第4回「ヤル気の劇薬になる名作マンガ」

Page 2 小林まことという天才を見逃すな

小林まことという天才を見逃すな

1・2の三四郎 (1) (講談社漫画文庫)
『1・2の三四郎 (1) (講談社漫画文庫)』
小林 まこと
講談社
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青春少年マガジン1978~1983 (KCデラックス 週刊少年マガジン)
『青春少年マガジン1978~1983 (KCデラックス 週刊少年マガジン)』
小林 まこと
講談社
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青少年マンガ誌のファンにはおなじみ、小林まことの作品も極上のエンターテインメント作品ばかりです。しかも、この人は『1・2の三四郎』、『柔道部物語』というダイナミックな格闘エンターテインメント作品を大ヒットさせたにも関わらず、その後『What's Michael?(ホワッツ マイケル?)』で扱うテーマをガラリと変えた。恐るべき才能というほかありません。それまでもペットを描いたマンガは数多くありましたが、本格的な擬人化もせずにペットを主役に抜擢した作品はこれ以前にはなかったように記憶しています。それも当たり前の話で、主人公には強烈なキャラクターを持たせることがマンガ作品ではなかば常識であり、そのキャラを設定するには主人公の感情の描写が必要になる。飼い主からの視点――ある意味客観的に捉えたペットを主人公に据えた『What's Michael?(ホワッツ マイケル?)』は、マンガの基本構造を変えるような革命的な作品だったのです。

長々と話を引っ張っておいてこう言うのも非常に申し訳ないんですが(笑)、実はここまでの小林まこと作品についての話は、今回のテーマからすると余談というか長い前フリに過ぎません。確かに『1・2の三四郎』などは読むとテンションの上がる作品ですが、それ以上に読者のテンションが強烈に上がるマンガを、この作家は2008年に世に送り出しました。それが単巻完結の『青春少年マガジン1978~1983』。マンガ好きでもそうでなくても、何かの機会にぜひ読んでいただきたい名作です。

『青春少年マガジン』は"リアルまんが道"である

この作品は『週刊少年マガジン』の創刊50周年記念に短期集中連載されたノンフィクション作品で、小林まことというマンガ作家の半生記が描かれています。

帯に「実はボロボロ泣きながら描きました」とあるのも道理で、作中にはマンガが世に出るまでの壮絶な現場や、"盟友"でもある同世代の作家の悲惨とも思える末路が描かれている。何よりすごいのが、一歩間違えばただの悲惨なエピソードになりかねない裏話が、見事なエンターテインメント作品に仕上げられていること。「あの作品が生まれた裏には、こんな苛酷な現場があったのか」と胸を締め付けられながらも爆笑してしまう。まさに小林まことワールドの真骨頂。単巻作品なので詳しい話は省きますが、もし作品を一作でも読んだことがある人なら、その製作過程や舞台裏に衝撃を受けないはずはありません。

実はこの作品、マンガ大賞2009にもノミネートされた作品ですが、そもそも「今一番フレッシュなマンガ」を決める賞に、小林まことという大ベテランの単巻完結作品が推されること自体が異例ですし、逆に言えばそれほどの衝撃をマンガファンに与えた作品とも言える。一読すればテンションがガーンと上がる!エンターテインメントとして昇華されたドキュメンタリーマンガの最高峰と言えるでしょう。必読です!

しかし、今回のゲキコミはどうも気合いが入りすぎるというか、テンションが上がりすぎる気が......。テーマを考えると、それでいいような気もするんですが(笑)。

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