ノストラダムスを信じた少女の20年
文=東えりか
"1999年7の月、恐怖の大王が地球に舞い降り世界は滅亡する"
あなたはこの話を信じただろうか?いや、信じないまでも、何か悪いことが起きそうだ、と警戒し2000年を迎えたとき、ちょっとだけほっとしなかっただろうか。
『終わり続ける世界のなかで』は日本ファンタジーノベル大賞受賞作家の粕谷知世5年ぶりの新作である。『アマゾニア』(中央公論新社)を思い出す人も多いだろう。
1980年、センセーショナルなテレビ番組を見てすっかりノストラダムスの予言を信じた小学5年の岡島伊吹。彼女はその後の20年間をどう生き抜いたのか。
冒頭から予想されるあの宗教団体やさまざまな凶悪事件をうまく取り込みながら、息苦しいまでに生真面目で鈍感な女の子の心の襞が描かれる。
大学の埃臭い部室でのバカ話、体が引き裂かれるような失恋、親友との別れ、そんなエピソードのひとつひとつが自分の記憶と重なる。
2011年、このひどく悲しい年の最後に読むにふさわしい、ちょっと哲学したくなる一冊である。
(東えりか)