WEB本の雑誌

12月25日(月)

 同業他社にいるAさんは、小・中学校時代の同窓生。数年前にばったり出くわしたときは、心底驚いて、「何でお前がこんなところにいるんだ?」と思わず声をかけてしまった。もちろん驚いたのはAさんも一緒で
「杉江くんが、どうしてスーツを着ているの?」と言われた。驚くところが違うと思うんだけど、お互い昔のイメージがあるから仕方ない。

 約10年ぶりの再会以来、たまに飲みに行ったり、僕がAさんの会社を訪れたときに無駄話をするような関係が続いている。

 今日もAさんの会社に行ったので、年末の挨拶がてら、話をしていこうと考えていた。用事を済ませ、Aさんのいるセクションに近づいていくと、席には不在で、ああ、残念と思いつつ、辺りを見渡してみる。すると柱の影に立っているAさんを見つけた。

 そのまま歩み寄っていこうかと思ったが、ふっと足が止まる。
 Aさんは泣いているように見えた。

 まさか…と思いつつ、目を凝らしてみると確かに泣いていた。柱の影に身体を寄せて、肩を上下に揺らし、ハンカチを顔にあてている。
 Aさんが泣いているのを初めて見た。

 いきなり泣いている人を見たらどう思うだろうか。僕は、例え昔の知り合いだとしても、ちょっと声をかけるのは、悪いような気がした。仕事上の躓きかもしれないし、それこそ今日はクリスマスだから、何かがあったのかもしれない。お互い学校で笑いあっていたときから、すでに10年以上の時間が過ぎていて、その間に過ごした時間はまったく共有していないのだ。そんな相手の心のなかに土足で踏み込むようなことは出来ないと思った。見なかったことにしようと、僕はそのままAさんに声をかけず会社をあとにした。

 しかし、駅へ向かう道すがら、僕は思わず立ち止まってしまう。
 自分のなかで、何か面倒だな…という想いはなかった。余計なことにクビを突っ込んで、振り回されるのがイヤなだけだったんじゃないか。大人のふりをして放っておく優しさなんて、結局自分に対する言い訳なんじゃなかったか。昔の知り合いなんだからこそ、何か力になってあげられることもあったんじゃないか。

 そんなことをひとつずつ考え込んでしまった。
 いったいどうすべきだったのか、僕にはわからない。