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├2001年7月
├2001年6月
└2001年5月
てけれっつのぱ
蜂谷涼 (著)
【柏艪社】
定価1890円(税込)
2006年6月
ISBN-4434076744
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
清水 裕美子
評価:★★★☆☆
切なくて寂しい、表題作『てけれっつのぱ』。御一新から少し後、俥曳(くるまひき)の稲妻の銀次は追われているような様子の異人の女を俥に乗せる。身振り手振りで「ライト、レフト」と道を指す女の言う通り俥を走らせるが、いつしか自宅の長屋へ連れ帰る羽目に。ロビンと名乗る女を匿う銀次に、長屋の女達は親切にロビンの世話を焼く。ちょっと野次馬根性の入った差配の女房・おシカ婆の噂話で「さる大名の頼みで、異国の女性をお匿い申し上げている」ということにされてしまう。
居ついてしまったロビンに、北海道へ渡ろうとする銀次は身の上話を語る。一目惚れというよりも大切な感情のある女性を探しに渡ると。「てけれっつのぱ」はロビンが歌う歌の一節。ちょっと驚くどんでん返しとセットになっている。自分が決めた自分の身の程。人の想いや期待に応えようとその枠組みから一歩を踏み出せない、そんな男女が、少しだけ前へ向かおうとする。ガス灯で煙るような背景色に希望が仄かに見えて、少しだけホッとする。
読後感:短いが折り重なるような濃い物語
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島田 美里
評価:★★★★☆
時代小説なのに、現代モノのようにさらりと読めた。舞台は明治初期の東京と、北海道。大工に、俥曳き、点灯夫など、昔ながらの仕事と、今はもう見られない仕事が混在しているところが面白い。俥曳きは鉄道馬車に取って代わられ、点灯夫は電気に取って代わられて、文明開化は、世の中から風情を消してしまったんだなあと実感する。
背景が開拓時代というのも、この連作短編集が異色なところ。偶然助けたハーフの女性と、人探しのために北海道に渡る俥曳きの男や、家を捨てて男と一緒に北海道へ行った娘が置いていった犬をかわいがる堅物の大工。官軍の男に北海道行きを迫られる妾の女性など、みんな北海道に縁がある。広い大地を目指すことが、なんとなく浪漫につながっている。
特に、どんでん返しがある話ではないけれど、たとえ仲違いしても切れることのない親子の絆やら、恩義を受けた人を思いやる気持ちやら、文明開化で世の中は変わっても変わらない人情に、晴れやかな気持ちがした。
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松本 かおり
評価:★★★☆☆
明治維新以後が舞台のはずなのに、読むうちになぜか<お江戸ど真ん中>の気がしてくる。あんまり維新の雰囲気が伝わってこない。「ビスケット」や「ゼントルマン」といった言葉が現れるたびに、おお、そうであった、と慌ててしまう。登場人物の暮らしぶりだけでなく、時代背景としての維新ならではの社会情勢や風俗も、もう少し読みたかった。
とはいえ時代がどう変わろうが庶民生活は同じ。大工、俥曳きなど職業は違えど、人間であれば悩みもあれば喜びもある。人を恨むこともあるだろう。過去の心の傷が出会いによって癒されるパターンも単純ではあるが悪くはない。難点は、どうも馴染みにくい人物が多いこと。大工・与茂三のメンツへのこだわりはあまりに極端であり、女を囲う官軍男・別所は私から見ればただのエロ親父。その別所を庇い「優しさの裏返し」とのたまうあや乃は、まさに男に都合のいい女。小樽の銀次だけが、渋く光っている。
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佐久間 素子
評価:★★★☆☆
御一新から数年をかぞえるも、江戸の雰囲気がまだ色濃く残っている明治初期が舞台の人情時代物。一話目『姫君さま』は、頑固大工の与茂三が主人公。二人の娘に愛情をそそぎ、成り行きで飼うことになった狆(姫君だ)にめろめろになってしまう与茂三を愛さずにはいられない。人生が甘くないように、この短編も決して甘い結末には終わらないが、読後感はすがすがしい。四話目で、十五年を経た与茂三と姫君は再び登場する。ほろ苦さの絶妙なる案配を堪能してほしい。
5つの短編は、ゆるやかにつながっていて、趣向を飲み込むと、次は誰と誰がつながるのかしらなんて期待も楽しい。世の中せまいなあ。て、つながりすぎ!というつっこみは、ぐっとのみこむべし。
ちなみに、「てけれっつのぱ」とは、落語に出てくる呪文。帯にもあとがきにもふれられているのに、本文での説明はほとんどなし。気になっていろいろ調べちゃったよ。それで五話目が『死神』なのか、とうなずく私のような読者にとって、これはちゃんと書いてくれた方が親切。
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延命 ゆり子
評価:★★★★☆
幕末動乱期を必死に明るく生きる下町の人情話。筋の通った大工の親方名代、没落し芸者になって身を助ける未亡人、スリ稼業から拾われて真面目な俥屋になる男。本物の悪人が一人も出てこず、心がホコホコと温かくなる連作短編集だ。
なかでも魅力的なのは下卑た笑いで芸者を囲う別所鐵太郎。頬に刀傷があり、育ちが悪く、粗野で傲慢で無慈悲で、底辺から成り上がった最低な男。しかし、無慈悲に思えた行動が実は熱くたぎるような深い優しさに裏打ちされたものであったり、やむにやまれぬ事情があってこその行動だったことを知ったとき、心がコトリと動かされる。人は見かけによらない。人の本質を見よ。そう言われているような。先入観が爽快に裏切られるのが心地よかった。
それにしてもこの本は帯で損している感が否めない。なんて地味な装丁なの!もう少し気を遣ってほしかった。
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新冨 麻衣子
評価:★★★★★
<御一新>、のちに明治維新と呼ばれる大きな変局直後の混乱した時代を背景に、必死に生きる人間たちの姿が情感たっぷりに描かれた連作短編集。これが本当に素晴らしかった。紋切り型の人情話ではなくて、きちんと裏の裏まで描いてあって、読むものの感情を刺激する。ワンシーンワンシーンが印象的で、かつそれぞれの短編をつなぐ糸もひねりがある。これまでこの作家を知らなかったのが残念だし、これから読めるという幸せもあるのだ。
ここに収められた5つの短編の中でも最もドラマチックなのは「漆風呂」か。戦争で夫を亡くした新妻あや乃は乳飲み子を抱え、途方に暮れる間もなく芸者に身を窶し、今は新政府の一員である土佐男・別所の妾となっている。最愛の子を手放し、夫の敵方である男に抱かれ快楽を得る、崩壊寸前のあや乃へ訪れる試練……。嵐の前のような静けさ、もしくは嵐そのものな荒々しさ、どちらも受け入れる浜辺、そんな感情が交錯する激しく悲しい物語。あや乃と別所が枝豆を食べさせあうシーンはなんともエロティック!
その他4編も甲乙付けがたい。いつしか変化してしまった隣人との距離感、変わることのない家族関係の切なさ、時代の変わり目こそに際立つ人間の強さを感じる、いい小説だった。これは「買い」ですよ〜。
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細野 淳
評価:★★★★☆
五つの短編で構成されている本であるが、その短編同士の組み合わせが見事。全作品を読み終えてみると、江戸から明治へと変わる世の中での人々の生き方を描いた、スケールの大きな物語であることに気づく。
時代が変われば人も変わらざるを得ない。かつては旗本であった人が、兎を繁殖させて生活の糧を得ようとしたりもするし、田舎の野武士であったような人物が、いつの間にか政府の高官にもなっていたりもする。そして、未開の地であった北海道に移住して、そこに新たな希望を見出そうとする人もいるのだ。
物語の中には暗い話もあるのだが、じめじめとした感じはほとんどしない。最終的にはどれも皆、人情味を感じさせるような作品が集まっている。主な登場人物が皆、江戸っ子ということもあるからだろう。彼らの味のある生き方、また逞しさに、元気付けられる作品だ。
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