第11回「手塚治虫を知らないコドモたちに伝えたいその魅力」

Page 2 手塚治虫は「方程式」の発明家!

手塚治虫は「方程式」の発明家!

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ブラック・ジャック(1) (手塚治虫文庫全集)
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手塚 治虫
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とりわけ自らも医師免許を持っていた、手塚治虫の描く医療マンガの説得力は圧倒的でした。医療マンガでの1作目『きりひと讃歌』は自らの母校、大阪大学の医学部が舞台となっていますし、ぼくが一番好きな手塚作品、『ブラック・ジャック』は言うまでもなく、押しも押されぬ手塚治虫の代表作。先日発表された「このマンガがすごい2012」のオトコ編1位にも『ブラック・ジャック創作秘話』が選ばれていましたし、現在少年チャンピオンでも『ブラック・ジャック~青き未来~』が連載中。そこには決して色あせることのない、マンガの基本が詰まっているのです。

表向きの顔は「カネの亡者」と言われるほど、高額な報酬を要求する医師免許のない凄腕の医師。しかし実は情に厚い一面もあり、受け取った報酬を患者家族に渡すなど、ときに篤志家とも言えるような振る舞いをする。後に『ゴルゴ13』『ギャラリーフェイク』『ザ・シェフ』などに受け継がれていく「偽悪の方程式」を本格的にマンガに持ち込んだのも手塚治虫の功績のひとつでしょう。

助手のピノコの誕生する経緯も前代未聞。「畸形嚢腫」という回でその誕生の経緯が描かれています。「ある身分の高いかた」の娘として生まれ来るはずだったのに、双子の姉の体のコブの中にすべての内蔵がバラバラになって入ったまま、姉が生まれ育つ間もコブの中に。ブラック・ジャックによる手術で取り出され、合成繊維で作った体に「組み立てて人間に仕立て」られる。手塚治虫以降、マンガは進化を続けているはずなのに、これほど強烈な出自のキャラクターは類を見ません。発明家、手塚治虫の凄さを思い知らされます。

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