第222回:武田綾乃さん

作家の読書道 第222回:武田綾乃さん

 学生時代に作家デビュー、第2作「響け!ユーフォニアム」がいきなりアニメ化され人気シリーズとなった武田綾乃さん。さまざまな青春を時にキラキラと、時にヒリヒリと描く武田さんはどんな本を読み、どんな思いを抱いてきたのか。お話は読書についてだけでなく、好きなお笑い芸人や映像作品にまで広がって…。意外性に満ちたインタビューをお楽しみください!

その3「芸人のネタを文字起こし」 (3/6)

――日記や読書記録というのはつけていましたか。

武田:全然。だから何を読んだかあんまり憶えていないんです。あ、それで思い出したんですが、高校生の頃、お笑いブームだったんです。私はすごくお笑いが好きなので、芸人さんのネタを文字起こしして分析したりしていました。何が面白いと感じるのか、ちゃんと自分で分からないと嫌だったんです。でもやっぱり文字じゃ面白くないんですよね。間とか喋り方とかが文字では表現できないので。「あ、これを小説にそのまま持ってきても駄目なんだな」って思っていた記憶があります。お笑いの影響はすごく大きい気がします。

――へえー。お笑い芸人さんは、どの方たちが好きなんですか。

武田:オードリーさんがすごく好きで(即答)。当時、2008年とかなんですけれど、ちょうどナイツとオードリーとNON STYLEがM-1グランプリで決勝に残った頃ですね。「レッドカーペット」とか「レッドシアター」とかの番組もすごくありがたかったです。
 それで高校生の頃はよく文字起こしをしていたんですけれど、キャラの立て方はすごく勉強になりました。自分はなぜこの芸人さんが好きなんだろうって思った時に、「ああ、こういうキャラだから好きなんだ」とか、「こういうやりとりのここがいいんだ」とか分かるんです。オードリーさんはネタそのものは文字に書き起こすと本当の面白さは伝わりにくいんですが、ラジオを書き起こすとすごく面白い。文章そのものが面白くなるんです。芸人さんって、媒体で見せ方をちゃんと分けているんだなあって。

――若林さんは読書家だしご自身でも本を出しているし、文章も上手いですよね。そういうのも追いかけていますか。

武田:いやもう、怖いくらい追いかけてて(笑)。もうなんか、ひどいです。はじめてオードリーさんを見たのが2008年の「ぐるナイ」番外の「おもしろ荘へいらっしゃい!」っていう深夜番組だったんです。ふたりがテレビで漫才を披露したのはそれがはじめてで、そこから追いかけているので、もう10年以上ラジオを聴いて、DVDを買っていることになります。高校時代は出演番組は全部録画していました。でもオードリーさん、当時400本くらい出演していたので全然追えなかった。今はもう、「あちこちオードリー」などの彼らがメインのテレビ番組とラジオを追いかけているくらいなんですけれど。でも、若林さんの出した本は何回読み返したか分からないくらい読み返しました(笑)。
 私、笑うことが大好きなので、今もテレビで第七世代とかが出ていると見ちゃいますね。

――注目しているのは。

武田:四千頭身さん。3人とも好きですけれど、後藤さんはすごいとシンプルに思っていて。あとは宮下草薙さんも、若手であんな間の使い方するんだっていう衝撃があります。キャラクターありきの漫才というか、当人以外が同じネタをやっても面白くないじゃないですか。そういうネタが好きで...って、普通に「面白かった」だけを伝えたいのに、私、分析癖がひどくて、こういうふうに分析的に言うのはよくないなって反省するんですけれど。私はネタとか作れないし、人を笑わせるのって一番難しいことだから、本当にすごいなって思っています。

――芸人の方で、エッセイや小説を出す方もたくさんいますよね。

武田:コントを書く人は本を書くのも上手そうと感じていたので、自然に受け入れて読んできて、家に大量に芸人さんの本があります(笑)。最近では阿佐ヶ谷姉妹の『のほほんふたり暮らし』が大好きで、人に布教しまくってました。

――ご自身で振り切ったコメディ小説を書きたいとは思いますか。

武田:コメディって難しいんですよね。結局、会話で笑いを取りたい気持ちはあるので小説でも結構そういう会話を盛り込むようにはしているんですけれど。とはいえ、本職の方たちは本当にすごい。5分のネタのために何百時間とかけているかと思うとやっぱり「すごい」と思いながら見てしまいますね。

――それにしても、そこまでお好きだとは知りませんでした。

武田:私、作家になったらやりたいことの3本柱みたいなものがあるんです。ひとつが「学校の試験問題に使用される」で、2つ目が「賞を獲る」で、3つ目が「若林さんに帯文を書いてほしい」で(笑)。ただ、試験問題はすぐに叶ったのですが、3つ目は叶わぬ夢だなと思っています。10年追いかけていると、最初のうちは「ラジオこの先も続くかな」って心配していたのが、どんどん「すごい。追いかけよう」という気持ちになっていて。ずっと第一線で人気の方だし、そういう依頼も殺到しているだろうし。私、追っかけているから重々承知しているんですが、もう、とんでもなく忙しくされていますよね。なのでひっそりと人生の目標として掲げておこうと思います(笑)。

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