WEB本の雑誌

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12月26日(火)

 今日で仕事納め。というわけで、当欄の『炎の営業日誌』も2000年最終アップ。

 どんな方々が、こんなへんてこな日誌を読んでくださっているのか想像もつきませんが、とにかく1度でも目を通してくれた皆様に感謝します。ありがとうございました。
 三角窓口やメールで励ましてくれた皆様にも感謝しています。皆さんの言葉がなければ、この半年原稿を書き続けることは、出来なかったと思います。ありがとうございました。

 僕自身、この日誌を来年も続けていけるのか、よくわからないのですが、とにかく本の雑誌の面々と面白い本を作り、魅力にあふれた書店さんと一緒に歩んで良ければと思っています。

 我が浦和レッズは…。
 J1昇格1年目。今まで以上に気合いを入れて応援していこうと考えてます。

 ではでは、皆様、良いお年を!!!

12月25日(月)

 同業他社にいるAさんは、小・中学校時代の同窓生。数年前にばったり出くわしたときは、心底驚いて、「何でお前がこんなところにいるんだ?」と思わず声をかけてしまった。もちろん驚いたのはAさんも一緒で
「杉江くんが、どうしてスーツを着ているの?」と言われた。驚くところが違うと思うんだけど、お互い昔のイメージがあるから仕方ない。

 約10年ぶりの再会以来、たまに飲みに行ったり、僕がAさんの会社を訪れたときに無駄話をするような関係が続いている。

 今日もAさんの会社に行ったので、年末の挨拶がてら、話をしていこうと考えていた。用事を済ませ、Aさんのいるセクションに近づいていくと、席には不在で、ああ、残念と思いつつ、辺りを見渡してみる。すると柱の影に立っているAさんを見つけた。

 そのまま歩み寄っていこうかと思ったが、ふっと足が止まる。
 Aさんは泣いているように見えた。

 まさか…と思いつつ、目を凝らしてみると確かに泣いていた。柱の影に身体を寄せて、肩を上下に揺らし、ハンカチを顔にあてている。
 Aさんが泣いているのを初めて見た。

 いきなり泣いている人を見たらどう思うだろうか。僕は、例え昔の知り合いだとしても、ちょっと声をかけるのは、悪いような気がした。仕事上の躓きかもしれないし、それこそ今日はクリスマスだから、何かがあったのかもしれない。お互い学校で笑いあっていたときから、すでに10年以上の時間が過ぎていて、その間に過ごした時間はまったく共有していないのだ。そんな相手の心のなかに土足で踏み込むようなことは出来ないと思った。見なかったことにしようと、僕はそのままAさんに声をかけず会社をあとにした。

 しかし、駅へ向かう道すがら、僕は思わず立ち止まってしまう。
 自分のなかで、何か面倒だな…という想いはなかった。余計なことにクビを突っ込んで、振り回されるのがイヤなだけだったんじゃないか。大人のふりをして放っておく優しさなんて、結局自分に対する言い訳なんじゃなかったか。昔の知り合いなんだからこそ、何か力になってあげられることもあったんじゃないか。

 そんなことをひとつずつ考え込んでしまった。
 いったいどうすべきだったのか、僕にはわからない。

12月22日(金)

 どうにか体力はもったものの、本日も「おすすめ文庫王国」の直納。
 地方小出版流通センターや書店さんへ車で運ぶことにする。もう、手持ちで運ぶ体力はない。

 助っ人の内藤さんとコンビを組んで渋滞をかいくぐり都内を移動する。内藤さんはとても運転が上手いので安心して同乗。思わず助手席で昼寝しそうになってしまったが、さすがにそれはまずい。

 さあ、明日はやっと休み…だけど、今日も忘年会。12月は大変だ。

12月21日(木)

 朝起きたら…。
 いや目が覚めただけで、起きあがることができなかった。
 それは前日の二日酔いという訳ではなく、連日連夜の忘年会で、まったく体力が残っていないようだった。立ち上がろうとしただけで、ひざが笑っていて足に力が入らず、そのままひっくり返る。まるで自分の身体じゃないようだ。
 困ったなあと思いつつ、このまま今日は休んでしまおうかとその日の予定を思い出す。そうだ、今日も忘年会があったし、年賀状はもとより直納も何件か入っていた。これじゃとても休むわけにはいかない。とにかく布団の近くにあった椅子を支えにどうにか起きあがる。

 フラフラと歩きながら電車に乗って、ほとんど半眠状態で会社に到着。こういう時は埼京線のラッシュに救われる。人の身体にちょっとだけ寄りかかる…。

 午後になっていくらか体力が回復し、直納と営業に出かける。池袋のA書店を訪れたら、骨折していたKさんが職場に復帰。まだ足を引きずっているものの、重い荷物を運んで棚差しをしていた。心配になって声をかけると
「これもリハビリなんですよ。」と元気に笑う。
 うーん、やっぱり忘年会疲れくらいで休んじゃいけない。Kさんを見習わなくては…。

 その後はKさんにもらった精神力でどうにか一日を乗り切り、忘年会へ。明日のことを考え、酒は控えめ。

12月20日(水)

 終日年賀状を書き続ける。
 それでもやっと100枚。
 このペースで終わるのか不安になるが、とにかく書くしかない。

 夜は、深夜プラス1の浅沼さんを囲んでの忘年会。いつも浅沼さんを中心に集まるメンバーで炭火焼きのステーキを食う。ビックリするくらいうまい。

 本日集まった僕以外の各版元営業4名は、それぞれ個性があって話が尽きない。「本の雑誌」誌上にも登場して頂いたことのあるD社のKさんは、スキンヘッドにあご髭をたくわえた、まさにあちら方面の風貌。パッと見ではKさんの半径5メートルには近づきたくないような恐さを感じるが、しかし、その本性はとても優しく気さくな人である。もちろん話術も最高で、今日もKさんの話に腹がよじれるほど笑ってしまった。その他の人の話も面白く、とにかく笑いっぱなしの忘年会。

 大笑いしつつも、こんな人達と書店さんの棚を取り合っているのかと思うとゾッとする。同じ土俵で戦えるのだろうか…といささか不安になる。

12月19日(火)

 昨日訪問したY書店のMさんに
「わたし、まだ年賀状を書いてないんですよー。そのことを思い出して、ゾッとしました。」と言われた。
 その言葉を聞いて、もっともっとゾッとして、背筋が凍りついて、そのまま東海道線に乗って熱海にでも逃亡しようかと考えたのは僕である。すっかり忘れていたが、年賀状を一枚も書いていなかった。仕事納めの日まで指折り数えてみると、たったの6日。いつも廻っている書店さん約200件近く…書ききれるのだろうか。
 今後の予定を考えてみると、このままではどうしても不可能な気がしてきて、年賀状のために出社するなんて恐ろしいことを想像してしまう。うーん、それだけは勘弁して欲しい。

 去年までは毎年手書きで書いていた宛名を、泣く泣くプリントアウトしたラベルにする。こんなんじゃ気持ちも何もあったもんじゃないなと反省するが、忘れた頃に届く年賀状より良いか…。その分は裏面で取り返そうと、思い思いのメッセージを書き込む。

 この時期になると毎年思うこと。
 ペン字の○子ちゃんに通っておけばと後悔する。
 とにかく僕は字が下手で、まだ下手なりの良さというものがでるような味のある字が書ければいい。けれど僕の字は、まさに小学生のようなただ単に汚い字なんだ。今年はペンよりも筆の方がいくらか誤魔化せるのではないかと思い、筆ペンで書くことを選択。

 弘法は筆の誤りだけど、ヘタクソは何を選んでも誤り。

12月18日(月)

 搬入したばかりの『おすすめ文庫王国』が鋭い売れ行き。担当の金子が不眠不休で編集したかいがあったというもの。
 早速まとまった注文が入ったので直納へ。年末のこの時期は、取次店さんを通しての搬入だと年内に書店さんへ届くのか不安なため、極力持っていける範囲は自分の足で運ぶ。本日は横浜方面へ直納も兼ねて営業。

 関内のY書店本店でYさんと会う。店頭入り口平台の『このミス』のベスト展開とともに『本の雑誌1月号』と『おすすめ文庫王国』を面陳してもらっている。うれしいかぎり。年末になって単行本の売れ行きが良くなってきたことを聞く。文芸書の巻き返しなるか…。

 その後は横浜に移動し、東口Y書店Oさんへ直納。しばらくぶりの訪問にも優しく応対してもらい感謝。不思議なもんで、会えないときは、まったく会えないときが続く。ひと月に一度しか訪問することができないひとり営業マンにとって一度会えないと次は来月になってしまう。翌月も会えないと再来月…。それは営業にとっても大きな痛手であり、また、個人的にも「会いたい」と思って訪問しているのでとても淋しい。本日はやっと会えたので一安心。

 次はM書店のYさんのところに行き長話。
「この時期はどうしても毎日12時間くらい働くことになっちゃうのよね。」と言いつつも、それが愚痴にならず、仕事ならそれくらい当たり前、好きな本を売っているんだからいいんだ、という気持ちが伝わってくる。話を聞いているだけで、こちらまで元気になってしまう。

 どこの書店員さんも重労働、長時間勤務をこなしながら、接客に多大な神経をつかい、そして棚と格闘している。もっと売れる本があるんじゃないか?もっと売れる方法があるんじゃないか?もっともっと…そんな想いを胸に抱えながら仕事をしている。

 それは、この後に訪問した西口のY書店Mさんにも当てはまる。どう考えても、忙しくてどうにもならない状況のはずなのに、Mさんは笑顔で応対してくれる。今日も立て続けに各出版社の営業マンが出入りしていて、僕自身声をかけていいものか一瞬迷ってしまった。
 営業マンというのは、ある意味、書店さんの仕事の邪魔をするわけで、たかが10分としても、一日に10人の営業マンが訪れたら約2時間のロスである。もし、僕が訪問したせいで残業ということになってしまうようなら……と考えてしまうことが良くあって、でも、それを言っていたら僕の仕事は何もできないことになってしまう。なるべく状況を判断して営業しようと心がけている、が、久しぶりにお会いした喜びで、思わず話し込んでしまった…。

 横浜の地下街を出たら、クリスマス・イルミネーションが夕暮れの街並みに輝いていた。デパートの前には、多くの人が交錯していて、その足取りは浮き足立っているように見えた。

 僕は、ぼんやりと点滅する明かりを眺めながら、今一番僕にとって大切な物は、何だろうと考えていた。そして思いついたのは、これは一方的な想いだけれど、無意識のうちにいろんなことを教えてくれるYさんやMさんのような書店さんとのつながり。そしてもうひとつは、自分のことのように僕のことを考えてくれる仲間達。結局そんな人間関係が一番大切なんじゃないかと思った。

 僕も誰かにとって少しでも役立てる魅力的な人間になりたいと強く願った。

12月17日(日)

 「炎のサッカー日誌 その10」

 サッカーファンにとって夢見る年末年始。
 天皇杯で応援しているチームが勝ち続け、元旦に国立競技場で決勝戦を観戦する。あわよくば、その決勝戦で優勝し、聖地浦和に戻って大騒ぎ。うーん、夢だ…。
 とにかく優勝なんてしなくても、一日でも多く、サッカーを楽しみたい。天皇杯が終わると、翌年のJ開幕まで僕はどうやって生きていけばいいんだろう…なんて考えてしまう。サッカーがない暮らしはつらすぎる。

 さて、我が浦和レッズは、J1昇格を決めた2000年、天皇杯4回戦まで勝ち進み、ホーム駒場競技場にセレッソ大阪を迎えた。来年から同じ土俵にあがるJ1チームとの戦いに想いを馳せる。勝ちたい、とにかく勝ち続け、元旦を国立競技場で迎えたい。

 もちろん僕も、浦和レッズが鹿島や磐田なんていう強豪チームと差があることは知ってるし、今は全J1チームが浦和より上ということも理解している。それでも、トーナメント戦は何が起きるかわからないし、サッカーは番狂わせがあるから面白い。何かを期待せずにいられるものか。

 1時キックオフ。
 ……。
 そして、THE END。

 ああ、この試合、なかったことにしてくれないか。
 ヘボヘボレッズは、笑ってしまうくらいヘボヘボで、GK、DF、MF、FW全部ダメ。おまけに目を覆うような自殺点つき。こんなチームに期待していた自分が情けない。負けっぷりが凄すぎると、笑えることを初めて知った。後半は、もう笑いっぱなし。来年への夢も期待もぶっとんだ。

 それでもやめられないのが、レッズファン。
 さあ、来年も駒場に通うぞ。

12月15日(金)

 本の雑誌・行方不明事件勃発!

 夕方、引越作業をしていた、助っ人5名と営業事務の浜田は車で倉庫へ向かった。本の雑誌社の倉庫は、会社から徒歩7分、車で3分といったとても近い距離にある。総勢6名が「海を見にいく号」に乗り込み意気揚々と出発。まあ、引越でそんなに張り切る必要はないんだけど…。

 10分ほどして社内に残っていた助っ人宇津野さんが、
「あのー、みなさんはどちらに行かれたんですか?」と聞いてくる。
「あっ、車に乗って倉庫に行ったよ、もし仕事がないなら手伝いに行けば。」と答えると何だか納得いかない顔をして僕を見つめる。
「どうしたの?」
「あのー、私が倉庫の鍵を持っているんですけど…。」

 えっ、じゃあ、みんなで倉庫に行っても入れないんじゃないか、あいつらはほんとにバカだなんてことを言いつつ、鍵を持っている宇津野さんにすぐさま倉庫へ行かせる。

 しばらくすると、その宇津野さんが、浮かない顔をして会社に戻って来た。てっきり怒られたのかと思い、話を聞いてみると
「違うんです、皆さんいないんです、倉庫に…。」
「えっ?じゃあ、どこに行ったの?」
「わかりません、それは私が聞きたいんですけど。」

 すでにみんなが倉庫へ向かって30分が過ぎていた。

 事の顛末を聞いていたデスクの浜本が、
「事故じゃないだろう…、事故だったらすぐ電話が入るよ。それに事故を起こすって距離でもないし、大丈夫だよ。」
と心配する。
 浜本さんがこんなに優しいとは想いもしなかった。
 ほんとはいい人なんだ…。

 あんまり優しくない…というか、みんなの人間性を疑っている僕は、
「どうせアレです。腹でも減って何か食っているんですよ、『あっ!おでん屋だ、僕おでんが食べたい』なんて言い合って、一杯やっているんですよ、きっと。」
と笑いながら言ってみたが、僕の人間性が疑われることになった。

 そんなことを言い合っているうちにすでに45分が過ぎていた。携帯電話に連絡を入れようと、片っ端から電話してみるが、社内で着信メロディーが鳴り響く。うーん。

 心配する以外何もできない僕たちは、2階の窓から外を眺めていた。ワゴン車が通る度に「あっ!帰った来たぞ」と目を凝らしてみたが、どれも違った。まさかこの世に神隠しがあるなんて考えられない。みんなどこへ消えてしまったんだ?集団誘拐と言われても身代金を払えるほど大きい会社じゃないし…。

 窓に張り付いたまま、1時間が過ぎた。向こうの方から頼りなげに一台のワゴン車がやってくる。その頃にはすでに僕らも、疲れ切っていたので、誰も反応しなかった。

 ボロボロのワゴン車が会社の前で止まる。
 営業事務の浜田が飛び出してきて、涙目で叫んだ。
「道に迷っちゃったんです、高速とか環七とか走って、やっと戻ってきたんです。どうなるかと…。」
 気の弱い浜田は、ほとんど泣いていた。

 とにかくみんなが無事に帰ってきたことに安心し、優しい浜本さんはホッとしてお茶を入れている。
「良かったねえ…。」なんて口々に言い合い、運転していた川合くんは、「すみませんでした。」と深く頭を下げた。

 こんなことで、人間性を疑われた僕は、何だか納得がいなかい。
「どうして、たった3分の倉庫で、道に迷うんだ!」と言いたかったが、また人間性を疑われそうなので、そっと帰る。

 まあ、良かったんだ、無事で。

12月14日(木)

 通常よりも30分早く出社。

 なぜかというと、本日発売『週刊文春』12月21日号の「文春図書館」で新刊『総天然色の夢』が取り上げられたため。昨夜このことを知ったのだが、直納用の社内在庫が気になり、早めに手配がしたかったから、早朝出社。
 トップページ、それも嵐山さんの書評。うーん、とにかくうれしい。
 到着後、すぐさまチェックし、倉庫へ連絡。

 早速注文のあった神保町T書店さん分を2Fの倉庫で用意。
 いざ直納!と勢いよくドアを開けたら、いきなり向こう側に目黒さんが立っていてビックリ!!目黒さんも、誰もいないはずの倉庫に僕がいたのでビックリ。人間もネコと同様、心底驚いたときには髪の毛が逆立つのか…と思いきや単なる寝ぐせだった。

 「いやー驚いた…。」とつぶらな瞳をまん丸くした目黒さんは、倉庫のなかへ。いったいこんな朝早くから何の用なんだろう?と気にして見ていると
「あれ?電子レンジは1Fに持っていったんだっけ?」と聞いてくる。
 なんだ朝メシか…。
 目黒さんの場合は、何メシになるのかちょっと気になる。もしや5食目なんてことはないだろうなあとちょっと心配になるが、最近どこか吹っ切れてしまったようで、一時期凝っていたダイエットなんてどこへやら。人間あきらめたら終わり。

 その後は神保町へ移動し、2時には会社へ戻りウェブの打ち合わせ。この日誌もそうだけど、ウェブをやりだしたらいきなり仕事が増えた。普通の営業マンに戻りたい。

12月13日(水)

 遅れ気味だった書店さん向けDM『本の雑誌通信』12月号を作る。
 前にも書いたが、このDMを作るのは一種の楽しみで、いつもどんなことを書こうかな…と考えている。しかし、作るとなるとまとまった時間が必要となり、営業のかたわらだとなかなか難しい。

 そんな僕の都合に関係なく、営業事務の浜田から「まだか?まだか?」と催促されるのはつらい。わかっちゃいるけどできないもんもあるんだよ、と心のなかでつぶやくが、今月はさすがに遅れすぎ…。

 出来上がり1時の約束が、3時になってしまったが、どうにか決着をつける。「やる時はやるんだかんな!」と威張りつつも、今号は、あわてて作ったため面白味にかける…と反省。

 飛び出すように営業へ。
 やっぱり外は楽しい。

12月12日(火)

 『おすすめ文庫王国』の見本出しのため、朝から取次店を廻る。その後は営業。

 夕方会社に戻り、デスクワークをしていると、「海を見にいく号」(小社の自動車の愛称)で倉庫へでかけていた川合くんが戻り「杉江さん、車の車庫入れお願いします。」といわれる。

 おいおい、今度は車庫入れ係りか?と思いつつも、まあ、川合くんはペーパードライバーだし、本の雑誌社の駐車場はちょっと停めずらいし、仕方ないなあと腰を上げる。

 久しぶりに「海を見にいく号」の運転席へ乗り込む。なぜかギャラリーが増えていて、助っ人の川合、辻、吉田、それに営業事務の浜田やデスクの浜本まで加わっている。なんで車を駐車するだけでこんなに人が集まって来るんだ? 妙に緊張させられる。

 ミラーで車の位置と方向を確認しつつ、アクセルとブレーキを交互に踏んで調整。気合い一発!ビッシと駐車が決まる。実は僕、車の運転は前に進むよりも後ろに進む方が得意なのだ。きっとへそまがりだからだろう。

 するといきなり拍手喝采。ギャラリーの面々に
「すっごーい、杉江さん!!」
「うまいっすねえ。」
「カッコ良い~、見直しちゃった。」
と誉め讃えられる。

 本の雑誌社に入社して約3年。初めてみんなから誉められた。それにしても仕事じゃないところがいささか悲しい。
 まあ、これでやっと履歴書の特技を埋められるようになったというもの。

12月11日(月)

 『本の雑誌』2001年1月特大号の搬入日。今月は通常号よりもページが多く、ひと結束30部がずしりとくる。寒空の下、汗をかきながら、助っ人学生に混じり社内に運び込む。

 午後から営業に出かける。
 田町のT書店で、海外サッカー通のKさんからスカパーを薦められる。
「いいよー、スカパーは。朝から夜までずーっとサッカーをやってるんだよー。セリエAもプレミアリーグもワールドカップ予選もみんなやってるよ。中田はもちろん、ルイコスタも見られるんだよ。雑誌じゃ動かないでしょう。(笑)」
「……。」

 話を聞いているだけで、すでにパブロフの犬。
「ナカタ…(だら~)」
「ルイ・コスタ…(だらだら~)」
「パルマ…(ズーーー)」
「2002年ワールドカップ(だらだらだら~~)」

 Kさん勘弁して下さい…。ヨダレならまだしも失禁はさすがにまずい。

 実は、僕も前からスカパーを契約するかどうか、ずーっと悩んでいる。サッカーバカにはたまらないのは、わかっている。それに僕だってレッズだけでなく、海外の魅力的なサッカーを見たい…。

 でも、なぜ、いまだに契約をしていないかというと、問題なのは視聴料や契約料といったお金の問題ではなく、実は、自分が怖い。大きな声じゃ言えないけれど、ってここで書けば大きな声になるのか…。僕は、レッズの試合があるとき、仕事そっちのけで消えてしまうような人間なのだ。そんなサッカーバカ社会不適格者が、スカパーを手に入れてしまった場合、果たして会社に行くことが出来るのだろうか?僕には会社に通う姿よりも、一日中テレビの前にしがみついて、タオルをくわえている姿の方が、現実感がある。
 しかし、それはさすがにまずい。わかっちゃいるけど、まともでいられる自信はない。

 Kさんの悪魔の呟きで僕の心は、デビルスギエの方に揺れだした。うーん、困った。

 目黒さんは、もし毎日中央競馬が開催されていた場合、仕事をしていく自信があるのか聞いてみたい気がする。どうですか?目黒さん。

12月8日(金)

 午後から取次店K社と地方小出版流通センターを廻る。今までK社に用事があるときは、後楽園にあった営業所を訪れていたのだが、なんと電話で確認したところ閉鎖したとのことでビックリ。あわてて、本社のある志村坂上へ移動。スモッグに包まれた国道沿いを歩き、鼻の中が真っ黒に。石原都知事のディーゼルエンジン規制に思わず賛成したくなる。

 夜は、3年前に辞めた会社の先輩の忘年会に参加。

 元同僚や元先輩、あるいは元上司に囲まれ何となく不思議な感じ。まあ、辞めた会社とはいえ、いまだにことあるごとに飲み会に呼ばれているため、それほど抵抗もない。

 問題なのは、「杉江がいなくなって会社が面白くなくてさ。」とは言われるものの「杉江がいなくなって、仕事が大変になったよ。」とは一度も言われないこと。それよりもひどいのは、営業事務のKさんに「杉江くんがいなくなったら物がなくならなくなったのよ。」の一言。僕はドロボーか?

 帰りの電車のなかで、尊敬しているY先輩に、ここ最近の仕事の悩みを相談する。

 話を聞き終えたY先輩は
「みんな一緒だよ。自分が思っているより、会社はどんどんいろんなことを要求してくるんだよ。それを失敗しながらでも乗り越えていかないとさ。オレだって、自信があるわけじゃないんだよ。もうハッタリもいいとこ。でもハッタリでもいいから、一生懸命やらなきゃダメだよ。一生懸命考えて、仕事をしていけば、ちょっとずつでも進歩していくって。辞めた人間って言っても、杉江が頑張っているの、みんな見てるんだよ。みんなそれに負けないように…って思いながら、オレ達はこの会社を辞めないで頑張ってるんだよ。」と言われる。

 励まされた夜だった。

12月7日(木)

 千葉方面を営業。

 ご無沙汰の訪問、新松戸のS書店、T店長とお話。
「ほんと欲しい本が手に入らないよねぇ。いつまで経ってもこの業界は変わらないや。」とあきらめ顔で話す。S書店さんは新松戸駅前の路面店。1フロアでなかなかの広さだが、やっぱり仕入に苦労している。

 書店さんの話す問題点は、実は『本の雑誌』が創刊された25年前とほとんど変わらない。
 この間から、僕は『本の雑誌』のバックナンバーを読み直しているが、書店さんのため息の質は一緒。本が入らない、入荷が遅いなどなど。取次店さんも出版社も努力はしているとはいうものの、目に見える変化はほとんどない。それよりもこの不況で各書籍、雑誌の刷り部数が落ちているため、一段とひどくなっているのかもしれない。
 この欄を読んでいる方々が想像する大型書店と思われる書店さんでも、やはり思い通りに本が手にはいるわけではない。例え注文分が入荷したとしても、減数、調整出荷なんていうのは当たり前。うーん、どうしたらいいんだろう…。

 S書店さんは、数年前から、新刊を追うことに限界を感じ、バーゲン本に力を入れている。特設としてのフェア展開ではなく、常設棚を10本ほど設置。2ヶ月に1度くらい新たなバーゲン本を仕入れているようだ。
 T店長に話を聞いてみると、バーゲン本の売れ方というのは、通常の書籍とだいぶ違う傾向がでるらしい。小説やエッセイなんてものは弱く、料理や絵本、美術書や趣味の本が売れるとのこと。「書道や陶芸の高額本が売れていくんだよね、ビックリしちゃうよ。」とのことで、新本との違いを考え、ラインナップを決めるのが難しいそうだ。

 ここでひとつの疑問。
 新本では売れず、バーゲン本なら売れる。これってもしかすると、出版社の定価付けに問題があるということなのか?もちろん刷り部数や原価計算はあるけれど、読者が「この値段なら買う」といものを意識していないということになるのか…。バーゲン本に放出されるということは、過在庫ということだよなあ。それならもっと売れる値段にして……。
 いや…、ちょっと待てよ、読者というのは安ければ安いほど良いんだよな…。うーん。

 今さらながら根本的なことに蹴躓いてしまった営業マン。たまには頭を使おう…。

12月6日(水)

 やっぱり会社にいるとろくなことがない…というのが昨日わかったので、今日は朝から直行。
 『おすすめ文庫王国』の事前注文短冊を持って、取次店さんを廻る。まずは、飯田橋のT社とO社。飯田橋とは言ってもこの2社は駅から遠く、夏や冬には営業マンにとってつらい道のりとなる。今日も首都高速の下を吹き抜ける寒風に身もだえする。

 T社で用件を済ませ、O社へ移動。
 O社の入り口には、いつもおばちゃんが座っていて、気持ちよい挨拶をしてくれる。

「いらっしゃいませ。」

 この一言だけで、とても良い気分になれる。よく大きな会社には作り笑いの受付嬢なんていうのがいるけれど、いくら若かろうが、心のこもった挨拶には叶わない。僕はこのおばちゃんの大ファンだ。いつまでも元気に受付をして欲しいもんだ。
 そのおばちゃんが象徴するように取次店O社はとても良い雰囲気。大手取次店は、何となくシステマティックな感じがするけれど、ここO社はアットホームというか、「何でもやりまっせ!」的な雰囲気が漂っていて、社員全体にしっかりと血が通っているような気がする。仕入担当者の方と話しているだけで、何だかこっちまで「何でもやりまっせ!」と言ってしまいそうになる。いやはやそれは、さすがにまずい。

 今日も仕入の元気なAさんと話をしていたら
「杉江さんに会わせたい人がいるんですよ!」と勢い込んで言われ驚く。いったいどんな仕事の展開になるのかと思ったが、
「実はいるんですよ、うちにも…。レッズファンが…。」

 思わず転げ落ちそうになってしまったけれど、何だか最近こんなことが多いなあ。まあ、それはそれですごいうれしいんだけど。今日はそのレッズファンの方が不在だったため、次回お会いする約束だけしてO社を後にする。『出版業界レッズ会』なんていうのができたら面白いな…とちょっとだけ考える。

 飯田橋駅に戻るとちょうどお昼だったので、深夜プラス1の浅沼さんを誘って昼食。浅沼さんお薦めのステーキ屋へ連れていってもらう。

 僕は前から、昼飯に寿司やウナギやステーキを食えるようになったら、いっぱしのサラリーマンになった証拠だと思っていた。昼間から高価でエネルギッシュな物を食うなんてなんかすごく働いているような気がするではないか。おまけにビールでもついたらもう管理職間違いなし。

 今日はとりあえずステーキだけだけど、立派な「サラリーマン記念日」。1Fはカウンターだけの不思議なステーキ屋だったけれど、浅沼さん曰く「夜は超高級店」になるらしい。昼間のサービスランチ1280円也。めちゃくちゃうまくてボーリュームも満点。たまらない…。

 『IN☆POCKET11月号』(講談社)の写真通り浅沼さんは、ここ最近ちょっと太り気味。こんなうまいもんを昼から食っているからだろうと妙に納得。こういう食生活をしていると、某社発行人Mみたいになってしまいますよと脅す。かなり効いた様子。

 午後は御茶ノ水のN社に移動し、そのまま営業へ。夕暮れという時間があまりに短く、あっけなく夜になってしまうことに季節を感じる。何だか気ぜわしく営業。

12月5日(火)

 先週に引き続き、社内引っ越し作業第2日目。

 本日は編集部の大移動。僕は自分の場所をとりあえず確保しているので関係ないが、ちょっとした隙を見せると、机ごと捨てられてしまいそうなので、社内に残り見張りをする。セコセコと『増刊 おすすめ文庫王国』の〆作業。

 昼過ぎにバイトにやってきた川合くんは、珍しく会社にいる僕を見つけて
「あれ?今日は杉江さん、会社にいるんですか?」と聞いてくる。
「そうそう、デスクワークがあるから、今日は社内にいるんだよ。」と答えると
「へえ…、だったらそれが終わったら机を運ぶの手伝って下さい!」と言われる。
おいおい、何が「へえー」だ。ついに助っ人にもつかわれる立場になってしまったのか…。オレも仕事をしているんだよ、川合くん!!チクショー。

 そのまま黙って〆作業をしていたけれど、あまりに社内がうるさく集中できない。予定していた机の配置場所が、どうも思っていた広さと違っているようで、ケンケンガクガクの大騒ぎ。それを右にずらせ!だとかもっと前に持ってこいだとか、もう大変。あまりにうるさいので、僕は逃げるようにして、笹塚K書店さんへ営業に出かける。

 しばらくして戻ってみると、どうにか机の位置は決まったようで、ひと安心。あとは、それぞれの荷物や資料を移動すればいいのかな?なんて考えていたら、部屋を見渡していた編集の金子が、
「何だか野暮ったいんだよなあ…、営業部がさあ。」と言い出す。ウロウロと狭い営業部を見て回り、突然思いついたように
「スギエッチの机がいけないんじゃない!その机に貼ってあるメモとか、短冊がカッコ悪いんだよ。なんか会社っぽくなっちゃうんだよね。」と指摘してくる。

 そう言われても、ここは会社だし、野暮ったかろうと、カッコ悪かろうと、実務がやりやすければそれでいいんだ。メモだって短冊だって必要だから貼ってあるんだよ、と言い返そうかと思ったが、あまりにみんな目がイッテいる状況だったのでそのまま黙る。
 そう言われると僕だけ美的センスがないような感じがしてきて、みんなの机を見て回ることに。確かに僕の机は野暮ったい。頭にきたので机の大掃除を始めた。

 引き出しを開けていらない物を捨て、机の上を整理していると、今度はマックの前に座ってウェブを覗いていたデスクの浜本が、
「炎の日誌を読んでると、杉江だけやたらに働いているように見えるんだよなあ。なんかなあ…。」と言い出す。
それに同調するように、助っ人川合くんが
「アレはズルイですよねぇ。なんか杉江さんやたら良い人じゃないですか、ほんとは僕の牛舌を盗み食いするような人なのに、ちゃんと真実を書かなきゃダメですよ!」
と後追いする。

 ウォーーーーー!!

 どうしてこの会社の人達は、僕をほっといてくれないんだ…。次から次へと余計なことを言い出して、ああでもない、こうでもないなんて、勝手なことを言ってばかり。
 確かに僕は日誌に仕事のことを書いているけれど、それは全部ほんとの話。こんなところにウソを書いても仕方ないでしょ、浜本さん。僕はちゃんと働いているんですよ。レッズのない日は…ですけどね。

 それに川合くん、僕は確かに川合くんの牛舌を食ったけれど、焼き網の上に乗っている肉が、誰の肉かなんてわからないよ。「僕が焼いていたんです」なんて突然真顔で言われてもさあ。それにあの後、キレイに焼けたレバーをあげたじゃないか。それで一件落着だったんじゃないのか?そんな話を持ち出さないように。

 もう僕の頭のなかも爆発寸前のところで、とどめの一発。

 机をいじっていた営業事務の浜田が突然
「あっ、杉江さんゴメン!」と金切り声を上げる。
えっ、何?オレの机でもぶっこわしたのかと思いきや
「えーっと、T出版社のIさんから電話があったのを伝え忘れてました。」
それなら別に今から電話すればいいんでしょ?と受話器を持ち上げたら
「今日じゃないんです。」
「えっ、昨日のこと?」
「いえ……。」
「じゃあ、いつなの?」
「先週の……、木曜日なんですけど。」

 おいおい、もう5日も経ってるよ、勘弁してくれよ。
 あぁ、会社にいるとろくなことがないなぁ…。
 とっとと帰ろう。

12月4日(月)

 『おすすめ文庫王国』の事前注文の〆切前日なので、まだ注文の取れていない書店さんを駆け足で廻る。東京駅のY書店さんに行ったついでに、先週、東京駅構内にオープンしたF書店を見に行く。

 少し前まで、お店の立地というのは、駅前が一番だと言われていたが、今ではJRや電鉄系の多角経営が進み、駅前よりもその駅の中が一番になってしまった。F書店は、都内だと上野、赤羽、品川駅などのコンコースに出店しているが、どのお店もすごい売上。坪数でいくとたいした広さはないけれど、やはり人の流れのど真ん中にあるため、各出版社の文庫売上ランキングでは、全国10位以内を誇っているお店もある。もちろん雑誌や単行本もすごい売れ行き。おまけにこの駅中書店は商圏がとても広く(その駅を利用しているすべての人がお客さんになるため)、上野駅にオープンしたときには、大宮や柏あたりの書店さんにまで影響が出てしまったようだ。

 東京駅のF店は、これが書店なのかと思うほどキレイにレイアウトされていて、チケットぴあまで設置されていた。おまけに書店の前がカフェになっていて、なかなか良い雰囲気。気になる点は、南口と中央口の間というちょっと中途半端な場所にあることだけ。まあ、それでも新幹線改札口の正面だからお客さんは入るのか…。

 どっちにしろ、本の雑誌は置いていないのでどうでもいい…と投げやりになりつつ移動。

 渋谷のP書店さんに行くと、いつも通り、とんでもない本が売れ行きベスト1になっていて思わずニンマリ。『ばばかよの幸せのヒント集 第2巻』(集英社)。こんな本が1位になっている書店さんは、きっと全国でここだけだと思う。また、3位の岳本野ばら『ミシン』(小学館)もかなり異質。やっぱりP書店は、面白い。

 地域ごとに傾向が出るのはお店の面白さであり、上で紹介した本を他店に持っていっても売れなかったりする。僕の経験でいくと、渋谷の売れ方に対応できる地域は、新宿と吉祥寺で、それ以外の場所だとちょっと難しい。また、逆に言うと銀座で売れているような本を、渋谷に持っていってもなかなか売れない。この地域差に、お店の個性や雰囲気が入り交じるので、またまた面白い。

 それに、渋谷と一口で言っても、やっぱり一番とんでいるのが、このP書店でそれに続いているのが、B書店。逆に客層が渋いのが、A書店やT書店。反対側に渡ったY書店なんかだとまたまた変わってくる。

 これだから出版営業はやめられない。お店の特徴を考え出すと奥が深くて面白いことこの上ない。

 P書店のY店長とそのあたりのことを話しつつ、
「Yさん、よくこんな新しい本がわかりますね?どうやって情報を仕入れているんですか?」と聞いてみたら
「いや、やっぱりわからないのよ、はっきりしたことは。ただ、何となく、新刊のチラシとか、本そのものを見た瞬間に、ピピッと来るのよね。外れることもあるけどさあ。」

 Y店長に限らず、どこの書店員さんも、それぞれアンテナを張っている。新刊チラシや本の装丁を見た瞬間に「コレは!」と思うものがあるようだ。それが、そのお店の、その担当者の、個性となり、面白い棚を作っているのだと思う。そのピピ本が売れていたりするから、書店さんのアンテナ力はすごい!世間はITなんてやたらにもてはやしているけれど、やっぱり経験に基づいたアナログな人間も素晴らしい!

 どこへ行っても同じ本ばかり並んでいるなあ…と思う方は、是非、渋谷のP書店さんを覗いてみて欲しい。個性豊かな新しい本に出会えると思う。まあ、その並んでいる本が気にいるかどうかは難しいところだけれど…。

12月2日(土)

 浮き玉△ベースボール首都圏リーグに参加。僕は、何だかよくわからないうちに編集長の椎名誠に引きずり込まれ、池林房の太田篤哉監督率いる「新宿ガブリ団」に所属している。僕はあんまり力がないので、2番あたりをセコセコ打っていた。

 ところが、どうせやるなら僕も知り合いを引きずり込んでやろうと、友達やら助っ人の学生やらを一緒に入団させていたら、なんと自分が控え選手になってしまった…。
 チキショーと思いつつ、スタメン復帰を夢見、こっそりバットを購入し、夜な夜な素振りをしているのだ。いつか見ていろ、篤哉監督よ…と思いつつも、こんなあやしい野球に夢中になっている自分が笑える。笑えるけれどやっぱり悔しい…。

 今日も半分くらい試合に出つつ、ベンチでビールを煽る。浮き玉野球の良さは、試合中だろうが、どんなときでも、とにかく酒を飲めるということだ。首都圏リーグの理事でもあるイシケンさんなんて、朝の集合時点でかなり酔っぱらっている。イシケンさんが引いたラインは、かなりグネグネと曲がっているのを僕は知っている。そこら辺のいい加減さも浮き玉の良さだと思う。

 いい加減とは言いつつも試合になれば、やっぱりムキになり、勝ち負けはもちろん、1本のヒット、ひとつのファインプレーなんていうのにアツくなる。酔っぱらいつつも、やる時はやるんだからな!といった感じである。そこがまた面白い。

 今日もかなりアツくなり、結局我が新宿ガブリ団は、3勝1分けの好成績。今回で2000年の首都圏リーグも終わり、最終的な順位が気になるところ。来年こそは、スタメンに復帰してやろう…。

12月1日(金)

 社内の引っ越し作業が大々的に始まる。引っ越しというよりは、席替えか…。

 引越作業班に
「オレは会社にいることなんて、ほとんどないからどうでもいいよ。」と言っていたら、席の配置図から僕の席がなくなっていてビックリ!
 おいおい、どうでもいいというのは、どこでもいいというだけで、席がいらないというわけじゃないんだよ。あれ?もしかしてクビってことか…。
 ちょっとこのままだと洒落にならないことになりそうなので、あわてて、自分の場所を確保する。机を引きずり約50センチほど移動し、向きを変える。それだけで、会社の雰囲気が一気に変わる。不思議なもんだ。

 しばらく移動した場所に座っていたけれど、何だか妙に落ち着かない。とっとと営業にでかけることにした。やっぱり机はいらないみたい…。

 『おすすめ文庫王国』の事前注文の〆切が近づいているため、駆け足で横浜方面を営業。川崎、横浜、関内と移動。あわてているため、じっくり担当者と話すことができずに虚しい営業になる。こういう営業はやっぱり良くないなあ…と反省しつつ、夜は助っ人の横溝くんと新宿で待ち合わせし、池林房へ。太田篤哉監督と明日の浮き玉について作戦会議。

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