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小久保 哲也の<<書評>>
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「Twelve Y.O.」
評価:C
全体的に説明が多すぎるきらいがある。話にリアリティを持たせようとするあまり、どうしても説明が多くなってしまうようだ。自衛隊をとりまく環境や、日本の置かれている立場など、微妙な設定が原因かもしれないが、もう少しうまく処理をして、文章のテンポを軽快にして欲しかった。物語に挿入された、それぞれの登場人物の背景描写は、非常にうまく生き生きとしているので、よけいに悔やまれる。逆にいうと、そういう設定が好きな人には、かなり楽しめるのではないだろうか?でも、僕は政治経済には疎いので、評価はC。
【講談社文庫 】
福井晴敏
本体 648円
2001/6
ISBN-4062731665
●課題図書一覧
「双頭の鷲」
評価:AA
もし何も知らずにこの本をお店で手にとって、ぱらぱらと数ページ読んだときに、買って読むかというと、僕は買わないと思う。それがとにかく残念で仕方が無い。こうして課題図書になっていなければ、間違いなく読むことの無い本の一冊でありながら、しかし、これほどまでに面白い。はたして書評も読まず、もちろん課題図書もない人たちにこの作品を読んでもらうには、どうしたらいいのだろうかと悩んでしまう。稀代の軍師を主人公に、フランス国王、イギリス皇太子たちが絡み合い、その当時のヨーロッパ諸国を背景として進むこの物語は、壮大な歴史物語。数年後には、また読み返すだろうことを予感させる、ひさびさの名作だ。
【新潮文庫】
佐藤賢一
本体 各781円
2001/7
ISBN-4101125317
ISBN-4101125325
●課題図書一覧
「小説中華そば「江ぐち」」
評価:B
近所のラーメン屋にここまでのめりこみ、マニアックに追求している姿は、自分達の身近にもちらほら見られる姿なのだけれど、それをちゃんと文章にして見せてくれたというところが非常に面白いし、とてもうらやましい。大げさに言うなら、自分が確かにその場所にいたという証みたいなものを、こういった形で残すことができたら、すごく幸せだろうなぁと思う。この本を読んで、ぜひみなさんも、自分の思い出を文章に残してみては?
【新潮0H!文庫】
久住昌之
本体 486円
2001/6
ISBN-4102901027
●課題図書一覧
「バルタザールの遍歴」
評価:C
はじめは、ヨーロッパ文学のものまねじゃん。と高を括って読んでいたのだ。というか、これは古いなぁ。というのが正直ある。文章とか、言い回しとか。そういうのが礼儀正しいというか、三つ指ついているというか、とにかく正統なのだ。仮に、これは20世紀前半に書かれた作品と言われても、疑わないでしょう。やっぱ。だけど良く考えると、この作品は、今の作品なのだ。それを考えると、この作品はものすごいことのように思う。たとえば場面展開は、やっぱり今風で巧みにテンポよかったりするのに、表現が文学してるので、なんだか不思議な感覚がある。ハリウッド映画をヨーロッパでリメイクした、みたいな感じの作品。
【文春文庫】
佐藤亜紀
本体 600円
2001/6
ISBN-4167647028
●課題図書一覧
「ああ言えばこう食う」
評価:A
どうもこういう文章には弱い。気負いがなく、100%自分を出しちゃってるもんね。という割りきりからくる清々しさ。桃井かおりの「賢いおっぱい」もそうだけど、ある年齢に達して、もがいている自分や悩んでしまう自分を、そのまんまの姿で理解できて、評価できるっていうのは、ものすごくいい人生なんだろうなぁと羨ましい。そして、自分を正直に出した時に、側にいてくれることのできる友人がいることの大切さがひしひしと伝わってくる。そういう自分になるための、ひとつのイメージトレーニングとしても最適な一冊。
【集英社文庫】
阿川佐和子・檀ふみ
本体 514円
2001/6
ISBN-4087473317
●課題図書一覧
「夜のフロスト」
評価:B
文章で書かれたユーモアというもので、面白いものはそうはない。ニヤリとするものや、言い回しの妙に感じ入ったりすることは多いけれど思わず吹き出してしまうというのは少ない。特に翻訳ものだと、滅多にお目にかかれないのだけれど、この作品の「下品なジョーク」は、実に面白い。女性の中には、眉をしかめる人もいるかもしれないが、こういうジョークを言えるセンス、あるいは作中人物に喋らせるセンスというのは並みではない。フロスト・シリーズは、どれもこれも分厚いので、今まで敬遠していたのだけど、課題図書にならなければ、読まないままになってしまうところでした。危ない危ない。あなたは、大丈夫?
【創元推理文庫】
R・D・ウィングフィールド
本体 1300円
2001/6
ISBN-4488291031
●課題図書一覧
「赦されざる罪」
評価:B
「人生は学校じゃない。すべてにAをとる必要はないんだよ」 登場人物たちが話す言葉や態度の端々に、生きていくことの優しさが含まれている。ミステリーとしてよりも、登場人物たちの悩みや、喜び、そして家族と共に生きていく姿がとても印象的。もちろん、あまりにできすぎた家族像であるというのが、まるでアメリカン・ホーム・ドラマを彷彿とさせる嫌いはあるけれども。全体としては、かなりの分量であるが、それを感じさせない巧みなプロットとテンポの良い文章は、読み進むのが惜しい気にさせる。シリーズ六作目ということだが、第一作から読みたくなる作品だ。
【創元推理文庫】
フェイ・ケラーマン
本体 1260円
2001/6
ISBN-4488282091
●課題図書一覧
「エンデュアランス号漂流」
評価:A
どうすればこれほどの過酷な状況に打ち勝って生き延びていくことができるのだろう?極寒の地で沈み行く船を逃れる冒頭のシーンから始まり、困難は後からあとから探検家達に襲い掛かってくる。「立ち向かう」という表現がまさにぴったりとあてはまる彼らの姿は、ともすれば流されてしまいそうな自分の生活に、新しい違った方向からの光を当ててくれるようだ。唯一の不満は、極寒の地の物語であるのに、なぜかその寒さが伝わってこないこと。船をこぐオールが凍りついたり、凍傷になったりして、その状況はわかるのだが、肌で感じることができなかった。ノンフィクションとしては、このあたりが限界なのか、あるいは、登場人物たちがあまりに「熱い」ので寒さを感じないのか、それは良く分からない。
【新潮文庫】
アルフレッド・ランシング
本体 781円
2001/7
ISBN-4102222219
●課題図書一覧
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