浅井 博美の<<書評>>
フラグメント 【新潮文庫】 古処誠二 定価 580円(税込) 2005/5 ISBN-4101182310
白いへび眠る島 【角川文庫】 三浦しをん 定価 660円(税込) 2005/5 ISBN-4043736037
マラケシュ心中 【集英社文庫】 中山可穂 定価 650円(税込) 2005/5 ISBN-4062750910
バルーン・タウンの手毬唄 【創元推理小説】 松尾由美 定価 735円(税込) 2005/5 ISBN-4488439047
ヤスケンの海 【幻冬舎文庫】 村松友視 定価 600円(税込) 2005/4 ISBN-4344406486
結婚のアマチュア 【文春文庫】 アン・タイラー 定価 900円(税込) 2005/5 ISBN-4167661985
評価:A 久々に読んだけれど、あいかわらず憎い仕事をなさるものだ。初めて彼女と出会ってからそろそろ10年だが、一度も期待を裏切られていない。彼女の作品を通して言えることだが、舞台も登場人物も本当に地味なのだ。しみったれていると言っていいほどに。でも、よく考えてみたら私たち人間の大部分がしみったれているわけで、それでもしみったれた生活をしたくないともがくわけで、でもやっぱりしみったれでしかなく、その上でどうにかこうにか生きていかなければならない。そんなことを描かせたら、この人は人間国宝並の職人なのだ。本書のカップルにしても、出会って結婚するまではきらきらだった。しかし、5年、10年と経っていくと相手のほころびやら色あせやら色々なことが原因で、きらきらして見えなくなってしまう。通常の熟年カップルものの小説だとここで何か一波乱起きて、お互いの良さをもう一度見つめ直すきっかけになり、夫婦間の関係が持ち直したり、次のステップに進んだりする。しかし、アン・タイラー先生はそんな生ぬるいことはなさらない。悲惨とも言える現実を突きつけられるのだが、なぜかほんわりした気持ちで読み終わってしまうのだ。毎回毎回不思議でならない。
紐と十字架 【ハヤカワ・ミステリ文庫】 イアン・ランキン 定価 735円(税込) 2005/4 ISBN-4151755012
宇宙戦争 [ 新訳決定版 ] 【創元SF文庫】 H・G・ウェルズ 中村融 訳 定価 580円(税込) 2005/4 ISBN-448860708X