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2月3日(月)〜2月8日(土)

2月3日(月)

 出社すると『本を売る技術』の注文がどかどか入り、在庫があっという間に溶けていく。素早く重版を決定した自分を褒めたいが、事務の浜田は「もしかしてこれ重版出来までの数日品切れになるんじゃないですか」と鬼のような顔をして睨みつけてくるので、豆をまいて退治する。

 細井秀雄さん、内堀弘さん、中村カメラマン、そして浜本とともに坪内祐三さんの仕事場へ。追悼号のグラビア撮影。3LDKの部屋が本に埋もれる真ん中に小さな机と原稿用紙が。書くということの本質を見、読むということの責任を深く感じる。


2月4日(火)

 朝、起きてきた息子が「喉が痛い」と顔をしかめる。月末に公立高校の入学試験を控えており、体調管理がとても大切な時期なのである......と昨夜妻が話していたのであるけれど、妻も私も仕事を休むわけにもいかず病院へ連れていくことができない。

 頭を抱えていると、息子が「俺、塾に行く前に自分で病院行ってくるよ」と言う。これまでかかりつけの近所の病院も必ず妻や私が連れて行っていたのだ。ここまで成長したのならもう高校合格でいいんじゃなかろうかと思いつつ、病院の行き方や薬局での薬の受け取り方を箇条書きにしてメモを渡す。

『本を売る技術』が東京堂書店さんの週間ベストセラーランキングで堂々の1位に。記念写真を撮り、心の中で乾杯す。

 某書店さんでしびれる展開の注文をいただく。これだから営業はやめられない。

 夕方、内澤旬子『着せる女』の見本が届く。これは素晴らしい出来栄えなのではなかろうか。すべてのピースがカチッとハマった感じがする。あとは営業と販促次第。がんばらねば。

 事前注文〆作業。注文短冊と打ち込んだデータに不備がないか確認する。


2月5日(水)

 できたばかりの内澤旬子さんの『着せる女』の見本を持って、取次店さんを廻る。窓口の人にビフォーアフターの口絵を笑っていただき、この本の成功を確信する。

 大阪屋栗田改め楽天ブックスネットワークの窓口で、こぐま社のTさんと遭遇。半年ぶりの新刊ですよと笑っていたが、それはロングセラーがたくさんあって既刊書をしっかり売ることができているということの証であり、本来出版社が目指すべきはそこなのであろう。秘訣を伺うべく飲み会の約束をして別れる。

 昼、昨年暮れに某出版社を退職されたYさんがやってきたのでランチ。その後、営業。

 帰り際にスッキリグリーンこと立石書店の岡島さんが出店している「上野広小路古本祭り」を覗き、探検本を5冊ほど購入。強烈な寒さにランニングは断念。


2月6日(木)

 内澤旬子さんが東京で飛行機から新幹線に乗り継ぐという話を聞き、あわててできたばかりの『着せる女』を抱え、品川駅へ。新幹線の入場券を買って待合室にて書店さんから頼まれていたサイン本を作成してもらう。

 2時過ぎに会社に戻り、昼飯を食べる約束をしていた140BのAさんに改めて連絡。しばし会社でお茶を飲みながら雑談。

 夕方、来週14日(金)に矢部潤子さんのトークイベントを開催する往来堂書店さんに追加注文分を直納。イベントの申込みも順調とのことでほっととする。

 オークスブックセンター南柏店さんにて展開されている出版営業マンの販促対決企画「南柏杯」の様子を伺いにいく。「うまい」がテーマの選書なのだけれど、今はもうとにかくこれを読んで欲しいのだと無理くり、しかも他社本ながら伊与原新『月まで三キロ』(新潮社)を推薦。売れますように。


2月7日(金)

 『本を売る技術』のHONZの書評が「DIAMONDO online」に転載され、売れ行きがさらに急上昇。13日に重版ができあがってくるのだけれど、それで足りるのか不安になってくる。印刷所に納期の確認。

 急遽パブリシティ情報も加えた売れ行き良好の注文書を作成し、書店さんへFAX送信。午前中いっぱい頭から煙を出してデスクワークに勤しみ、昼過ぎ飯田橋へ向かう。

「牧の家」のもりうどん+肉汁+かき揚げを食べ、KADOKAWAにて「ダ・ヴィンチ」の取材を受ける矢部潤子さんの立ち会い。1時間ほどで終了すると、すぐにタクシーで神保町に戻り、「TAKANO」にてミルクティーを飲みながら「新文化」の著者インタビューにも同席。

 どちらのインタビューでも矢部さんが最も熱く語っていたのは掃除のことで、これまで書店員の取材といえばこのPOPで何冊売ったなんて話ばかり聞いていたライターさんたちは驚いた様子。日々のしっかりした売上に必要なのは凡事徹底なのだ。それはどんな仕事も一緒のはず。

 会社に戻ると編集の高野が机に『つくるたべるよむ』のカバーの色校を広げており、そのセンスの良さに脱帽する。上手いもんだ。

 夜、池袋の「連家」にて、浦和レッズを一緒に見ているメンバーで新年会。3時間半ほとんどレッズの話だけ。期待に胸を膨らませられる唯一の時期。


2月8日(土)

 朝、起きてきた娘が「喉が痛い」と顔をしかめる。病院へ連れていく。

 その娘が嵐のドキュメントが見たいからといって入ったNetflixにて見つけた『サンダーランドこそ我が人生』を見始めたら止まらず。

 プレミアリーグから降格したサッカーチーム・サンダーランドのチャンピオンシップ(2部リーグ)での一年を追ったドキュメントなのだが、おそらく撮影する側も撮られる側も一年で再昇格するハッピーエンドを思い描いていたのだろう。しかしサッカーはそんな簡単にことが運ぶわけなく、問題山積みで敗戦を繰り返し、さらなる地獄に足を踏み入れていくのだった。

 それはもうおそらく世界中のサッカークラブがそうであるように、あなたや私の愛するクラブが毎年繰り返し体験していることと同じなのである。だからこそここで映るサポーターの気持ちが痛いほどよくわかる。わかりすぎて息ができないほどであり、不甲斐ない守備にブチ切れ、戦う気持ちのない選手を罵倒し、金を使わないオーナーに抗議し、もはや自分が出演しているのではなかろうかと感じてしまうほどであった。

 あまりに苦しすぎて観るのをやめようかと思ったが、8話まで一気に見、結果切なくて号泣。なぜに人はこんなにサッカークラブを愛するのか。

 ランニング15キロ。カワセミを目撃。

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