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ミカ×ミカ!
ミカ×ミカ!
伊藤たかみ (著)
【文春文庫】
税込580円
2006年8月
ISBN-416767999X
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  久々湊 恵美
 
評価:★★★★☆
 わあ、なんだかかわいらしい!
中学生の、本当日常のありふれたお話なんだけど、ああ、自分もこんな感じだったなあ、なんてちょっとノスタルジックな気分になりました。
まだ男の子なのか女の子なのか曖昧な境界線を行き来しているミカが恋をして、どんどん女の子に変身していって。
それがとってもかわいらしくて、爽やかな気持ちになりました。
主人公はミカではなくユウスケという双子の男の子で、彼の視点でお話は進行するのですが、ユウスケがこの年頃の男の子らしくほほえましいほど鈍感で。
ミカの恋をしちゃって急激に変化していくのに着いて行けず、ただただ驚いてばかりなのがいいですねえ。
男の子の成長。女の子の成長。
それぞれがとてもキラキラしていて、懐かしくって素敵な話だったなあ。
高校生の2人のエピソードもぜひ読んでみたい!なんて思っちゃいました。

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  松井 ゆかり
 
評価:★★★★★
 双子という存在は、兄弟姉妹の中でも特に不思議に思える関係である。男女ひとりずつの双子は特に。自分とそっくりな顔をしているのに性別が違うというのは、いったいどんな感覚なのだろうか。
 この小説の主人公ユウスケとミカも双子の兄妹である。大人びたユウスケと天真爛漫なミカは、性格的には正反対のようだけれどそれでもとても仲がいい。お互いのことを心配しながらも、ベッタリと寄りかかるようなことはなく、相手の気持ちを尊重することができるきょうだいって理想だ。
 伊藤たかみさんが児童文学も書いておられたことを初めて知った。児童文学出身の女性作家の活躍は枚挙に暇がないが(夫人でいらっしゃる角田光代さんもそうだ)、男性作家にもこのような逸材がおられたとは。人材の宝庫だと思うと、当分目を離せない分野である。

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  西谷 昌子
 
評価:★★★☆☆
 中学生のミカとユウスケがそれぞれに恋をし、右往左往する。飼っている青い鳥の「シアワセ」はユウスケにだけ言葉を囁きかけるようになり……。
台詞がすべて関西弁なのだが、関西で生まれ育った私にとってリアルな言葉であるぶん、「ユウスケは中学生男子にしては純真すぎるわー。こんな中学生おらへんって」との思いが読みながらちらちら頭をかすめた。私に限ったことかもしれないが、どうも関西弁を使われるとファンタジーをファンタジーとして楽しめなくなる。
だがほんわか温かい気持ちにさせてくれる力はすごい。うまくいかない幼い恋にとまどいながら、それぞれにハッピーエンドになるミカとユウスケ。いわゆる「両思いで付き合うことになりました」というような円満な解決ではないにも関わらず、とても微笑ましく受け止められるのだ。

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  島村 真理
 
評価:★★★☆☆
 中学生になった双子のミカとユウスケ。小学校6年生当時の話をつづった「ミカ!」の続編だそうだ。
 子どものくせに醒めたところのあるユウスケが、男勝りの妹ミカへむける視線はさっぱりしたもの。双子という近さでも、性別の差が客観性をもたらすのかな?でも、いい関係のふたりです。
 彼らは修学旅行を前に恋愛問題に揺れています。告白して、告白されて、誰かにふられたり、誰かとつきあったり。むずがゆくなるような初々しさがあふれている。初恋を遠くに置いてきた大人もその頃の自分を思い出すのではないでしょうか。ムフフという忍び笑いとともに。
 すがすがしい秋の空みたいな彼らの世界に身を任せたくなります。そうしたら私のところにも“おしゃべりができる”幸せの青いインコがやってきてくれるかも。ちょっとずつ大人になっていく彼らをいつまでも見守っていたくなりました。

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  浅谷 佳秀
 
評価:★★★☆☆
 可愛らしくてさわやかな作品。これを読んだのが照柿とハリガネムシの後だったから余計にすがすがしくて気持ちよかった。正直たわいもないといえばたわいもなかったけれど、ほほえましい気分で本を閉じられたのでまあいいか。おてんば、という言葉がぴったりのミカも、この物語の語り手でミカの双子の兄であるユウスケも、まだ青春の入り口に立ったばかり。このまままっすぐに成長していってほしいなあ。
 本作は「ミカ!」という作品に連なるものなので、たぶんこれからも「ミカ×ミカ×ミカ」、「ミカ×ミカ×ミカ×ミカ」という具合に、ミカとユウスケの成長にともない波乱に満ちた物語が書かれていく予定なのかもしれない。
「風の影」はまだうちの息子には早いけど、この作品なら全然オッケーだし、早速一読を薦めようと思う。そういえば彼は最近ラブレターをもらったりなんかして、いよいよ青春し始めた様子なので、この本を読んでも私とは違った楽しみ方ができるにちがいない。
 作者は最近芥川賞を受賞したが、受賞作をまだ読んでいない。こっちでは大人向けの作者の顔が見られるのだろう。ぜひこちらも読んでみたいと思う。

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  荒木 一人
 
評価:★★★☆☆
 思春期を迎え、心も体も、子供から大人になる準備をはじめる、中学生。誰もがとまどい・驚く季節を迎えた子供達が日々成長する姿を描く。読後感は、「そういう時代もあったねぇ」。
 中学生になった双子のユウスケとミカ。ミカは、小学生の頃はオトコオンナと呼ばれ、六年間一度もスカートをはかなかったのが自慢の男勝りの女の子だった。そんなミカが恋らしきものをする。戸惑う兄のユウスケ。幸せの青い鳥になろうとする、インコのシアワセ。
 前作「ミカ」に続く第二弾。(今回は買いに走らなかったので、前作は未読)
 関西弁で書かれているので、もしかしたら好みが分かれるかも、と言う作品。どうという事の無い話だが、奇妙に懐かしい。大人になったら忘れてしまう、遠い昔のこと、思い出す回数も、記憶も薄れる、そんな自分を少し悲しく思う。大人にも幸せの青い鳥が見えたら、この世は平和なのだろう。

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  水野 裕明
 
評価:★★☆☆☆
 かなり軽めのラブコメという感じで、7月の課題図書であった『時計を忘れて森へいこう』と同じような、ヤング向けハーレクインロマンスと言う印象は否めなかった。主人公のミカにしろ、その双子の兄弟にしろいずれもステレオタイプであり、今どきの中学生で“オトコオンナ”のような女の子がいるとも思えず、その初恋の様子もいかにも予定調和の描き方で読み通すのはかなり辛いなぁと思っていたが、幸せの青い鳥と思い込んだ言葉を話すインコが登場したことで、印象がちょっと変わった。このインコが物語の巧みな狂言廻しとなって、普通に読めば気恥ずかしくなりそうな主人公達の初恋の物語も主人公の双子の家族のありようも、大人も楽しめる心温まるメルヘンになったような気がする。

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