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風に舞いあがるビニールシート
森絵都 (著)
【文藝春秋】
定価1470円(税込)
2006年5月
ISBN-4163249206
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
清水 裕美子
評価:★★★★★
小さくてもずっしりとした物語が詰まった本。なんて色々なものが詰まっているのだろうと本を撫でたくなる。タイトルと同様に人生の波が打ち寄せて大きく小さく翻弄され、着地した場所で「さあ、生きていくぞ」と決意するような6編。
『犬の散歩』。スナックでアルバイトを始めた恵利子がお金を稼ぐ理由は、犬の餌代のため。理由を明かせば保健所に収容された犬のほんの数匹を救うことなのだけど、そこに辿り着く経過が沁みるのだ。社会的な難題に向かい合うことは、自分の無力さと向かい合うことだと、ためらう主人公に訪れる『転機は、よくある一齣のような顔をして、ごくさりげなく恵利子の日常にもぐりこんだ』。ごく平凡な毎日と義父母との関係が少しだけ変化を見せるエピソードには、読み手の心まで駆り立たせる何かがある。きっと読むたびに沁みる部分が違うのだろうなと思う。
読後感:自分の手に余る問題はもたらされない
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島田 美里
評価:★★★★★
「あなたの信念は?」と、突然尋ねられた気がした。強いこだわりを持つ登場人物たちに影響されて、自分にとって譲れないことは何か、つい考え込んでしまう短編集である。
気まぐれな女パティシエに仕え、心酔する菓子に似合う器を懸命に探す女性秘書も、スナック勤めをしながら、引き取り手のない犬の里親探しをする主婦も、誰にも文句を言わせないような気迫がある。縁の下の力持ちを、表舞台の人間のように輝かせる「信念」って、なんてすごいんだろう。様々なこだわりが描かれる中、難民の保護に努める国連の機関を舞台にした表題作には、生死を賭けた究極の信念を感じた。使命のためなら危険もいとわないアメリカ人男性の強い意志には、重々しさと爽やかさが同居した崇高な感動があった。
読者に自らをとことん内観させるようなこの作品とじっくり向き合うと、座禅を組んで瞑想をしている気持ちさえする。金の鉱脈を掘り当てるみたいに、自分だけの信念を見つけたくなってきた。
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松本 かおり
評価:★★★★☆
著者は、国際公務員やサラリーマン、仏像修復師など、登場人物たちの心の奥底に分け入り、ぐいぐい追い詰め選択を迫り、意思を問い、厳しい事態に直面させる。男を取るか、仕事を取るか。本心から求めているのは何か。そもそも確固たる価値観があるのか。追い込まれた人間が見せる本人も知らなかった感情を的確にすくい上げ、好転を予感させる結末が優しい。読後は、激しい緊張感から解放された余韻が、じわ〜っと染みる。
「ジェネレーションX」で若い会社員が口にした、「十年に一度くらい」好きなもののために「なにもかも投げだすようなバカさ加減はキープしたいよな」という台詞には大いに頷いた。そのとおりだ! トシ食って守るべきものが増えたとしても、がんじがらめの奴隷人生に堕ちるほどツマランことはない。ラストで思わずトヨタ車CM、「私の真ん中に、俺が……」が頭をよぎったこの一編、世の殿方諸氏にぜひとも読んでほしい。
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佐久間 素子
評価:★★★★☆
いわずとしれた直木賞受賞作。子ども向け森絵都しか読んだことがなかったのだが、さすがに当たり前みたいにうまいのね。不器用で一本気な少年少女の面影が、本書の短編集の主人公たちに重なる。硬質な文章とユーモアのバランスも相変わらずここちいい。力強い明るさを与えてくれるという点で、六作いずれも遜色なし。お買い得です。
『犬の散歩』は、捨て犬保護のボランティアをしている主婦が主人公である。なりゆきではじめた捨て犬保護は金がかかり、水商売をしているが、夫の理解は得ているし、義父母との仲も良好、肩に力の入った様子はない。なりゆきといっても、その動機は真摯なものだ。「自分には関係ない、と目をそむければすむ誰かやなにかのために、私はこれまでなにをしたことがあるだろう?」という問いに思わず黙り込み、偽善もなく偽悪もないこの短編に背を押される。しかも、恵利子と義母の犬バカなやりとりに笑ったり、犬と義父との関係にじんわりきたりと、それはもう読者の感情をいそがしくさせる好短編なのだ。
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延命 ゆり子
評価:★★★★★
仕事をしていると無限ループに陥るときがある。同じところにずっと停滞していて、何も動かないと感じるとき。自分がひどく無能に思えて逃げ出したくなるとき。転職したくてたまらなくなる。
この小説には様々な職業が登場する。ケーキショップのスタッフ、捨て犬保護のボランティア、玩具メーカーの社員、仏像の修復師、難民を救うため辺境に繰り出す国連職員。どの人も日常に追われ、時間もなく、疲れていて、どこか仕事に疑問を持ちながらも、でも、どこかに抱えているその仕事に対する自負は決して失くさない。ひどく弱い人もいる。人間的に成熟していない人もいる。だからこそ、その人の仕事に対するプライドの強さが読んでいる者の心を震わせる。
心が疲れて仕事を辞めたくなるとき、私はまたこの小説を読もうと思う。愛する人を失って壊れかけている主人公に上司がかける言葉『泣くよりもほかにやるべきことがある』。その冷たいとも思える言葉は、ひどくちっぽけな私の心にしみわたる。そして希望の光を灯し続けることだろう。
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新冨 麻衣子
評価:★★★★★
いきなりだがこの短編集の中で一番好きな「ジェネレーションX」は、ある誇大広告を載せたことによりクレーマーへお詫びに向かう弱小出版社員の健一と販売元の若手社員・石津の車中の会話が描かれる。運転する健一の隣で、何やら同窓会の打ち合わせをしている石津。内心イラッとしながらも文句の言えない微妙なドライブだが、休憩をきっかけに物語は意外な展開に持ち込まれる。ひたすら抑えられた前半から急転、嬉しいサプライズに満ちた後半。10年に1日くらいバカできる人生の方がいい、これは共感得ないほうがおかしいでしょう。読後感爽快な一作だ。
この短編集は「何かに夢中になってしまった」人たちの物語。「夢中になる」ってとてもいいイメージだけど、実際のところそれは「中毒になる」とか「魅入られる」に近いものがあって、楽しいだけじゃない。ときにはそれ以上に苦しい。わかっていても、でもやめられない。腕は確かながらワガママなパティシエに尽くすヒロミ、保健所に収容される犬を一匹でも救おうと水商売でアルバイトする恵利子など……それぞれの物語は切なく苦しい。何かに夢中になる楽しさも空虚さもわかるから、深く感じ入れる短編集だった。
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細野 淳
評価:★★★★☆
本当のお菓子に会う本物の陶器を探し出すこと、捨てられた犬たちを少しでも助けていくこと、仏像に真の美しさを見出すこと。この短編集に出てくる主人公たちは、皆、自分のことを犠牲にしようとしても、守りたい何かを持っているような人ばかり。もちろん、そのようなものを守り続けるには別の何かを捨てなければならないこともあるし、また時にはそれを失う悲しみも味わうこともある。でも、そんなリスクを負ってでも、あきらめずに、どうにかして前に進んでいこうとしていく。各短編の登場人物は皆、そんな力強さを持っている。
表題作の「風に舞うビニールシート」は、世界をまたにかけるグローバルなスケールと、ひた向きにお互いを思い続ける者同士の日常的なスケールとの対比が印象的。その二つの世界の間で、主人公たちの夫婦は時に葛藤し、時に互いを認め合う。大胆でありかつ繊細な短編だ。
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