WEB本の雑誌

9月29日(金)

 午前中、取次店へ10月4日(水)搬入の新刊『新・匿名座談会』の見本を持っていく。見本とは言え、未完成の本ではなく、ちゃんと出来上がった本を持っていくのだから、この日が一応、書籍の誕生日ということになるのか? 毎度のことながら、ついつい嬉しい気持ちになってしまうが、売れるか売れないかは、これから。気を引き締める。

 午後からは、飯田橋、水道橋、神保町と営業。
 飯田橋のI書店に顔を出すと、S出版社のKさんが商談中。Kさんとは古いつき合いなので挨拶し、Kさんが終えるまで棚をチェックする。その後、本誌でも顔なじみの深夜プラス1の浅沼さんのところに行って、話をしていると、今度は後からKさんがやってくる。先にR書店に顔を出していた様子。これはもしかすると営業ルートが完全にバッティングしているかもと思いつつ、水道橋に移動してY書店に顔を出すと、またもやKさんがお店に入ってくる。うーん、お互い苦笑い。何となく顔見知りと一緒に動き回るのが恥ずかしいので、逃げるように神保町へ移動する。

 仕事を終え、帰宅する前に新宿のK書店へ寄り道。気になっていた新刊を数冊購入。ペレケーノスの新刊『生への生還』(ハヤカワ文庫)、パーカーの新シリーズ『家族の名誉』(ハヤカワ文庫)、現在浅沼さんイチオシの『夜が終わる場所』(扶桑社文庫)。今日は外文文庫のみ3冊。それにしても散々仕事で書店を廻って、また帰りに書店へ行く。うーん、いったい何なんだ。相変わらずの風邪ひきで、調子は悪い。明日、明後日の休みはゆっくり本を読んで休息をとろうと思う。

9月28日(木)

 本日は埼玉営業日。
 どうしていきなり決まっているかというと、僕の営業予定が3カ月先までびっしり練られている…というのは、真っ赤なウソで、同じ真っ赤は真っ赤でも、本日は我が浦和レッズの平日試合日だからだ。埼玉方面の営業日だけは、毎年2月の時点で決まっている。うーん、とんでもない営業マンだ。

 朝イチで会社を飛び出し、まずは池袋へ。リブロに顔を出したら、パルコブックセンターにいたIさんが棚差ししていてビックリ。まあ、リブロとパルコは今年の春先に合併したのだから当然と言えば当然なんだけど、なんとなくまだ、違和感を感じる。そういえば、先日パルコBCで雑誌を買ったら、リブロの青い袋に入れられたのも思い出す。あのオレンジ色のパルコ袋が懐かしい。リブロにもパルコBCにもそれぞれ良さがあったので、是非うまく融合して欲しい。 そうそう、パルコBCついでに思い出したが、現在僕が一番注目しているのが、パルコBC渋谷店の売れ行きベスト20。絶対よそのお店では考えられないものが、ダントツの1位だったりして、非常に勉強になる。渋谷の数ある書店さんのなかでもパルコBCだけが、あまりにも違うベストなのが興味深い。
 池袋を駆け足で営業し、埼玉へ突入。生まれも育ちも埼玉の僕にとっては、まさにホームグラウンド。移動が自然にできるのがうれしい。川口、武蔵浦和、大宮、浦和と営業活動。とにかく就業規則の6時までは働く。

 6時をまわり、駒場競技場まで歩いたところで、会社に直帰の連絡を入れる。するとデスクの浜本が電話口にでたので、あわてて、通話口を押さえるが、ちょっと遅かったようで「杉江くん、何かまわりがうるさいねえ、どこにいるの?」と言われる。思わず営業マン必殺技その15「ごまかし笑い」で逃げることにした。
「ヘヘヘヘヘ。」
 これは、書店営業の際に、「今度の新刊はあんまり売れないねえ…」なんて言われたときによく使う技なので鍛え方が違う。デスク浜本もイチコロで、うまくごまかせた。
 まあ、元気なのはここまでで、我が浦和レッズは、J2首位を独走するコンサドーレ札幌に延長戦の末、敗戦。レッズに対する怒りと悲しさで、泣く泣く、家に帰る。

9月27日(水)

 相変わらず風邪ひき。鼻水・のど・熱、一気呵成に攻めてくる。薬を飲むと幾分楽になり、重い足取りで出社。うーん、こう書くと、いかにも必死になって仕事をしているようで嫌みな気がする。本当は自分の怠惰な性格を知っていて、一度休むと二度と会社に行かなくなるような気がして怖いだけなんだけど。

 午後イチで、地方・小出版流通センターのKさんと打ち合わせ。新刊や雑誌のスケジュールと部数の確認。地方・小に行くと見たことのない本がいっぱいあって、思わず逆上してしまう。地方色豊かな本がズラリと棚に並んでいる。面白そうなものばかり。興味のある方は、神保町スズラン通りにある書店部門「アクセス」へ。

 打ち合わせを終え、神保町に顔を出す。今週は給料日週のため新刊ラッシュ。文芸書の新刊棚もにぎやかだ。塩野七生の「ローマ人の物語」や吉本ばなな2点、馳星周に「ゴー宣」などなど売れ筋がズラリ。こんな平台のなかに来週「新・匿名座談会」をぶち込むのかと思うとちょっと冷や汗が垂れる。まあ、風邪を早く治して頑張ろう。

9月26日(火)

 前日より体の具合は悪いが、休んでいられない状況なので、頑張って出社する。薬を飲むといくらか楽になるが、ボーっとしてしまうのが問題。風邪ひきに埼京線のラッシュは堪える。

 しかし、会社に着いて一発目の電話で、いきなり現実へ連れ戻される。

「杉江くんに、悲しいお知らせをしないといけないんだ…。」と、とても懇意にしてもらっていた書店さんから電話が入った。
「えっ、どうしたんですか?」
「実はね、お店を閉めることにしたんだ、お客さんが全然入らないし、売上もあがらない…。早めにケリをつけて傷口が広がる前に閉める決断をしようということになったんだ。いろいろと協力してもらったのに申し訳ない。」
「……。」

 寝耳に水とはまさにこのこと。風邪に閉店が一番堪える。この店長さんは今年の春まで大手書店で働いていた方で、僕はそのお店に顔を出していた。お互いサッカーファンということや住まいが近くということで、非常に親しくさせてもらっていた。お店に顔を出せば、お茶に誘って頂き、書店の事情や本の話を聞かせてくれた。また、お店のひと棚を「本の雑誌」コーナーにまでしてくれ、うちを応援してくれていた。それ以外にも自宅にお呼ばれし鍋や焼き鳥をごちそうになったこともあった。

 そんな店長さんの口から「そろそろ独立して、仲間と本屋をやろうと思っているんだ」と聞いたのは今年の春先だった。この不況のなか、独立、それも本屋と聞いて僕は正直言って驚いた。大手書店でも売上を確保するのに難しい状況なのに、新規書店、それも小さな独立書店がやっていけるとは、なかなか考えられない。しかし、決断は店長さんがすることだし、それがその人の生き方なのだから口を出す問題ではないだろう。とにかく、僕はできる限り協力することを約束した。

 それから店長さんは、物件探しや取引口座の開設、お店の商品構成やレイアウトなどなど飛び回るようにして動き回り、紆余曲折を乗り越え、7月の暑い日にお店は開店した。僕は開店当日ビールを持って駆けつけた。お店はきれいにレイアウトされ、本と一緒にアジア雑貨も置いてある面白い本屋さんだった。店長さんの趣味をふんだんに取り入れ、サッカー本も充実し様々なグッズも取りそろえていた。立地は確かに悪いが、定着すればかなり面白いお店になりそうだと僕は楽しみにしていた。

 しかし、お店は現実に叩きつけられ、2カ月で閉店することになった。細かい事情は僕にはわからない。きっと同業他社から見れば、「甘かった」の一言で片づけられるのだろう。きっとこれが、ビジネスの現実なのだろう。それはわかっているけれど、とにかく今は淋しい。お店がなくなることも、この業界に対しても、とにかく淋しい。ガラガラになった棚を見るのは非常につらいので、入れていた本は宅急便で送り返してもらうことにした。店長さん、またいつか面白いことをやりましょう。今は、それしか言えない。

9月25日(月)

 朝起きた瞬間に、これはちょっとまずいなと思った。何がまずいかというと、喉の奥がヒリヒリするのと、若干熱っぽい気がした。実は、土、日曜に日光へキャンプに行ったのだが、大雨で身体を濡らしたのがまずかったようだ。何年ぶりかの風邪ひき。頑張って出社する。
 午前中は社内で事務仕事を片づけ、午後、身体を引きずるように営業活動に出る。しかし、午後3時ついにダウン。駅のベンチに座ったら、めまいと吐き気で、立ち上がれなくなってしまった。頭が割れるように痛い。これではとても仕事にならないので、会社に連絡を入れ早退することに。ああ、情けない。こんな時こそ、日頃、高い保険料を払っているのだから、医者に医者に行かなきゃ損だと思ったが、保険証を持っていないことに気づき、あきらめる。薬局で「パブロンゴールド」を買って家に帰る。あっけなく眠る。

 そうだ!書き忘れたが、五輪サッカー日本代表は、アメリカに敗北。大好きな中田ヒデがPKを外すなんて。仕方ないけど…。あっ、これで僕は具合が悪くなったのかもしれない…。

9月22日(金)

 午前中から取次店を廻り、10月4日搬入の新刊『新・匿名座談会』の事前注文分の短冊とリストを渡す。2カ月遅れの進行も、これで一段落…。しかし、その分ずれ込んでしまった『沢野字の謎』の営業活動をあわててしなくてはならない。落ち着くヒマがない。
 お茶の水にある取次店N社は、仕入れ窓口での順番がはっきりせず、頭の中であの人の後、この人より先なんて覚えているが、はっきりしない。今日も2人に抜かされてしまい、怒り爆発。T社のように、順番札を作って欲しいものだ。

 午後に取次店を廻り終え、通常の営業に戻る。時間があまりなく、渋谷の数件に顔を出す。気になっていた阪急ブックファースト渋谷店の本の雑誌全点フェアは、ぼちぼちの売れ行きで担当のHさんが、「結構いいですよ」優しい言葉をかけてくれたので一安心。でも、本当にいいんだろうか…とちょっと不安になる。
 夜は、そのまま移動し、二子玉川で新宿ガブリ団(浮き玉△ベース)の人たちと飲む。浮き玉がなければ知り合う機会もなかったであろう人たちと普通に会話をしていることがすごく不思議に感じる。仕事を抜きにして、気の合う人たちと久しぶりにうまい酒。でもちょっとしゃべりすぎた気がする。恥ずかしい。

9月21日(木)

 妙に疲れている。
 朝から身体がだるいし、歩いていても膝が上がらない。1センチ程度のでっぱりに足をすくわれ転びそうになること数回。先週の夏休みで、怠惰な生活を送っていたツケが回ってきたようだ。一時期、目黒に言われ、万歩計を付けて営業したことがある。一日の歩数は、平均2万歩を越えていた。1歩が80センチだとしたら、一日16キロ以上歩いていることになる。営業マンとして多いのか少ないのかわからないけれど、目黒はそのとき多くて数千歩。
 いつまでこんな仕事を続けていられるのか不安がある。今は、29歳でまだまだ身体がいうことをきくからいいものを、今後どれほど体力が落ち込んでいくのかわからない。出版営業なんて職種はツブシがきかないし、一日中机に向かっていられる忍耐力もない。何かの間違いで会社が発展し、営業部長なんてことになって、鵜飼いの鵜匠みたいに営業マンを使うなんて言うのも嫌だ。やはり現場(書店)が好きだから顔を出していたい。はたして体力はいつまで持つのか…。
 10年後、いや5年後の自分がまったく想像できない。どんな生活を送っているのか、見当がつかない。まあ、想像がつかないから、生きていて、面白いんだろう。

 営業を早めに切り上げ、事前注文の〆切作業。注文短冊と取次店に渡す一覧表のつけあわせ。何度も何度も間違いがないか確認する。
 疲れているので、早く帰ろうと思ったが、助っ人の横溝くんと池木くんに誘われ、笹塚「和民」で一杯。彼ら二人は来春から就職。今はその就職を前にしてブルーな時期らしい。1時間半ほど飲んだところで、まぶたが落ちてくるのがわかる。ダウン。ひとり早めに退散する。
 ドラクエは一向にして進まない。

9月20日(水)

 今日は、仕事どころではない。32年ぶりに決勝トーナメント進出がかかる、サッカーの五輪日本代表対ブラジル戦があるのだから。こんな日に仕事をしている場合じゃない。できることならオーストラリアにいたかった。もしくは最低でも休むか、早退して、じっくり試合を楽しみたい。中田ヒデの穴を埋めるべく中村俊輔のプレーを観察したいし、フラット3対ブラジル攻撃陣も考察したい。ああ、生で見たい。

 しかし…、社会人はつらい。自分の予定よりも仕事を優先しなければ行けないときもある。今回は夏休みを取ったばかりだし、サボるほど楽な時期でもなく、その反対に10月の新刊『新・匿名座談会』の事前注文〆切の時期。新刊予定は、サッカーに合わせて欲しいと、再三、単行本編集者カネコに伝えているのに、一向に改善されない。ああ、悔しい。でも、ビデオで見るなんてあまりに哀しすぎるので、2階編集部のテレビを予約する。

 とにかく6時まで仕事。本日はどうしても路線営業ができず、ジグザグ移動する。田町のT書店のKさんに「最近面白い本ありましたか?」と聞くと「炎の営業日誌かな」と冷やかされる。この欄を書いていて一番恥ずかしいのは書店さんに見られることで、今回初めて面と向かって読まれていることを確認。非常に恥ずかしい気持ちで、しどろもどろになってしまった。その後、新橋、赤坂見附、荻窪、新宿と地下鉄を乗り換えての営業活動。

 最後に訪れた新宿S書店のFさんに、今度は僕が編集している書店販促用DMを「いつも楽しみにしているんですよ」と誉められる。ああ、またまた顔から火がでて、その勢いで逆噴射してしまい、小田急デパート屋上から月に向かうほど恥ずかしい。僕は慣れていないため人から誉められたりすると、とにかく照れる。Fさんの言葉にも思わず照れまくってしまい、その後、数分間何をしゃべったのかよく覚えてない。うれしいけれど、逃げるようにして退散。

 会社に戻って事務仕事もそこそこに、2階のテレビ前へ移動。目黒とデスク浜本と事務の浜田の4人でテレビを囲み、ブラジル戦を観戦。試合前に発行人の目黒は冷ややかな態度で「日本はブラジルに負けて、でも南アフリカも負けて、それで決勝トーナメントに進めるんだよ、人生なんてそんなに劇的なものじゃないし、ドラマチックでもないよ」と意見する。うーん。 でも、目黒さん、それほど冷ややかなくせして、何で中村俊輔のフリーキックであんなに絶叫するんですか?それに高原のゴール前でのプレーでは「かわせーーーー」と叫んでましたよ。あのお言葉、どこかで聞いたことがあると思ったら、一緒にいった大井競馬場でした。「かわせ」はどちらにも使えるんですね。

 結果は目黒の予想通り。なんとなく消化不良だが、32年ぶりに決勝トーナメント進出。とにかく喜ぼう。シドニーへ行きたい。

9月19日(火)

 出社後すぐ外廻り。会社にいると妙に息苦しい。 この辺は発行人の目黒とまるきり違うところで、目黒は会社がきっと一番居心地のいい場所なのだと思う。2階の編集部を覗き、ソファーの片隅でうずくまっているのを見て、そのことを実感する。よほど無防備でないとこんなところで熟睡できるわけがない。それにしても50過ぎにもなってよくソファーで眠れるなあ…。

 横浜方面を営業。
 今週の文芸書の目玉は、なんと言ってもハリーポッターシリーズ第2巻『ハリーポッターと秘密の部屋』。これが予想通り売れるか売れないか…によって9月の売上がだいぶ違ってくるのだ。1冊1900円もおいしい数字。
 さてさて、いかにと担当者に聞いてみると、やはりどのお店も順調なようで一安心。まあ、他社のことだからこちらとしては関係ないのだが、やはり文芸書の棚に活気がないと非常に淋しい。それ以外では、乱歩賞受賞の『脳男』や、一粒で3度おいしい『新宿鮫』最新刊も相変わらず好調のようだ。

 桜木町から横浜へ移動する。Y書店の担当者が変わっていてビックリ。今度の担当Hさんは他の支店で大変お世話になっていた方なのでまたまたビックリ。でも、面識がある人で良かったと一安心。その後、S書店に顔を出すと、こちらも担当者が変わっている。新担当のKさんと挨拶がてら話をしていると「実は、昔、本の雑誌に載ったことがあるんですよ」と恥ずかしそうに告白される。詳しく事情を聞いてみると、7年近く前、別のお店にいたときに、年末のベスト3を選んでいただいたそうだ。いやー、ビックリだけど、『本の雑誌』を知っている方でまたまた一安心。今日はやけにビックリと一安心が多い日だ。横浜を順調に営業するが、M書店のYさんに会えなかったのが残念。公休日を忘れていた僕の大失態。ああ。

 さて、横浜を営業し終えると夕刻に迫っていたので、とりあえず東京へ戻る。この移動の電車で男子高校生グループと乗り合わせ、その傍若無人な振る舞いに不愉快な気分になる。彼ら4、5人は電車に乗ってくるなり、人の迷惑を顧みず、車座になって床にべたりと座った。その後、そんな大きな声で話さなくてもいいのにと思うほど大きな声でしゃべり出す。携帯電話は鳴り響き、そちらも大声で会話。急に立ち上がったかと思えば、つり革で懸垂したりしていた。まったく落ち着きがなく、こちらとしては、迷惑以外の何者でもない。
『本の雑誌』10月号、木村弁護士の原稿で、「女性専用車両」の復活をという提案があったけれど、僕は、「高校生専用車両」を作って欲しい。ひとつの車両に彼ら彼女らを押し込んで、どれだけおのれ達が人様に迷惑をかけているのか、気づいて欲しい。って気づかないか…。まあとにかく不愉快。いまこそ、山口瞳氏の『男性自身』すごく読みたい。

 そんなことを考えていると他の車両も欲しくなってきた。終電間近には「酔っぱらい専用車両」を作って欲しい。こちらは仕事で遅くなっているのに、ウダウダ絡まれるのは、たまったもんじゃないし、アルコールのプハーなんて息も気持ち悪い。それから目に余るカップルもたまにいるので、「カップル専用車両」を作って、好きなだけいちゃついてもらいたい。抱き合おうが、キスだろうが、その先だろうが、その車両であれば何をやってもいいぞ。そうなると、その「カップル専用車両」の前と後ろは「のぞき専用車両」ということになるか。あとは、最近流行の「出会い専用車両」なんて良いかもしれない。でも、「営業マン専用車両」なんていうのには乗りたくない。お互い愛想笑いのし通しで、天気のことなんてブツブツ言い合っていそうで非常に怖い。

 うーんいろんな車両が出来てきたが、他にもいいのがありそうだなあ。一番欲しいのは、「杉江専用車両」か…。

 ああ、訳の分からない一日になってしまってすみません。

9月18日(月)

 重い足取りで会社へ。
 久しぶりの埼京線ラッシュアワーに身をくしゃくしゃにされ、途方もない疲労感。
 一気にストレスが増す。

 会社に着くと僕の机の上になぜか「キンチョール」が乗っている。
 これは、僕を退治したいという意味か?一段とストレスが溜まる。やっぱり会社が、嫌いだ。

 早速、品切れで増刷していた、吉野朔実『お父さんは時代小説が大好き』と穂村弘ほか『短歌はプロに訊け!』が出来上がり社内に搬入。

9月17日(日)

 『杉江由次の炎の観戦日誌その3』

 ビデオにて、昨日のレッズ戦のおさらい。
 声も出ないくらい、情けない気持ちになる。

 そんな落ち込んだ気持ちを振り払ってくれたのはまたもや、五輪日本代表の素晴らしいサッカー。
 大好きな中田は若干調子が悪そうな感じで、パスミスや判断ミスも続発していたが、この日のスーパースターはなんと言っても稲本。守備に攻撃にキレまくり、「もしかして稲本くん、君は五輪後に世界に行くんじゃないか?」と思わせる最高のパフォーマンスを発揮する。

 見ていて、吐きそうになるほど素晴らしい。
 稲本は日本のダーヴィッツだあ。
 ああ、たまらないなあ、面白いサッカーを見ると…。

 日本の勝利で勝ち点6。
 これで恐れていた決勝トーナメント進出かと思いきや、なんとブラジルが南アフリカに負けているではないか。
 おいおい、ブラジルよ。
 なんか嫌な予感がしてきたのは、僕だけか…。
 またまた、得失点でダメなんて嫌だぞ。
 こうなったら、ブラジルに勝とうぜ、五輪日本代表よ!

 フッと気づくと、今日で夏休みも終わり。
 ああ、何をしていたんだか…。

9月16日(土)

 『杉江由次の炎の観戦日誌その2』

 今日は、我が浦和レッズ生観戦日。
 埼玉ダービーで対大宮戦。

 朝から雷を伴う、雨が降っていて、自由席の席取りに並ぶのが億劫になる。
 しかし、このためにわざわざ浦和に引っ越したのだからと身を引き締め、開始5時間前に家を出る。
 傘をさしての立ち並びは、かなり苦しい。

 しかし、それ以上に苦しいのが、我が浦和レッズのヘボヘボサッカー。
 なんのアイデアもなく、やる気も見られず、また監督もひどい。
 このところ、五輪サッカーを毎晩テレビで観戦していると、あまりのギャップに悲しくなる。
 90分間がまさに苦行。
 まだ、これに比べたら、華厳の滝にでも打たれた方が楽な気がしてくる。
 あまりに苦しいので、途中で帰ってしまおうかと思ったが、この日の試合後、大好きなペトロビッチの退団セレモニーがあるためそれもできない。
 結局終了間際に1点を取られ、敗北。
 うーん、この7時間以上は何だったんだ。
 苦行・苦行。
 人間の器が大きくなったと思おう。

 その後退団セレモニーで大泣き。
 こんなに泣いたのは、去年のJ2落ち以来か。
 一緒に観戦している吉田くんと大泣きしつつ、浦和駅前に流れ、大酒。
 タクシーで帰宅。

9月14日(木)

 『杉江由次の炎の観戦日誌その1』

 ついに迎えた五輪サッカーのニッポン初戦。
 我が五輪日本代表は、南アフリカと対戦する。

 試合開始30分前から、自宅のテレビの前に座り、準備を整える。
 まずは、回りに置いてある物をきれいにかたずける。
 テレビのリモコンや携帯電話、ティッシュの箱なんていうのがとにかく危ない。
 なぜなら興奮すると我も忘れて、手当たり次第、投げつてしまうからだ。
 過去テレビのリモコンは2個ダメにしたことがあるし、電話の子機も砕け散った。
 それ以来反省して、観戦前は身の回りをきれいにすることを心がけるようになった。

 さあ、試合開始となったら、今度はタオルを口にくわえる。
 くわえるというよりは、突っ込むになるのか。
 そう、誘拐された人質がされるような猿ぐつわをするのだ。

 これは、興奮すると、絶叫あるいは、遠吠えしてしまい、あまりにうるさいので近所迷惑になるからだ。
 消音装置の役割。
 それならば、静かに観戦すればいいとは思われるが、サッカー観戦で、声を出すのを我慢するくらいなら、猿ぐつわの方がマシ。のどが乾こうが、繊維が口に入ろうが全然マシ。
 というわけで、今日もタオルを口に突っ込む。

 この日も
 「ホゲホォーーーー、モゲー、モゲェーーー」(「高原ーー、打てー」の意)
 「モゲモゴ、モゲモ、モラ!」(「中沢、よせろ、こら」の意)
 などと、絶叫しつつ観戦。

 ところが、前半残りわずかに高原が先制点を決めると近所中から一斉に絶叫が聞こえる。
 そうか、みんな見てるのか、浦和はやっぱり良い町だ。
 ならばとタオルを外し、こちらも絶叫モードへ。

 90分後ヘトヘトになり、勝利ともに、近所中から拍手の音。
 勝利の美酒。
 それにしても中田のスルーパス、高原の飛び出しに鳥肌が立った。
 うーん、最高の一日。

9月11日(月)

 午前中の半日だけ仕事をして、ついに待望の夏休み。 
 敬老の日もあわせて、6連休を獲得。 
 これで、やっと落ち着いてドラクエができるというもの。 
 
 午前中は『本の雑誌10月号』の搬入。 
 土砂降りの雨の中、濡れないように社内へ運ぶ。 
 そのまま、直接購読者の方々への封入作業開始。 
 
 実はこの夏休み、シドニーへ五輪サッカーを観戦しに行こうと思っていたのだが、もし、決勝トーナメントに日本が残った場合、帰国する気がなくなるのが目に見えていたのであきらめた。 
 営業マンただひとりの会社で、2週間以上の長期休暇は取れるわけがない。 
 
 社会人はつらい。 
 
…とは言っても、夏休みは夏休み。 
心を踊らせて帰宅する。

9月8日(金)

 阪急ブックファースト渋谷店のフェア用にサイン本を作る。沢野、目黒はすぐにつかまり、早速サインをしてもらう。椎名のスケジュールは…と考えているところにちょうど会社にやってくる。あわてて用意してサイン。それにしても『ここだけの話』は、表紙カバー自体が椎名のサインをデザインしたもので、これにサインをしてもらうのは何となく変な感じ。まあ、最新刊ということで…。 
 
 サイン本を持って、そのブックファースト渋谷店へ。 
 文芸担当者のHさんが、K店長さんを紹介してくれたのでご挨拶。話しているうちに、何かひっかかる。何だろう?と疑問に思っていると、「実は以前、別の書店にいて、その頃目黒さんと…」との一言で一気に思い出す。なんと目の前にいるK店長こそ、目黒が「本の雑誌」を作った当時、唯一出張で大阪に営業に行った際、大変お世話になった担当者なのである。驚きのあまり倒れそうになる。 
 
  本の雑誌社で営業をしていると、このような会社の歴史を感じる瞬間がある。「うちは目黒くんが担いでよく来ていたんだよ」とか「椎名さんが納品に来て、返品を持って帰るときに、『だまされたなあ、帰りは軽くなると思ったんだけど』なんてぼやいて帰ったよ」とか。あるいは、出版社の飲み会で、「僕は昔助っ人で出入りしていたんだよ」なんて話も聞く。 
 まさに、『本の雑誌風雲録』や『本の雑誌血風録』の時代を感じる瞬間だ。そして、その綿々とつながる『本の雑誌』という時間の流れのなかで、今、僕が営業をしている。 
 本の雑誌社という看板を背負い営業するということは、そのすべてを背負うことでもあると思っている。その重みは常に感じている。もちろん会社は小さい。売上だって、書店さんから見れば微々たるものだろう。たとえ『本の雑誌』が無くなったとしても、すぐに忘れられることだろう。そんな『本の雑誌』だけど…、でもこの会社というか、本の雑誌の黎明期を支えて人たちの気持ちを大切にしていきたいと思って営業している。その人たちのおかげで今、僕はここで働いているのだから。 
 
 K店長さんに会って、またその重みをヒシヒシと感じた。モチベーションが一気に上がる。 
 
 外苑前のL書店。ここは神宮球場や国立競技場、秩父宮ラグビー場が近いのでスポーツ本とくにラグビーや野球の本が揃っているお店。スポーツバカの僕にはたまらない。この日も何気なく棚を見ていると、慶応大学ラグビー部の記念誌のようなものが平積みされている。担当のKさんは大のラグビーファン。早速話を聞いてみると、すでに購入されたとか。浦和レッズも歴史を重ね、こんな豪華な本を早く作って欲しいな。

9月7日(木)

 西武新宿線を営業。 
 新所沢へ向かう電車の中で、思わず熟睡。発車の合図で目が覚め、あわてて飛び降りる。 
 危ない危ない。 
 これも連日連夜、ドラクエを遅くまでやっているからか…。 
 社会人のくせに、恥ずかしい。 
 ああ、つらい。 
 今日は早く帰って寝よう。

9月6日(水)

 涼しくなって喜んでいたら、いきなり暑さのぶり返し。 
 
 おまけにかなり湿度が高い、営業最悪指数92%。  各取次店に電話し、「本の雑誌10月号」の部数確認後、製本所へ、配本表をファックスする。毎月この作業をすると、ひと月が終わる気持ちになる。おまけにあと2号で12月号。雑誌は前倒しの月を印刷するので、一年も早い。 
 
 川崎方面を営業。 
 
 K書店の仕入れでワニブックス刊「酒井若菜」の写真集を発見。これがすごい。何がすごいって、「酒井若菜」のフィギュア付きなのだ。もっとすごいのは、そのフィギュアが似ていない。ただの女の子の人形にしか見えない。 
 
 某書店さんでこの話をしたら、似てないから改造心をくすぐるんじゃない?と言われる。うーん。それにしても6000円……。って興味はまったくないんだけど。 
 
どうなることやら。 

 今、写真集が売れない時代。ひとときの売上がウソのように冷え切っている。誰が出してもダメ。ヘアを出しても、もちろんもうダメ。 
 書店さんは悲鳴をあげている。漫画もダメ、写真集もダメ、もちろん文芸書はもっとダメ。ダメダメづくしの出版不況だ。