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8月31日(火)

 もう『ハリポタ』のネタを書きたくないのだけれど、ほんとどこに行っても『ハリポタ』の話題になってしまう。4巻のときはここまで書店さんが熱くなかった気がするのだが、あのときは確か名古屋に出張に行っていたのだ。

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 とある、『ハリーポッター』の事前予約獲得に熱心だった書店さんを訪問し「結局、予約どれくらい集まったんですか?」と聞き、その答えに腰を抜かしてしまった。

「1300部~!!」

 1300部なんていったら、あなた。下手したら今日の出版不況下、日本全国の初回配本がそれくらいの本は山のようにあるんじゃないですか? ついカバンに入っている電卓を取り出して叩いてしまったが、その予約だけで約550万円の売上。2割が取り分だとしても100万円。そうか定価4200円(税込)だと2割でも840円になるのか。ならば街頭販売でもなんでもして、1冊でも多く売りたくなるのがよくわかる。そのために人を雇ったって、すぐ時給が稼げるってもんだ。いやはや「もう本じゃないすね」としか言えない、負け犬版元営業マンは、ただただ、顔埋め泣くしかない。うう、かなし。 

 ちなみにこのお店では、明日は午前5時から販売するそうで、店長さんは電車の動いていない早朝4時に車で家を出、他のスタッフを迎えに行くとか。8月中旬から毎日事前予約のお客さんに電話をしたり、この日も袋づめで大わらわだったりして、かなり疲労の色が滲み出ていたが、約2年の努力が、明日の記録的な売上につながるのだから、さぞビールがうまいことだろう。

「何もしなくても売れる。しかし何かすればもっと売れる」
 
 良い勉強をさせてもらいました。

8月30日(月)


 当然のことながら声が出ない。声が出ないと仕事にならない。でも『翻訳文学ブックカフェ』と『犬は本より電信柱が好き』の営業が佳境を迎えているため、営業に出ないわけにはいかない。

 ハリーの話題で持ちきりの9月だが、何も柱はハリーだけでなく、神様仏様村上春樹様の書き下ろし『アフターダーク』も発売になるし、朝日新聞が気合いを入れて売りに出ているクリントンもあるし、マガジンハウスの新雑誌『BOAO』だってあるのだ。本日廻った銀座エリアではこれに『Hanako』の銀座特集もあるそうで、いやはやバックヤードは大変なことになりそう。

 おまけに9月は、年末のランキングを狙ったミステリー系の新刊がたくさん出るし、9月決算の出版社も多いから、売上を立てるための新刊もはき出される。

 正直、書店さんに届けられて1週間、いや店頭に一度も並ぶことなく即返品になる本をあるだろう。だからこそ、他の時期にずらせば良いのにと思うけれど、小社だって2点あるわけで、いやはや、どうもスミマセンと謝りつつの、営業が続く。

8月29日(日) 炎のサッカー日誌 2004.07

 2ndステージが始まって、ヴィセル神戸、東京ヴェルディと破って2連勝。そして本日の敵は憎きジュビロ。そろそろ王者という文字が薄れてきたとはいえ、そうは簡単に勝たせてくれる相手ではないだろう。しかし2ステージ制のJ1では、たった15試合しかなく、勝利で得られる勝ち点3はとても大きな意味を持つ。だから本日も当然、勝たなければならない。そう、優勝するために。

 さいたまスタジアムの試合では、試合開始寸前の、控え室から出てきて、選手がスタンドの下の、えーっとあそこはなんていうんだ? たまりとでも言えばいいのか? とにかく入場する前に互いのチームが集合するところが、オーロラビジョンで映される。僕はその映像がとっても好きだ。

 それぞれ面識のある選手同士が握手を交わし、互いの健闘を約束しあう。時には談笑しているシーンも映ったりするが、地元が一緒だったりすれば仲も良かったりするのだろう。しかしそれもピッチに入るまでの話で、白線に囲まれたラインの中に入ったら敵以外の何者でもない。そこにはスポーツが持つ、独特な世界が描かれていると思うのだ。

 この日、その映像が映っているとき、浦和のゴール裏では、こんな歌が歌われ出した。
「ゴールでオレたちをアツくさせろ オーオオー ウラーワレーッズ 」

 そう、僕たちは、雨が降ろうと、風が吹こうと、ここスタジアムで熱くなりたいのだ。そして熱くなるために一番必要なのは、我らがレッズのゴールであり、そのゴールが呼ぶ勝利なのである。この声が、この歌が、あそこにいる選手たちに届いているだろうか?

 試合開始とともに、ゴール以上に僕を熱くさせたのは、レッズの選手達のディフェンス意識の高さであった。前線の永井、エメ、山瀬が、ジュビロボールになる度に、すさまじい勢いで追い込みを始める。悪いときならその追い込みが単発で終わってしまうのだが、この日のレッズは、すべての選手が糸で結ばれているように動き出す。ゴール裏上段から見ていると、その美しさに思わず鳥肌が立ってしまった。

 その美しさに見とれているうちに、山瀬→永井とボールがつながり、我らが神様、エメル尊様へボールが渡る。神よ! 祈る暇なく、エメはドリブルし、狭い角度から正確なシュートを放った。ゴール!!!!!! まさにストライカーのゴールだ。


 今度はその15分後。「ついに生まれ変わった、か?」の山田が、山田にしか理解できない天井シュートを放つと、それは漫画のようにゴールに吸い込まれてしまった。思わず笑ってしまったが、ゴールはゴール。これで2対0。ジュビロって弱くなったなぁ…なんて考えていたら、選手も気を抜いてしまったのか、前半終了間際に前田に決められ、2対1。隣で観戦している酔っぱらいオヤジは、そのゴールに気分を害し「だからダメなんだよ~」と怒鳴っていたが、確かにそのとおり、レッズの悪いくせだ。

 後半が始まると、今度は完全にジュビロのペース。それでもどうにか耐え続ける。またレッズボールになったときに、ジュビロお得意のサイドへの追い込みをかけられても、レッズの選手は焦ることなくボールを回し、前線にボールへ送る。いやはや、うまくなったもんだな。そのボールが前線にわたり、鋭いカウンターを何度も繰り出すが、この日は先週と違って決定力がない。2対1の膠着状態のなか、時計が進む。

 その膠着状態をやぶったのが、この世で一番ムカツクサッカー選手・福西である。こいつは可愛い顔して非常にお行儀が悪く、クラスにいたら一番タチの悪いタイプの生徒だろう。その福西がお得意の肘鉄を永井にぶつけ、この日は先生もとい審判がしっかり見ていて退学もとい退場処分を受ける。バンザイ!

 ところがところが、問題なのは、ひとり減ったジュビロが元気になってしまい、あっけなく西にゴールを決められてしまったこと。これで2対2の同点、残り時間は9分+ロスタイム。

 正規の時間9分があっという間に過ぎ去り、第4審判がロスタイムの表示を掲げる。そこには「4」文字。後ろで見ていたあんちゃんが「4分あるぞ、勝てるぞ~」と叫んだ。そうあきらめてはいけない!この試合に勝つか、引き分けるか、それは雲泥の差だ。勝ち点2も大事だし、今後の選手達のメンタルにも多大な影響をおよぼすだろう。祈りではなく、執念で、僕は歌い続けた。

 3分が過ぎた。
 あきらめてはいけない。
 でもダメかも…。
 
 そんな風に思ったとき、ゴールが生まれた。
 あきらめることなく、走り続けた我らが長谷部誠のドリブルから放たれたシュートが、倒れ込むゴールキーパーの上をとおり、ゴールネットを揺らしたのだ。

 その瞬間、埼スタが爆発した。
 ゴール裏はもちろん、バックスタンドも、メインスタンドも2階もが総立ちとなり、4万人の声にならない雄叫びが響き渡った。
 まさにゴールが俺たちを熱くさせた瞬間だった。

 熱くなりたくて、スタジアムに足を運ぶ。
 熱くさせてくれるものが、そこにはある。

 3対2、開幕3連勝。しかし先は長い。
 浦和レッズよ、もっともっと熱くさせてくれ!

8月27日(金)


 四ッ谷のB書店さんの訪問を終え、外に出たところで、お腹がぐーと鳴る。時計を見ると午後3時。ちょうどおやつの時間でないか。腹が減っては戦は出来ず。

 ここは四ッ谷。ならば当然「わかば」のたいやきだ。しばし歩いて横道へ入る。さすがに夏だから並びはなく、すぐに購入することが出来る。ひとりで食うのは罪なので、家族のおみやげ用に3つ、会社で目を光らせている赤鬼のためにひとつ、計5つを購入。しかしわかばのあんこタップリたいやきは、結構重い。

 会社に戻り、腹を空かした赤鬼にそっとたいやきを差し出すと、むせび泣きながら食される。何も泣く事はねぇだろ。これで君も同罪なんだぜ、浜田さんよ。

8月26日(木)


 すでにいろいろと話題になっている『ハリーポッター』第5巻であるが、初版290万部(上・下セットだからかける2か)を発売日前日とか前々日に流通上さばけるわけもなく、すでに搬入・出荷・納品と動いているようだ。本日廻った書店さんでも、すでにモノが到着しているお店が何軒があった。ただし当然販売が9月1日午前5時まで出来ない。

 で、である。
 書店さんがとっても困っているのだ。
 何に困っているのか? 置き場にだ。

 ただでさえ、ギチギチの店舗にこんなに早くから何十、何百のセットを届けられても置き場なんてあるわけないのだ。しかも出版元である静山社からは痛烈なお達しが出ていて、販売はもちろん、輸送用段ボール(ハリーポッター名入)すらお客さんの目につくところに置くなというのである。おいおい、だったらどこへしまえっていうんだ?というのが書店さんの嘆きであり、困りに困って倉庫を借りた書店さんもあった。

「なんかさ、製本所にも置いておけないし、取次にも置いておけず、書店に押しつけられた感じがするよ。だったら倉庫代も払ってくれって」

 結局、弱いところにしわ寄せがいくのは、世の常か…。
 そういえば、版元のなかにはハリーの影響で納品を絞られたところもあるらしいし、また返品も急増しているとか。いやはや、何だかこうなるとハリー効果が出版にプラスなのかどうかよくわからないな。

8月25日(水)


 昨日初訪問した啓文堂吉祥寺店は、8月初旬にオープンしたばかりのピカピカの新店だ。

 このお店。地下という立地がどうでるか?なんてことがオープン前の業界関係者で話題になっていたけれど、新店に関して業界関係者(もちろん僕も含む)の予想ほどアテにならないものはない。あそこは「絶対良い」がまったく不振であっという間に閉店になったり、「あんなところに出してどうする?」が一地域一番店になっていたりするのだから、これはもう顧問・目黒の競馬予想と一緒だ。

 さて、啓文堂吉祥寺店である。
 店内に入ってまず驚いたのがその客層である。今まで吉祥寺といえば、勝手に若い人をイメージしていたのだが、ここのお店で棚やレジに並んでいるのは、子供連れの奥さん方が中心なのだ。それはまるで埼玉や千葉のベットタウンのお店のような姿だったのだが、よく考えてみれば吉祥寺周辺は住宅地が多いわけで、ファミリー層がたくさんいるのも当然のことか。

 驚きつつ店長さんにそのことを告げると「確かに若い層ってイメージはこちらにもあったけれど、あえて一般的な品揃えにしてみたんですよ」と話されていたが、そのヨミは完全に当たったようだ。

 店内は約500坪のワンフロアーを雑誌・一般書、実用書、専門書と3つの売場に分けており、そのなかでは特に上にあるユザワヤから流れてくるお客さんを取り込んだ実用書売り場の混みようは、ちょっと尋常でなかった。それともうひとつトトロの大きなぬいぐるみが置かれた児童書もかなり売れているようだ。

 そうか、こういう層が吉祥寺にいたのか…。これはもしかすると周辺の既存店とパイを奪い合うのではなく、違う層をつかむのではないか。また、この子連れの奥さん方が、休日にお父さんを連れてきてくれたなら、きっと専門書売り場の本が売れ出し、このお店はドーンと成功するのではないか。うーん、どっちにしてもアテにならない業界関係者の予想ですが…。

8月24日(火)


 社内で昼飯を食っていたら、ガァーっという音とともにFAXが送られてきた。
 そこには「青山ブックセンター営業再開」の文字が…。
 
 約ひと月ほど前、大騒ぎの倒産劇から、新宿店はすでにブックファーストさんになりオープンされていたが、残りの店舗については、日本洋書販売(洋販)が再建支援に名乗りを上げていて、どうなるのだろうと見守っていたのだが、いやはや、良かった良かった。

 青山本店 9月29日(水)午前10時~
 六本木店    〃    午後2時~

 どちらも今まで通りの方向性で店作りをしていくようで、また広尾店は、流水書房広尾店として屋号を変え9月11日(土)に再オープンするそうだが、こちらもスタッフは元青山の人たちが中心になり、青山ブックセンターのコンセプトは受け継がれていくようだ。

 書店がこのような形で残る、なんてのはほんとに珍しいことだろう。
 それだけのお店を青山ブックセンターが作っていたことの表れだと思うけれど、今度はぜひぜひ売上というか、商売もきっちり軌道に乗せて、まだコンセプトショップが可能だということを示して欲しい。

 頑張れ! 青山ブックセンター。

8月23日(月)

 声が出ない。
 そりゃ、当然だ。こちとら、週末に7対2なんつう、5年に一度くらいの大勝利を生で見てしまったのだから…。

 朝イチで事務の浜田に「ああいう試合って面白いんですか?」なんて聞かれたが、それはきっと野球観戦の玄人が「やっぱり野球は1対0が一番面白い」なんてしたり顔で話すのを思い出して聞いてきたんだろうけれど、僕は玄人でもなんでもなく、単なるサッカーバカというかレッズバカだから、レッズがいっぱい点を取って勝てば、最高に面白いというか楽しいのだ。

 こんな楽しかったのはいつだかの国立柏戦以来で、そのときは確か7対0で勝利し、呼吸困難でブッ倒れそうになったけれど、今回のヴェルディ戦でもやっぱり呼吸困難で倒れそうになってしまいました。

 問題はこういう試合の後、レッズはいつもショボイ試合をしてしまうってことで、とにかく2NDステージ優勝のためには、次節のジュビロ戦がとっても重要だ。うう、ジュビロからも7点取っちゃったらどうしよう…って調子にノリ過ぎだ。

 調子にのると悪いことが起きるというのは大将福田の「負けないよ」発言で得た大事な教訓だから、絶対調子にのらないように。

 水道橋、秋葉原、人形町、日本橋、東京、銀座と営業するが、ほとんど担当者がお休みで会うことができず、いやはやな一日。こういう日もあるさと自分で自分を慰め「明日があるさ」を歌いながら会社に戻ると、浜本が珍しくスタバのコーヒーを飲んでいるではないか。いつもは世界の「m」マークのコーラとビックマックの男が…。

 すると助っ人の女子学生も浜本のスタバに注目したようで、「浜本さんってスタバに行けるんですか? てっきりスタバで注文が出来ないおじさんだと思ってましたよ。いるんですよねぇ、本日のコーヒーとかアイスコーヒーしか頼めなかったりして。サイズもMとかいっちゃって」ハハハハと笑う。

 そのとき浜本の顔が一瞬引きつったのを見逃さなかったけれど、その引きつりよりも自分自身の顔の引きつりがばれないようにするので精一杯であった。僕、そのスタバで頼めないおじさんなのだ。あそこで売っている物がなんなのかもわかっておらず、誰かに誘われてスタバに入ったときは、同じもので…なんて誤魔化していたのだ。

 ここでそんなことをカミングアウトしたら今後の人生、かなり辛くなることがわかっているので、一切黙ってその様子を眺めていた。浜本さん。あなたのカップの中身は何でしたか?

8月9日(月)


 本の雑誌9月号の搬入日。
 しかし病院に行ってから出社したため、体力勝負の搬入も手伝えず、スマンスマンと謝る。おまけに鰻重目黒と顔を合わすことが出来なかったのが残念無念。

 事務の浜田に様子を確認したところ「一切私たちと目を合わさないのよ。肩はがっくり落ちてるし、まったく無言だし、とてもこっちから声をかけられる状態じゃなかった」とのこと。予想通りだけれど、その予想以上のひどい成績だったのだろう。いやはやいい加減懲りればいいものを…。

 出来上がったばかりの『本の雑誌』をペラペラめくっていたところ「ミステリ特等席」でピタリと指が止まる。オオオオオ!!!!! 愛するジョージ・P・ペレケーノスの新刊が出るというではないか! しかも待ちに待ったストレンジ・シリーズの新刊だ。ううう、うれしい。もう出ないものだと思って、英語の勉強を始めようと考えたいたところだったのだ。

 いやはや飲み会やら営業中に早川書房の人を見かける度に「ペレケーノスの新刊は出ないんですかぁ」と懇願した甲斐があったというものだ。ありがとう早川書房さま。勝手に営業しますんで、今後もずっとよろしくお願いします。

8月6日(金)


 郵便物を取りに来た顧問の目黒が、いやにニヤけているではないか。
 こういうときは、よほど面白い本を見つけたときか、あるいはお馬さん関係の話だ。聞いてみたところ、本日はお馬の方らしい。

「ふふふ…。これからから、小倉に行くんだ。旅競馬は、楽しいよなぁ。それに、先週夢を見たんだよ、トンデモない金額を当てた夢。あれ、絶対、正夢になるよ、絶対だよ」

 金曜日の目黒はやたら「絶対」という言葉を使う。それが週明け月曜日になると「真面目に生きるのが一番」という言葉に変わる。理由は聞かずにいる。

 それにしても旅競馬前の目黒は、とにかく幸せそうで見ているこちらも幸せな気分になってくるのが不思議だ。ここは素直に送り出してあげようと、浜田と並んで「がんばってきてください」とお見送り。

 すると目黒、片手を高々とあげ、「月曜日の昼は笹塚ナンバー1グルメ、鰻重を絶対みんなにおごっちゃうからおなか空かして待ってなさい」と宣言。

 果たしてどうなることか? って社員はみんな結果がわかっているんだけど…。

8月5日(木)


 大好きな営業エリア、横浜を訪問。ここ数日のなかではかなり暑い真々夏日なのだが、都心と違って妙に人出が多い。うーん、スゴイ。

 まずはM書店のYさんを訪問。開口一番「売れてるのよ」と引っ張られていかれた棚に面陳になっていたのは『バッテリ』3巻~5巻 あさのあつこ著(教育画劇)である。当然文庫の1、2巻も売れているそうで、なかなか在庫がままならず、それはこちらに積んでいないとか。Yさん自身もすっかりハマっているようで、いやはやうれしい。

 そのYさんととことん本の話をしつつ、最後にわたしの一番好きなマンガとお薦めいただいたのが『くにたち物語』おおの藻梨以著(講談社漫画文庫)である。女の子の成長漫画だそうで、きっと僕好みだろうとのこと。もちろん1巻を購入してお店を出たのだが、その背中でYさん「実は未完なんですけど…」とつぶやいていたのは気のせいだろうか?

 次はK書店さんを訪問。なかなかタイミングが悪く担当者さんに会えずにいたのだが、本日は運良く出会え、しっかり名刺交換。最初の一歩であるからとても緊張するが、まあこればっかりは、回を重ねて訪問するしかない。

 人をかきわけルミネに向かいY書店さんを訪問。かなり面白いフェアをやっていると連絡をいただいたので、まずはその棚へ。いやはや思わず腹を抱え笑ってしまったが、その本気さに拍手! 担当Iさんが先日サッカー好きと判明し、おまけになんと静岡出身というホンモノ。しかもしかもレッズの某選手が高校の先輩と聞いては、もう仕事どころではない。いつもとまったく饒舌さに驚かれながらも、話が止まらない。

 その後、もうひとりの担当者Kさんとも本の話で盛り上がる。前回の訪問の際に『海のふた』よしもとばなな著(ロッキング・オン)をお薦めされていたので、その感想を話す。

 ちなみに『海のふた』めちゃくちゃ良いです。女流作家キライのわたくしが、まさかよしもとばななで涙を流すなんて考えてもみなかったのだけれど、ある一文を読んだとき「くはっ!」という感じで号泣してしまった。優しく包み込むような再生の物語が深く深く身に染みた。

 その後は改装で完全に客層が変わったE書店さんを訪問するが、レジに並ぶお客さんの列が途切れることなくとても声をかけられる状態ではない。再度の訪問を約束し、西口Y書店さんへ。ただしこちらは担当者お休みであえなく撃沈。しかししかし数年ぶりの再会などもあり、満足な一日が終わった。

8月4日(水)

 天候といえば雨が敵と考えていたけれど、度を越した暑さはもっと強敵だと思い知る。7月の書店さんの売上がかなりよろしくなかったようで、いやはやせっかく回復傾向に水を差された感じである。しかしチビ会社の営業マンには景気回復なんてまったく実感がないし、たぶん出版業界はこういう影響が最後の最後にでる業種なので、まだまだこの苦しい時期が続くのではなかろうか。

 そんな話を書店さんでしていると、「いやいや8月ももうあきらめているんだよね」と下を向かれてしまった・理由を尋ねたところ「オリンピック!」と一言。確かにそうだ。これからは本どころでなく、テレビにかじりついて、今日はサッカー明日は柔道と大騒ぎな人が増えるのだろう。ああ、生活必需品を作っている会社がうらやましい。

 しかししかし嘆いているのは8月までで、9月に入れば『ハリーポッター 不死鳥の騎士団』(静山社)が発売となり、その1週間後には村上春樹様の書き下ろし『アフターダーク』(講談社)がドーンと店頭に並ぶのだ。またまたどこかでタワーが築かれるのか? おまけのその2日後あたりに小社9月の新刊『翻訳文学ブックカフェ』が発売となり、できれば『アフターダーク』の大山の隣に積んで頂こうなんてセコイことを考えていたりする。

 『ハリーポッター 不死鳥の騎士団』の初版部数が290万セットというから驚きだ。他人の懐をすぐ計算してしまうのはこのチビバカ営業マンの悪い癖なのだが、4200円×290万セットをポチポチ電卓で叩いてみたところ、ありゃりゃ僕の電卓ではエラーが出てしまったではないか…。えーっと12180000000って、おいおい121億8千万円!!! 先日発表になった書籍の上半期の売上が、4987億円だったというから、それと比較すると、たった1点書籍で2%になるのか。ああ、すごい。他人事だけど…。

 しかししかし。他人事と言い切れない部分もあって、結局この金額の8掛分くらいお金が数ヶ月後には書店さんから取次店さんへ流れ、そして出版社に入るわけなのだが(全額払うわけではないだろうけど)、それまで本当にそれだけ売上が上がっていればいいけれど、そうでなかった場合はどうなるのか? そう、どーんと返品の山が出来るのだ。いやはや秋が恐ろしい。いやもう始まっているか…。

8月3日(火)

 昨日のリベンジ。中央線を営業。

 吉祥寺を訪問すると啓文堂書店の看板が目に飛び込んでくる。そうか、今週末オープンだったか…。

 この夏から秋にかけて、中央線はスゴイことになっていて、広さだけをとってみても、この啓文堂書店が約500坪、丸の内の丸善が約1700坪、新宿のジュンク堂書店が約1100坪で、全部足すと約3300坪の売り場が誕生するのである。

 先日、兄貴から「どうして不況なのにこんなに大きな本屋さんが次々出来ているの?」と素朴に聞かれたのだが、思わず「その質問、俺が聞きたいんだけど」と聞き返してしまった。なぜなんでしょうか?

 さて迎え撃つかたちの吉祥寺の既存店のなかでは、BOOKSルーエさんが拡張&棚替えをしていて、本日拡張後初めての訪問だったのだけれど、とっても良い感じになっていた。地下から3回までしばしうろつき、思わず「決してゴマすりでなく…」とKさんに声をかけてしまったほどだ。

 Kさん曰く「今まで普通に並べるだけでいっぱいいっぱいの棚だったけど、広くなった分、遊びが出来て、そこにそれぞれの担当が好きな本を並べられるようになった」と話すとおり、その遊びの部分に、吉祥寺あるいはルーエさんらしい自己主張があって、とっても面白い。

 中央線の乱。
 うまくパイを広げてくれればいいのだが、果たしてどうなるだろうか?

8月2日(月)

 午前中『青木るえかの女性自身』の追加注文がバタバタと入り、直納の用意やら出荷の手配など。午後になってやっと外出できる状況となり、満を持して昨日オープンしたブックファースト新宿店の2店を訪問。

 そしてただただ驚く。いやー、たった2週間で、開店できるもんなんだな。しかもそこそこ商品が揃っているではないか。それはもちろん店員さんや取次店さんの、あるいは出版社の苦労の賜物なんだろうけど、下手したら沿線の書店よりも充実していたりして…なんて考えると恐ろしい。

 ただし本以外の、棚やらカウンターは今のところ青山ブックセンターのものをそのまま使用しており、きっといつかブックファーストの棚になるのだろう。おお、そういえば元青山の書店員さんがそのまま働いていたりして、それはそれでとってもうれしかったのだけど、何だかとっても不思議な雰囲気で、思わず酔ってしまった。

 今のところの方向性は、ルミネ1は、若干青山BCの雰囲気を残した品揃えで、ルミネ2は、青山BCとは違った品揃えを目指しているように見えた。どっちにしても「これから」のお店であるから、ゆっくり見守っていきたい。

 その後は中央線を営業するが、とことん担当者に会えず、夕刻、肩を落とし会社に戻る。すると今度は青山ブックセンター再建のビッグニュースが飛び込んでくる。いやはや何がどうなっているのかわからないのだが、洋販が支援し、本店、六本木、広尾、自由が丘店の夏末を目標に再開するとのことで、出版業界にナベツネがいなくてほんと良かったな…。

 それにしても洋販といえば、東京ランダムウォークであり、その東京ランダムウォークを文字通りペンキを塗って築き、育てている面々は、元青山BCの人たちだ。別に両者がいがみ合っているわけではなそうだし、これはとっても期待できる方向性になってきたのではなかろうか。そういえば、この2軒のチェーンとは色が違うが流水書房も洋販の傘下だった。うーん、面白くなってきたぞ。

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