確か「水」のようなくくりのところで思わず笑ってしまう本が並んでいたのだ。鴨葱書店の棚のおかげで手にとった本は多く、まさしくこの『京都の食文化』もそうだった。

ふと気になって、鴨葱書店のホームページを開いてみる。そこにはこんな文章が記されていた。

「どこかに出かけるとき、一緒に連れていきたくなるような。
なにかに挑戦するとき、そっと背中をおしてくれるような。
鴨葱書店は、心を丈夫に、そしてのびやかにしてくれる、そんな言葉に出会える場所でありたいと思っています。
京都駅から歩いて少し。鴨川からもほど近い、東九条の入り口に佇む小さな本屋で、「ハレ」と「ケ」の本たちとお待ちしております。」

鴨葱書店はまさしく、「であいもん」の本屋さんだったのだ。

9月5日(土)池袋

朝9時、母親を介護施設に迎えにいき、週末実家介護。介護器具のレンタル会社の確認、ケアマネジャー、訪問診療と人が出入りする。雨が止んだ午後、墓参りと散歩に出かける。渡辺さんに半年ぶりくらいで会う。

実家の本棚を眺めながら昨日発表された三省堂書店池袋本店さんの閉店のことを思う。

リブロの頃からも含め、自分の人生で一番本を買っている場所というのは、池袋のあの場所だろう。

18歳で八重洲ブックセンターという東京の本屋さんを知り、それで池袋にすごい本屋があると誰かに聞きき、行ってみたらリブロというとんでもない本屋さんがあった。それ以来、八重洲ブックセンターでバイト代をもらうとリブロに行って本買うようになり、さらに後にクインテッセンス出版で働くようになってからも給料日にはお茶の水から池袋に通っていたし、笹塚に本の雑誌社があった頃は埼京線を途中下車して本を買っていた。今も落ち着いて本を買おうとするときは池袋に足を向けている。

家から近いわけでもなく、職場から近いわけでもなく、かれこれ40年近く本を買っていた場所がなくなる。

9月4日(金)広島日帰り

5時47分起床。6時15分に家を出て、デザイナーの松本さんと東京駅8:12発のぞみ15号に乗車し、広島へ。10月から増山たづ子さんの写真展を開催する泉美術館と打ち合わせなのだった。4時間ほどかかるので松本さんとAIと本作りや家族の話などをしていく。

12時着、美術館の人から教えられていた駅直結の商業施設のお好み焼き屋を覗くと、ずらりと5、6軒並ぶお店すべてに行列ができている。高松のうどんもそうだが、今やご当地グルメは最強のコンテンツ。

お好み焼きを諦め、泉美術館のある新井口駅に向かうと、そこで美術館のIさんが待っていてくださり、道すがらラーメン屋さんをご案内いただく。ニューガンボ。

「コリアンタウン直送の唐辛子をはじめ、特別なスパイスをブレンドした"秘伝の赤ダレ"に自慢のかえしとスープを絶妙に合わせました。唐辛子の刺激と、濃厚なスープのハーモニーをお楽しみください。」とあったが、その名物「赤そば」が激美味。明日も来たいが明日はいないのだった。残念ながら東京に支店なし。再訪を誓う。

傘をさして歩き、泉美術館到着。理事長や学芸員の方々にご案内いただき、10月からの写真展のお話を伺う。

一泊する松本さんを残し、私は3時にお暇し、5時の新幹線に乗車。もみじ饅頭をつまみにビールとレモンサワーを飲んで、東京までの4時間をぼんやり過ごす。

9月3日(木)チャットGPT本の雑誌

4時45分起床。ランニング6キロ。

ランニング後シャワーを浴び、昨日松村から渡されていたZINE『神保町日記2026』のゲラを読み、まえがきとあとがきを書く。

9時37分出社。京浜東北線の中で、20代の女性が本屋大賞受賞帯のついた『カフネ』を読んでおり、その美しい光景に胸熱くする。

10時30分から会議。会議前に特集のアイディアをチャットGPTに相談してみたのだが、回答があまりに的確過ぎて、そのままのっかればいいのではと思うほどだった。

昨日会ったとある出版社の編集者が、部下がメールをほとんどAIに書かせていると言って呆れていたのだが、まあ使ってみればそうなるかもしれない。特集は別のものに決まったので、「チャットGPT本の雑誌」のデビューはお預けとなる。

先行きに不安を抱えていたものがいくつかクリアになり、今日は久しぶりに熟睡できそう。

9月2日(水)定年

朝ラン6キロ。走っている途中雨が降ってくる。ほてる身体を冷やせて気持ちいい。9時47分出社。

夕方、服部文祥さんがいらっしゃって、『本のある世はすばらしい』にサインしていただく。5階にある本の雑誌社にはもちろん階段で登ってきて、階段で降りていく。街中も駆けるようにというか、待ち合わせに駆けてきたこともある。目標のためにいっときも無駄にしないに感動を覚える。

夜、新宿浪曼房へ。66歳で定年を迎えられたこぐま社の田中さんのおつかれさま会。田中さんとは前職の取次太洋社時代に出会い、その人懐こい人柄から長いお付き合いをさせていただいてきた。おつかれさまというつもりが本人はまだまだ働く気だった。

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